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81 擬態
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お昼休みになるとカエデからエルの写真が送られて来る。今日の撮影は専属モデル契約をしている雑誌の撮影と契約しているブランド企業との打ち合わせだった。カエデの「順調です。帰宅は19時予定」との連絡を受け取り、スマホをしまう。
「ハーツ?」
準備室でギルベスターと一緒に昼食を取っていると、イヨカが講義から戻って来て、紘伊の行動を見てそう言った。
「カエデからの定期連絡ですよ」
だいたいハーツからスマホに連絡が入る訳がない。ハーツは獣人国にいる。まだ一度もこちらに来た事がない。
「エル?」
「そうです」
イヨカもギルベスターもこちらの世界に馴染みすぎだと思う。紘伊はイヨカを純粋な人だと思っていたし、この世界に獣人が混じっていると聞いても信じていなかった。それなのにどうだ。イヨカのアシスタントについたら、関わる人の中に獣人が多くいる事に気付かされた。しかも種族も様々で、完璧な人の姿に擬態している。エルだってそうだ。エルの人化を初めて見たのは、元爬虫類領からウェルズ領に戻った時で、別れた時だってカゴに入る小さな姿しか見ていなかったから、突然抱きつかれて甘えられて、どれだけ戸惑いの大きかったことか。
「街頭広告見たよ。エルは竜族の中でも美しく成長したよね」
イヨカが執務机についたから、紘伊はお茶とお弁当を運んで用意する。
「獣人の成長ってどうなっているんですか?」
ユウやグランは普通に子どもサイズだ。年齢も人と変わりなく成長している。なのになぜエルだけ成長が早いのか。確かに獣人は成人の姿になると時を止めた様に長く若さを保っているらしいのだけど。
「エルは竜と人のハーフだからね。成長の具合は未知数かな」
イヨカはお茶を飲みながら適当な事を言う。ずっと黙って聞いていたギルベスターが口を挟んだ。
「あの竜族がハーフの子を手放してハーツに預けたんだ。よほど手に負えない何かがあると踏んでいたんだがな」
ギルベスターの存在にももう慣れた。最初、獣人国から元の世界に飛んだ時、受け入れ先にギルベスターがいると初めに聞いていたけど、実際に会って緊張したのは最初だけだった。だって虎の頭部じゃないし、気さくだし、隣にイヨカもいて、そっちの方に驚いたのもある。
「エルは見目が美しいだけじゃなく、覚えも良いよね」
イヨカが関心しているけど、紘伊はいろいろが特殊すぎて不安がいっぱいだ。
「あいつの日本語習得能力すごかったよな」
ギルベスターが呑気な事を言う。そんなに簡単に済ませて良いものなのか。確かに日本語が話せないままだったら仕事なんてさせられないのだから、良かったと思いたいけど。実は生後1年ですなんて誰が信じるのか。
「英語もフランス語もある程度なら話せるらしいですよ」
紘伊はもう諦めている。獣人なんだから、紘伊の常識に当てはめても仕方がない。むしろファンタジー世界の住人なのだ。規格外が当然なんだろう。
「良かったなヒロイ。通訳にエルを連れて行けるじゃないか」
「あんな目立つ容姿の通訳なんか連れて行ったら仕事になりませんよ」
イヨカの発言を却下した紘伊は、食事を終えたギルベスターの為にコーヒーを淹れる。イヨカもギルベスターもこちらでの振る舞いを分かっている。分かっているというか、馴染んでいる。たまに紘伊も彼らが獣人である事を忘れそうになるくらい、彼らは人に擬態している。
「ハーツ?」
準備室でギルベスターと一緒に昼食を取っていると、イヨカが講義から戻って来て、紘伊の行動を見てそう言った。
「カエデからの定期連絡ですよ」
だいたいハーツからスマホに連絡が入る訳がない。ハーツは獣人国にいる。まだ一度もこちらに来た事がない。
「エル?」
「そうです」
イヨカもギルベスターもこちらの世界に馴染みすぎだと思う。紘伊はイヨカを純粋な人だと思っていたし、この世界に獣人が混じっていると聞いても信じていなかった。それなのにどうだ。イヨカのアシスタントについたら、関わる人の中に獣人が多くいる事に気付かされた。しかも種族も様々で、完璧な人の姿に擬態している。エルだってそうだ。エルの人化を初めて見たのは、元爬虫類領からウェルズ領に戻った時で、別れた時だってカゴに入る小さな姿しか見ていなかったから、突然抱きつかれて甘えられて、どれだけ戸惑いの大きかったことか。
「街頭広告見たよ。エルは竜族の中でも美しく成長したよね」
イヨカが執務机についたから、紘伊はお茶とお弁当を運んで用意する。
「獣人の成長ってどうなっているんですか?」
ユウやグランは普通に子どもサイズだ。年齢も人と変わりなく成長している。なのになぜエルだけ成長が早いのか。確かに獣人は成人の姿になると時を止めた様に長く若さを保っているらしいのだけど。
「エルは竜と人のハーフだからね。成長の具合は未知数かな」
イヨカはお茶を飲みながら適当な事を言う。ずっと黙って聞いていたギルベスターが口を挟んだ。
「あの竜族がハーフの子を手放してハーツに預けたんだ。よほど手に負えない何かがあると踏んでいたんだがな」
ギルベスターの存在にももう慣れた。最初、獣人国から元の世界に飛んだ時、受け入れ先にギルベスターがいると初めに聞いていたけど、実際に会って緊張したのは最初だけだった。だって虎の頭部じゃないし、気さくだし、隣にイヨカもいて、そっちの方に驚いたのもある。
「エルは見目が美しいだけじゃなく、覚えも良いよね」
イヨカが関心しているけど、紘伊はいろいろが特殊すぎて不安がいっぱいだ。
「あいつの日本語習得能力すごかったよな」
ギルベスターが呑気な事を言う。そんなに簡単に済ませて良いものなのか。確かに日本語が話せないままだったら仕事なんてさせられないのだから、良かったと思いたいけど。実は生後1年ですなんて誰が信じるのか。
「英語もフランス語もある程度なら話せるらしいですよ」
紘伊はもう諦めている。獣人なんだから、紘伊の常識に当てはめても仕方がない。むしろファンタジー世界の住人なのだ。規格外が当然なんだろう。
「良かったなヒロイ。通訳にエルを連れて行けるじゃないか」
「あんな目立つ容姿の通訳なんか連れて行ったら仕事になりませんよ」
イヨカの発言を却下した紘伊は、食事を終えたギルベスターの為にコーヒーを淹れる。イヨカもギルベスターもこちらでの振る舞いを分かっている。分かっているというか、馴染んでいる。たまに紘伊も彼らが獣人である事を忘れそうになるくらい、彼らは人に擬態している。
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