獣人カフェで捕まりました

サクラギ

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15 存在の差

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 食事の後に案内された部屋は、食事をした部屋と同じような豪華な部屋で、窓際に天蓋付きのベッドが鎮座している。薄いカーテンが引かれたベッドは近寄り難く、部屋の隅で布団に包まって寝ても良いだろうかと考えるくらいだ。それにベランダも広い。テントが張れそうなくらいに広い。いっそここで——と思えるくらい。

 部屋には続きでバスルームがある。従者にお着替えをと手を差し伸べられた時、思わず一歩逃げてしまった。ひとりで出来ますと言うと、湯を張ってくれて、一通りの使い方を教えてくれた。

 お風呂に入ってホッとする。出る時はバスローブを着るように用意された。タオルもバスローブも高級そうだ。ビジネスホテルとは全然違う。

 お風呂に設られているソープなども高級な香りがする。洗うと軋んでいた髪質が一回で滑らかに変わった。そういえば1月美容院に行けていない。前髪が目の下まで伸びている。そろそろ切りたいなと思いながら、湯船から出てタオルで拭いて、バスローブを着た。ドライヤーを探しながらドアを開けて動きを止める。

「不自由はなかったか?」

「あ、はい、ありがとうございます」

 ドアを後ろ手で閉めて動けなくなる。同じバスローブを着ているのに優雅とはいかに。一瞬で緊張する。風呂を出てバスローブで対面なんて、その後の展開が頭に浮かんで鼓動が早くなる。

「おいで」

 しっとりと濡れたたてがみ、胸へ続く髪。胸元にある毛並み。組んだ足の筋肉と獣毛のバランス。想像以上の色気がある。しかもおいでと言われた。セリフにさえときめかずにはいられない。30歳の男が? いや仕方ない。圧倒的な存在の前では誰でも赤子同然だ。

「飲むか?」

 ゆっくり近づいて横に立てば、腕を引かれて膝の上に座らされた。手にあるグラスの赤い液体から芳醇なワインの香りがする。思わずゴクンと喉を鳴らしたら、男臭い笑みを見せつけられる。

 口に含んだワインが、引き寄せられて重なった唇へと移し込まれる。コクンと喉を通すとスウッと染み渡る。

「待たせてしまって悪かった」

「いえ」

 物欲しそうにワインを見れば、もう一口、口渡される。器用だなと思いながら喉を通す。

「ハーツェリンド・シュルツハーゲン、獅子族の上位貴族にあたる名だ。ここに慣れたらいずれは案内しよう」

「はい」

 ここは獅子の国なのですか? あなたは当主様ですか? 身請けされたその後の運命は? ぜんぶのセリフを飲み込んで頷いた。

「添い寝以上をしても良いか?」

 熱っぽい眼差しで見下ろされたら頷くしかない。抱かれる? この圧倒的な獣人という存在に? 自分の生まれ育ったいろいろなものが打ち砕かれる。

 草食獣が肉食獣に狙われた時の気持ちが分かる気がした。全部を空け渡す。命も全てを委ね、それが当然であると思わされる存在の差がそこにはあった。
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