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竜殱滅
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「竜殱滅って、具体的にどうやるんだ?」
ミコトの最もな反応に、カレンは冷静だ。見た目がこちらに飛ばされてから若くなっていることに気づいたのは、久しぶりに顔を洗った時だ。実際は35歳、でも白銀の竜と交わった時の年齢で止まったとも聞いていた。でもそれは嘘だと思っていた。現代では確実にオジサンへの道を辿っていたからだ。だが違う。久しぶりに見た顔は、水を張った桶に映る歪んだ顔だったけど確実に違う。しかも髭もすね毛も無くなってツルツル。お肌もピチピチ。髪も艶々。確実に25歳のあの時より若くなった。しかも傷が痛くてまともに食べていなかったから、細身で色白にもなっている。美青年、それが今のカレンで、カレンという名が似合ってしまっていた。
「知らん」
顔を洗い、ミコトに壊れた民家から適当な服を見繕ってもらったものを着た。簡単な格好だけど動きやすい。靴はスニーカー。現代のもの。ミコトも民家にあったシャツと黒いパンツ、スニーカー。この世界では浮きそうだけど仕方がない。とにかく逃げて生き残る。それがカレンとミコトの当面の目標だ。
「何千年昔だと思う? しかも異世界の歴史だ。魔法があっても驚かないよ、俺は」
カレンがそう言った所で爆音が轟いた。現代日本人だ。戦争なんて遠い地の出来事で、身近に感じたことなどない。
カレンとミコトは窓辺に移動して身を隠しながら外を見た。砂塵が辺りを煙らせ、周りが良く見渡せない。外に出て、地上を望める場所に伏せて見る。
竜が旋回しながら飛んでいる。それを地上から網を撃ち、捕獲して地に落とし、落ちた竜へ砲弾を浴びせる。血や肉が飛び散っている。生臭い匂いが爆風と共に香って来る。
「本気で殺してる」
カレンは吐き気を覚えて鼻と口を布で覆った。
「ここにいた方が安全な気がするけど?」
ミコトは見るのを辞めてカレンに視線を移す。地上は混乱にある。軍人以外の人は見えないから、事前に避難しているのだろう。ここの民家にも軍人がやって来て、住民を連れて行った。防空壕のようなものがあるのかと推測した。
「竜は殱滅される。それは確実。ここは人の世界になる。俺たちは竜を追わなければダメじゃないかな? この世界のどこかに竜の渓谷がある」
「時空の空間、まだあるかな? 元の世界に戻れる?」
「わからない。でもここでは生きて行けない。そんな気がする」
「気がする?」
ミコトがため息を吐く。
「気がするだけで悪かったな。でも俺たちは体に竜の痕跡があるだろ? 竜の遺伝子を持ち出して竜人を生み出す技術があるのだとしたら、俺らは良い実験材料かもしれない。人の世界では生かして貰えないと思わないか?」
「まぁ、そうかも」
カレンもミコトも竜の性を身に受けている。竜を宿す機能があるということだ。カレンは手術を受けた。だがどこまで手術が成されたのかはわからない。機能を取り出した後なのか、それとも取り出す前だったのか。分かるのは腹を切り裂かれた痕があったことだけだ。
「この地は竜語が通じたんだろ?」
「うん、通じた」
「だったらこの辺りに住んでいた研究者が最初の竜を生み出した研究者ってことになる。さっきの砲台や武器を見ると現代っぽさがあったと思わないか?」
鉄で作られた戦車を思わせる砲台。捕獲用の網を打ち出す兵器。竜に向けられる銃など。長閑な風景にはそぐわない武器の数々。
「確かにそうだな。ガスも水道も整備されていない場所で、兵器だけは進んでいる。違和感があるね」
「この辺りにも現代と繋がる空間があったと思う方が納得が行く。俺たちだけじゃない。他の人がもっと前にここに飛ばされていて、竜の研究をしていたとしたら、竜の遺伝子から竜人を創り上げたことにも多少の納得が行く」
「なるほどね」
ミコトはカレンの言い分に納得して頷いている。
「竜の渓谷は双子島っていう島の中にあるんだ。まずは双子島の場所を探そうと思うけど、たぶん未開の地だと思う。人に知られずに研究できる場所なんてどこにあるんだろう?」
カレンは自分で言って、自分で悩んでいる。
「島って言うからには海の上なんだろ? 漁師とか聞けば良いんじゃないのか?」
「漁師か。良いかもしれないな」
カレンはミコトの意見に同意して頷く。でも続く言葉は声に出さなかった。
生きてたどり着ければ。
ミコトの最もな反応に、カレンは冷静だ。見た目がこちらに飛ばされてから若くなっていることに気づいたのは、久しぶりに顔を洗った時だ。実際は35歳、でも白銀の竜と交わった時の年齢で止まったとも聞いていた。でもそれは嘘だと思っていた。現代では確実にオジサンへの道を辿っていたからだ。だが違う。久しぶりに見た顔は、水を張った桶に映る歪んだ顔だったけど確実に違う。しかも髭もすね毛も無くなってツルツル。お肌もピチピチ。髪も艶々。確実に25歳のあの時より若くなった。しかも傷が痛くてまともに食べていなかったから、細身で色白にもなっている。美青年、それが今のカレンで、カレンという名が似合ってしまっていた。
「知らん」
顔を洗い、ミコトに壊れた民家から適当な服を見繕ってもらったものを着た。簡単な格好だけど動きやすい。靴はスニーカー。現代のもの。ミコトも民家にあったシャツと黒いパンツ、スニーカー。この世界では浮きそうだけど仕方がない。とにかく逃げて生き残る。それがカレンとミコトの当面の目標だ。
「何千年昔だと思う? しかも異世界の歴史だ。魔法があっても驚かないよ、俺は」
カレンがそう言った所で爆音が轟いた。現代日本人だ。戦争なんて遠い地の出来事で、身近に感じたことなどない。
カレンとミコトは窓辺に移動して身を隠しながら外を見た。砂塵が辺りを煙らせ、周りが良く見渡せない。外に出て、地上を望める場所に伏せて見る。
竜が旋回しながら飛んでいる。それを地上から網を撃ち、捕獲して地に落とし、落ちた竜へ砲弾を浴びせる。血や肉が飛び散っている。生臭い匂いが爆風と共に香って来る。
「本気で殺してる」
カレンは吐き気を覚えて鼻と口を布で覆った。
「ここにいた方が安全な気がするけど?」
ミコトは見るのを辞めてカレンに視線を移す。地上は混乱にある。軍人以外の人は見えないから、事前に避難しているのだろう。ここの民家にも軍人がやって来て、住民を連れて行った。防空壕のようなものがあるのかと推測した。
「竜は殱滅される。それは確実。ここは人の世界になる。俺たちは竜を追わなければダメじゃないかな? この世界のどこかに竜の渓谷がある」
「時空の空間、まだあるかな? 元の世界に戻れる?」
「わからない。でもここでは生きて行けない。そんな気がする」
「気がする?」
ミコトがため息を吐く。
「気がするだけで悪かったな。でも俺たちは体に竜の痕跡があるだろ? 竜の遺伝子を持ち出して竜人を生み出す技術があるのだとしたら、俺らは良い実験材料かもしれない。人の世界では生かして貰えないと思わないか?」
「まぁ、そうかも」
カレンもミコトも竜の性を身に受けている。竜を宿す機能があるということだ。カレンは手術を受けた。だがどこまで手術が成されたのかはわからない。機能を取り出した後なのか、それとも取り出す前だったのか。分かるのは腹を切り裂かれた痕があったことだけだ。
「この地は竜語が通じたんだろ?」
「うん、通じた」
「だったらこの辺りに住んでいた研究者が最初の竜を生み出した研究者ってことになる。さっきの砲台や武器を見ると現代っぽさがあったと思わないか?」
鉄で作られた戦車を思わせる砲台。捕獲用の網を打ち出す兵器。竜に向けられる銃など。長閑な風景にはそぐわない武器の数々。
「確かにそうだな。ガスも水道も整備されていない場所で、兵器だけは進んでいる。違和感があるね」
「この辺りにも現代と繋がる空間があったと思う方が納得が行く。俺たちだけじゃない。他の人がもっと前にここに飛ばされていて、竜の研究をしていたとしたら、竜の遺伝子から竜人を創り上げたことにも多少の納得が行く」
「なるほどね」
ミコトはカレンの言い分に納得して頷いている。
「竜の渓谷は双子島っていう島の中にあるんだ。まずは双子島の場所を探そうと思うけど、たぶん未開の地だと思う。人に知られずに研究できる場所なんてどこにあるんだろう?」
カレンは自分で言って、自分で悩んでいる。
「島って言うからには海の上なんだろ? 漁師とか聞けば良いんじゃないのか?」
「漁師か。良いかもしれないな」
カレンはミコトの意見に同意して頷く。でも続く言葉は声に出さなかった。
生きてたどり着ければ。
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