15 / 62
15 鎖骨がキシキシするよ
しおりを挟む
もう何も考えられない。
好きってこういうことかな?
あの日のマイロさんとのやり取りを思い出してふわふわしてる。
早くミルルの冬眠終わらないかな?
相談したいことがいっぱいあるのに。
店の中にも貴族がいたって聞いて、あの人かな? この人かな? って思うけど、よくわからない。
オレって貴族のこと知らないから、違いがわからないんだと思う。
「少しは落ち着いた?」
相変わらず、お皿を割ったり、オーダーを間違えたりしていたから、エルゼさんに心配ばかり掛けてる。
「どうかな? わからないよ」
確かに失敗は減ったけど、頭の中はマイロさんでいっぱいだ。
「そういえば、ウォル、来月の更新はしないって言っていたわ。年が明けて、10日後に故郷に戻るって」
「年が明けたら成人だよ」
もうあと10日くらい。
でも冬眠から覚めるのはもうふた月後だから、ミルルにお祝いしてもらえるのは先になるよ。
「ちゃんと挨拶しておくんだよ? とてもお世話になったでしょう?」
「うん、わかったよ」
胸がツキンッてしたけど、仕方ないよね。兄弟みたいに思っていたけど、それはオレの一方的な気持ちだから。
ウォルさんは、お湯を持って来てとも言わなくなった。出かけることが多くて、あんまり顔を合わせていない。
この前会った時、ドーベルマンのにおいがするって言われて、思わず袖の匂いを嗅いじゃった。人族じゃわからないよね。
マイロさんに会った時に、バーニーズさんにマイロさんの匂いがするって言われたって言ったら、すごく嬉しそうにされて、犬族同士はより敏感だからねって言われた。
そういうもの?
獣人ってイヌとネコが一番多いよ。
ライオンさんとかトラさんとかオオカミさんとか、種類っていっても3、4種類くらいで、大差はないんだけど、イヌとネコは種類が多いから、人口も多いよ。
庶民の大半はイヌとネコで、あとは小柄や力の弱い種族が多いよ。イヌとネコの貴族もいるんだけどね。
マイロさんがお店に来てくれるようになった。週に1度だけど、嬉しいよ。
「婚姻を機に領主を第5王子が賜ることになったから、街の整備や条約が見直される」
「大変なんだね」
一番奥の席がマイロさん専用みたいになってる。見えにくい位置だから、10分くらいだけど、席に座ってお話した。
「少し、暮らしにくくなるかもしれない」
マイロさんの隣に座って、手を繋いでる。繋いだ手がギュッて握られて、びっくりした。
「大丈夫だよ。マスターもいるし、エルゼさんもいるから」
心配してくれて嬉しい。肩にこてんって頭預けたら、マイロさんもオレの頭に頬を寄せてくれて、髪にチュッてしてくれた。
「心配だな。混乱が収まるまで、どこか別の領に身を寄せられないか?」
「ダメだよ。せめてマスターが戻って来るまでは、お店手伝わないと」
「2月の終わりくらいか……」
うんって頷く。
冬眠から覚めるまで、あとふた月もあとだ。
「約束してくれないか?」
うん? って肩から顔を上げてマイロさんを見た。素早く口にキスされて、びっくりして真っ赤になった。
「この先、必ず街が混乱する。配達には出ないで欲しい。買い物も極力控えて。この宿から出ないと約束して欲しい」
頬に手を添えられて、じっと目を見られた。とても真剣で、本気で心配なんだってわかった。
「ユートの、あまり見たことのない貴族たちが、第5王子の結婚を機に押し寄せて来る。だから街が変わる。より貴族社会に飲まれて行く」
ゾッとする。
オレの知る貴族は、オレを悪く言う者ばかりだ。人族の扱いは、庶民の獣人以下で、人族の男はさらに下だ。
「マイロさんは大丈夫なの? オレと一緒にいたら困るんじゃ……」
全部言えなかった。
口の中に舌が入って来て、オレの舌が絡められてる。口の中をいっぱい舐められて、角度を変えて、何度も、何度も。頭の中が痺れる。唾液をどうして良いのかわからなくて、口の端から垂れるけど、それも上手に舐め取ってくれる。
息が上がる。
キスが終わった時、しっかり座ってることができなくて、マイロさんの胸にもたれかかってた。涙が浮かんで視界が歪んでる。マイロさんを見上げたら、口元を指で拭ってくれた。
「好きだよ、ユート、可愛いくて、手離すことなんて出来ない」
グッと抱きしめられて、泣けて来る。
本気かな? 本気なのかな?
良いのかな? 本当に?
頭の中が同じ言葉でぐるぐるしてる。
「オレも、好き」
そう言って見上げたら、嬉しそうに笑ってくれて、涙を拭ってくれた。
好きってこういうことかな?
あの日のマイロさんとのやり取りを思い出してふわふわしてる。
早くミルルの冬眠終わらないかな?
相談したいことがいっぱいあるのに。
店の中にも貴族がいたって聞いて、あの人かな? この人かな? って思うけど、よくわからない。
オレって貴族のこと知らないから、違いがわからないんだと思う。
「少しは落ち着いた?」
相変わらず、お皿を割ったり、オーダーを間違えたりしていたから、エルゼさんに心配ばかり掛けてる。
「どうかな? わからないよ」
確かに失敗は減ったけど、頭の中はマイロさんでいっぱいだ。
「そういえば、ウォル、来月の更新はしないって言っていたわ。年が明けて、10日後に故郷に戻るって」
「年が明けたら成人だよ」
もうあと10日くらい。
でも冬眠から覚めるのはもうふた月後だから、ミルルにお祝いしてもらえるのは先になるよ。
「ちゃんと挨拶しておくんだよ? とてもお世話になったでしょう?」
「うん、わかったよ」
胸がツキンッてしたけど、仕方ないよね。兄弟みたいに思っていたけど、それはオレの一方的な気持ちだから。
ウォルさんは、お湯を持って来てとも言わなくなった。出かけることが多くて、あんまり顔を合わせていない。
この前会った時、ドーベルマンのにおいがするって言われて、思わず袖の匂いを嗅いじゃった。人族じゃわからないよね。
マイロさんに会った時に、バーニーズさんにマイロさんの匂いがするって言われたって言ったら、すごく嬉しそうにされて、犬族同士はより敏感だからねって言われた。
そういうもの?
獣人ってイヌとネコが一番多いよ。
ライオンさんとかトラさんとかオオカミさんとか、種類っていっても3、4種類くらいで、大差はないんだけど、イヌとネコは種類が多いから、人口も多いよ。
庶民の大半はイヌとネコで、あとは小柄や力の弱い種族が多いよ。イヌとネコの貴族もいるんだけどね。
マイロさんがお店に来てくれるようになった。週に1度だけど、嬉しいよ。
「婚姻を機に領主を第5王子が賜ることになったから、街の整備や条約が見直される」
「大変なんだね」
一番奥の席がマイロさん専用みたいになってる。見えにくい位置だから、10分くらいだけど、席に座ってお話した。
「少し、暮らしにくくなるかもしれない」
マイロさんの隣に座って、手を繋いでる。繋いだ手がギュッて握られて、びっくりした。
「大丈夫だよ。マスターもいるし、エルゼさんもいるから」
心配してくれて嬉しい。肩にこてんって頭預けたら、マイロさんもオレの頭に頬を寄せてくれて、髪にチュッてしてくれた。
「心配だな。混乱が収まるまで、どこか別の領に身を寄せられないか?」
「ダメだよ。せめてマスターが戻って来るまでは、お店手伝わないと」
「2月の終わりくらいか……」
うんって頷く。
冬眠から覚めるまで、あとふた月もあとだ。
「約束してくれないか?」
うん? って肩から顔を上げてマイロさんを見た。素早く口にキスされて、びっくりして真っ赤になった。
「この先、必ず街が混乱する。配達には出ないで欲しい。買い物も極力控えて。この宿から出ないと約束して欲しい」
頬に手を添えられて、じっと目を見られた。とても真剣で、本気で心配なんだってわかった。
「ユートの、あまり見たことのない貴族たちが、第5王子の結婚を機に押し寄せて来る。だから街が変わる。より貴族社会に飲まれて行く」
ゾッとする。
オレの知る貴族は、オレを悪く言う者ばかりだ。人族の扱いは、庶民の獣人以下で、人族の男はさらに下だ。
「マイロさんは大丈夫なの? オレと一緒にいたら困るんじゃ……」
全部言えなかった。
口の中に舌が入って来て、オレの舌が絡められてる。口の中をいっぱい舐められて、角度を変えて、何度も、何度も。頭の中が痺れる。唾液をどうして良いのかわからなくて、口の端から垂れるけど、それも上手に舐め取ってくれる。
息が上がる。
キスが終わった時、しっかり座ってることができなくて、マイロさんの胸にもたれかかってた。涙が浮かんで視界が歪んでる。マイロさんを見上げたら、口元を指で拭ってくれた。
「好きだよ、ユート、可愛いくて、手離すことなんて出来ない」
グッと抱きしめられて、泣けて来る。
本気かな? 本気なのかな?
良いのかな? 本当に?
頭の中が同じ言葉でぐるぐるしてる。
「オレも、好き」
そう言って見上げたら、嬉しそうに笑ってくれて、涙を拭ってくれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
452
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる