竜の卵を宿すお仕事

サクラギ

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双子島

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 お腹の中の卵が、完全に大きくなる前に取り出すとナギが決めた。お腹の中に卵があると発見してから30日目のことで、大陸の竜殲滅は終了しており、傍には他の竜たちも戻って来ていたが、ナギは彼らに卵のことは告げていない。

 指定された日、施設の中の診察室にナギが、カレンはナギがいる診察室から階をひとつ上にした部屋にいる。まだアイは来ていない。別の竜たちは施設に寄るなとアイから命令がされている。ミコトは施設とは別の住処として与えられた家にいた。

 カレンは緊張していた。おへその下辺りがふっくらしている。でも硬さはない。ナギが言うには直径10センチくらいの楕円形をしていて、殻が柔らかい状態らしい。だからさほど負担なく生まれるだろうと言っていたが、カレンは柔らかい方が怖い。産道って言われても要はひとつしかない道だ。自分で力を入れてしまえる場所ということになる。そこを生きた存在が通る。そんな怖い話はない。相手がシアだったら……そう何度も思う。でもそれはありえない。シアの子ではない。仮にシアの傍にいたとしても、シアの子ではないのに、シアに補助を頼むことはできなかっただろう。だから仕方がない。むしろ手伝ってくれるアイに感謝しなければならない。それなのに、怖い。

 部屋にアイが入って来る。
 アイは黒竜だ。身長はシアと同じくらいだろうか。シアがとても輝いて見えたのは、髪が白銀で色白だったからだろうか。もうすでに遠い記憶になってしまっている。アイは静かだ。表情も変わらないし、声もめったに聞けない。それはシアも同じかと思う。シアの声は二度しか聞いたことがない。

 ベッドに座って膝を抱えているカレンの傍に来たアイは、ゆっくりとした動作でベッドに座った。

「怖いか?」

 アイにしては優しい声だと思った。伸ばされた手がカレンの頬に触れる。カレンは震えそうになる体を、膝を抱えた腕を強くすることで耐えた。そうしたらアイがフッと笑った。目を細め、カレンを見ている。

「ナギを慰めてくれたんだな、ありがとう」

 スッと距離を詰めたアイは、カレンのつむじにキスをする。そうして匂いを嗅ぐ。その行動はシアを思い出させ、心に触れる何かを感じた。

「ナギは自分を責めすぎる。私はナギを困らせる為にこの姿になったのではない。だが、私が何を言おうが、ナギは落ち込むばかりだった。だが同じ人のおまえの言葉は違う。ナギが久しぶりに笑った」

「……やっぱりナギさんのこと、好きなんだろ?」

 カレンは今からアイにしてもらうことに罪悪感を覚える。好きな人がいるのに頼むことじゃない。そう断ろうとしたら、アイはカレンの頬に手を当て、顔を近づけて来た。

「それは今問うことではない」

 唇に唇が重ねられた。思わずカレンは目を見開く。だってシアにもされたことがない。ずっと考えていた愛のあるセックスが頭に浮かんだ。

「今だけだから、良い?」

 軽く唇を合わせ、離れて行った唇を追い、カレンはアイの肩に腕を回し、引き寄せて誘った。

「あのさ、もうきっとこんなこと、しないと思う。シアが好きだけど、シアには会えない。会えないんだったら、もうセックスしない。だからごめん、アイが最後だと思うから、愛のあるセックス、してくれないかな?」

 アイと愛あるセックスをする。どんなダジャレだと思いながら、本心は切実だ。知らぬ間に涙が流れていた。シアを想い報われない涙が流れる。
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