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6 大人たちの作戦会議
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「惚れただと?」
マールに驚愕の表情をされ、恥ずかしさに頭を抱えた。
「1回だろ? 1回だよな?」
カウンター席で、蜂蜜酒を飲みながら、マールと話をしている。
ミルルと別れてたった数時間後には気になって仕方がなさ過ぎて、2日我慢してマールを誘った。
「いや、わかる、わかるよ、あの子は素直で可愛くて側に置いておきたくなる。が、マジでそこまで? 男の子だよ? 間違ってないよな?」
「わかってる。だが小動物系獣人に対する“教え”があるだろう? 想いくらいは確かめておこうと、焦ったのも事実だが」
5年ほどマールと同僚でいるが、こういった話をするのは初めてで、えらく恥ずかしくて逃げたいくらいだ。
「まあ良い、アレスが決めたのなら協力はする。じゃあ、あの話も承諾してくれるのだろう?」
「人族の身受けか?」
「ああ、そうだ。ユートはミルルより一つ年下だ。まだ猶予があると言っている間に売られる場合もある。決めたのなら早々に準備を始めて欲しい」
「ああ……だがな、私はミルルが欲しい。ふたり一緒にというのは難しい」
「ああ、そうか。そういうことになるのか」
人族の扱いは難しい。
私が貴族だと言っても、勝手に逃げ出して来た家だ。今更、頼る気にはなれないし、家を頼れば、あの使用人と同じように扱われてしまう。家に知られる訳には行かない。
「それに私はミルルに振られたからな、人族を引き取ることを盾に強要はしたくない」
「人族を引き取るのか?」
カウンターの隣の席の男が会話に割り込んで来た。
胡散臭さに顔を顰める。
「マスター」
男がマスターを呼ぶ。どうやら常連らしいことは伺えたが、人族を欲しがる連中にいい思いは抱けない。
マスターに紹介を頼んだ男は、じっと私を見ている。
「何事かは知らないが、これは俺の悪友でな、表向きはジラル領産葡萄酒の営業、ウォルだ」
マスターが紹介してくれて、握手を交わす。
「人族に面識が?」
いくらマスターの友人だと言っても、胡散臭ささは拭えない。
「ジラル領の葡萄畑で数名だが働いているよ」
「だが彼をジラル領に連れて行く訳には行かない。彼らに離れる意思はないからね」
マールが言う。
「マスター、冬季の住み込みの店員を探していただろう。どうだ? 人族でもここでなら働けると思うが?」
「面接をする分には構わないが?」
マスターが言う。
「それは良い話だ」
マールは乗り気のようで、晴れ晴れした表情をしている。
「だが身受けは難しい」
私は尻込みしている。
私の名で引き取り、家に知られて横取りされる可能性を考えると怖い。確実に伽に使われる。我が家は人族を物としか見ていない。
「私が引き取ろう」
「なぜ貴方が?」
この店の常連とはいえ、初対面の男だ。種族は犬族で、歳も私より上だ。その人族を引き取り、言葉とは違う扱いをしないとは言い切れない。引き取らせてからでは遅い。
「話を盗み聞いてすまないが、何となく事情を把握したよ。俺は世間の人族の扱いに腹を立てていてね、この領は特に領主城に近付くほど差別が激しくなる。身分で助けられるのなら、助けたいと思うまでだ」
「こいつは信用できるよ」
マスターが仕事をこなしながら、話を聞いている。
「使える物は使っておけば良い。心配せずとも、面接後、雇えると判断したら、この上の部屋を貸して、この店で働いて貰う。心配なら通えば良いだけの話だろ?」
マスターの話が気軽すぎて、拍子抜けするが、マールは喜んで笑っているし、ウォルは本気のようだ。
「わかった。彼らと話をしてみよう。よろしく頼むよ」
マールがウォルと握手をしている。
決定権が自分にないことを、悔しく思っているのだろうなと、自己分析した。
マールに驚愕の表情をされ、恥ずかしさに頭を抱えた。
「1回だろ? 1回だよな?」
カウンター席で、蜂蜜酒を飲みながら、マールと話をしている。
ミルルと別れてたった数時間後には気になって仕方がなさ過ぎて、2日我慢してマールを誘った。
「いや、わかる、わかるよ、あの子は素直で可愛くて側に置いておきたくなる。が、マジでそこまで? 男の子だよ? 間違ってないよな?」
「わかってる。だが小動物系獣人に対する“教え”があるだろう? 想いくらいは確かめておこうと、焦ったのも事実だが」
5年ほどマールと同僚でいるが、こういった話をするのは初めてで、えらく恥ずかしくて逃げたいくらいだ。
「まあ良い、アレスが決めたのなら協力はする。じゃあ、あの話も承諾してくれるのだろう?」
「人族の身受けか?」
「ああ、そうだ。ユートはミルルより一つ年下だ。まだ猶予があると言っている間に売られる場合もある。決めたのなら早々に準備を始めて欲しい」
「ああ……だがな、私はミルルが欲しい。ふたり一緒にというのは難しい」
「ああ、そうか。そういうことになるのか」
人族の扱いは難しい。
私が貴族だと言っても、勝手に逃げ出して来た家だ。今更、頼る気にはなれないし、家を頼れば、あの使用人と同じように扱われてしまう。家に知られる訳には行かない。
「それに私はミルルに振られたからな、人族を引き取ることを盾に強要はしたくない」
「人族を引き取るのか?」
カウンターの隣の席の男が会話に割り込んで来た。
胡散臭さに顔を顰める。
「マスター」
男がマスターを呼ぶ。どうやら常連らしいことは伺えたが、人族を欲しがる連中にいい思いは抱けない。
マスターに紹介を頼んだ男は、じっと私を見ている。
「何事かは知らないが、これは俺の悪友でな、表向きはジラル領産葡萄酒の営業、ウォルだ」
マスターが紹介してくれて、握手を交わす。
「人族に面識が?」
いくらマスターの友人だと言っても、胡散臭ささは拭えない。
「ジラル領の葡萄畑で数名だが働いているよ」
「だが彼をジラル領に連れて行く訳には行かない。彼らに離れる意思はないからね」
マールが言う。
「マスター、冬季の住み込みの店員を探していただろう。どうだ? 人族でもここでなら働けると思うが?」
「面接をする分には構わないが?」
マスターが言う。
「それは良い話だ」
マールは乗り気のようで、晴れ晴れした表情をしている。
「だが身受けは難しい」
私は尻込みしている。
私の名で引き取り、家に知られて横取りされる可能性を考えると怖い。確実に伽に使われる。我が家は人族を物としか見ていない。
「私が引き取ろう」
「なぜ貴方が?」
この店の常連とはいえ、初対面の男だ。種族は犬族で、歳も私より上だ。その人族を引き取り、言葉とは違う扱いをしないとは言い切れない。引き取らせてからでは遅い。
「話を盗み聞いてすまないが、何となく事情を把握したよ。俺は世間の人族の扱いに腹を立てていてね、この領は特に領主城に近付くほど差別が激しくなる。身分で助けられるのなら、助けたいと思うまでだ」
「こいつは信用できるよ」
マスターが仕事をこなしながら、話を聞いている。
「使える物は使っておけば良い。心配せずとも、面接後、雇えると判断したら、この上の部屋を貸して、この店で働いて貰う。心配なら通えば良いだけの話だろ?」
マスターの話が気軽すぎて、拍子抜けするが、マールは喜んで笑っているし、ウォルは本気のようだ。
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決定権が自分にないことを、悔しく思っているのだろうなと、自己分析した。
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