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20 誘導

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 昼休み、いつものカフェでお昼を食べる。

「図書館どうだった?」

 玲に聞かれる。隼也は何の反応もしない。いつも通りカフェオレ飲みながら音楽聴いてる。

「綺麗だし広かったよ」

「じゃあまた高校の時みたいに通う?」

 どうやって行かないって理由つければいいか迷う。

「そうだね、たまに行くのも良いかなって」

 あはははって愛想笑いしたら隼也がニヤッとして見て来た。人が悪い。俺の前以外では愛想笑いしろって言ってたから?

「何読んだの? 新刊もう借りれる?」

「えっと……」

 なんだろう。玲って読書に興味なかったよね? 何か探りを入れられている気がする。

「受験の時に出てて読めなかった本があったから読んで来たよ。出てたの忘れてたから、読めて良かった。新刊はどうかな? 広すぎてどこに何があるかまでは把握できなかったから」

 本当に図書館に行ってて良かった。会いたくなくて逃げたんだけど、時間を置けば何てこともない。もうアプリの事バレてるってわかってるからかも。隼也はもう追求して来ないだろうし、玲は賢吾の事があるから、わざわざ嫌な事しないと思うから。

「俺も後から行ったんだよ、図書館」

「え? いつ頃?」

 サーッと血の気が引く。まさか見てなかったよね? 中が広すぎて玲がいたかどうかなんてわからない。

「どうだったかな? 碧からメールもらって俺もサボろうって思って、向かったんだけど碧いなかったから」

「えっと……連絡くれたら良かったのに」

 怖い。何が怖いのかわからないけど、なぜか鳥肌が立ってる。

「だって個室で本読んでるところだったら悪いだろ? 邪魔はしたくなかったから」

 すごく綺麗な笑顔だ。それがよけいに怖い。

「そうだね。個室借りて2時間くらい読んでたから、すれ違ったかもしれないね。玲は? 図書館どうだったの?」

 チラッと隼也を見たけど、たぶん音楽に没頭している。気楽で良いな。

「今日はずいぶん良く話すよね? 何か良いことでもあった? 賢吾から連絡あったとか」

「えっと……連絡は無かったかなぁ」

 また愛想笑いをする。なんだろう。玲はずっと笑顔だし、いつもと同じように優しい声音なのに怖く感じる。俺に後ろめたい気持ちがあるからだろうか。

「隼也は?」

 玲が隼也の腕を揺する。隼也はすごく不満そうにヘッドホンを外して玲を見た。

「なに?」

「昨日お昼1人だったでしょ? 誰と食べたの?」

「は? 別にどうだって良いだろ?」

 不機嫌な顔。昨日とは別人だ。

「せっかく心配してるのに、なんで怒るかな。ね? 碧」

「……えっと、ごめん、俺が勝手な行動したから」

「違うよ、碧のせいじゃないだろ? 碧の図書館好きはみんな知ってるから。それに碧はひとりがいいんだろ? こうやって集まるのも迷惑だったら言ってくれよ? 大学は自由なんだからさ、隼也もそう思うだろ? あ、また聞いてないし。隼也?」

「うるせえって、休みくらい好きにさせろよ」

 隼也の嫌そうな声が玲に向く。なのに玲は嬉しそうだ。

「だって碧、隼也は好きにしたいみたいだよ」

 それはもう集まらなくても良いよね? ってこと?

「……ああ、うん、それで良いよ」

 なんだろう、これ。良くわからないけど玲の好きにしたら良いと思う。
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