可愛い子が押し掛けて来たけど信用しても良いのだろうか

サクラギ

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7 雇い主に徹する

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 仕事がつまらないのはいつものことだ。だが今は頭の中にミルルがいて、どうにか会えないかと打算している。そうすると早く時間が経つ。別に連絡方法を知っている訳でも、会える場所を知っている訳でもない。

 ただ一つの約束は、土曜の10時、2時間分の掃除だ。

 お昼休みにお弁当を食べる。
 今日も変わり映えのしない自作の弁当を食べるが、マールの弁当はミルル製だ。それが何とも悔しい。

「ハンバーグとポテトサラダを覚えたよ」

 マールのお弁当を覗けば、白飯半分とハンバーグ、ポテトサラダ、卵焼きが入っている。

「ミルルは元気か?」

 誰かに襲われていないか? とは聞けない。マールが本当に気づいているのかわからないからだ。

 ミルルを可愛い子だけだと思っているのなら、そう思わせていた方が、ミルルも過ごしやすいだろうという考えもある。

 ミルルのプライベートだ。私が口を出すことではない。そう、私はただの雇い主で、恋人でも友人でもない。

「あの話があってから週5でお願いしているよ。そうすると、俺とおまえの雇い金で他を受け持たなくても良いらしいからね」

「そうか」

 人族を身受けする話は、私に一任されている。まずはミルルの気持ちを動かさなければならない。武器も何もない中途半端な私をどう売り込むか。悩みは尽きない。

◇◇◇

 土曜の朝の起床時間が早くなった。
 先週はミルルの突然の訪問だったから、寝起きの情けない姿を見せてしまったが、今日からは違う。

 だが掃除をしに来て貰うのだ。掃除をして綺麗にした部屋に招き入れたい所を我慢している。

 インターホンが鳴る。
 今日は通常通りの手順を踏んで、部屋までやって来たミルルを迎え入れる。

「わぁ、今日も汚いですね」

 ズキッと胸が傷むところを我慢して微笑む。いっそ清々しいほど毒舌なのは、素直と訳そうと思う。

「寝室と水廻りは自分で片付けるから、先週と同じようにお願いするよ」

「はい、わかりました」

 にっこり笑ったミルルは、キッチンの椅子に荷物を置いて、エプロンをつけ始めた。

「2時間後に戻るよ」

 本当は側で見ていたいが、気持ちを押し殺して外出する。

 カフェで時間を潰し、街で買い物をする。これがけっこう楽しい。買う相手がいるということの充実感を覚えながら、今日もまた、両手いっぱいの紙袋を持って帰った。

「おつかれさま」

「はい、ありがとうございます」

 ミルルは私の部屋の掃除を心得たのか、先週と同じ範囲の掃除を終えて、お茶の用意もしてくれている。

「お茶にしますか?」

 そう聞かれ、テーブルに買って来た物を並べた。

「お昼にしようか。ミルルも一緒に」

「ありがとうございます」

 焼きたてのパンを10個も購入して来た。サンドウィッチ、惣菜パン、甘いパンなど。いろんな種類を取り揃えてある。

「ここのパン好きです。ありがとうございます」

 ミルルがお茶を入れてくれて、私が砂糖やミルクを用意した。

 エプロンを取ったミルルは、先週と同じ服を着ている。買ってあげたいと思うのをグッと我慢して、ミルルにパンを選ばせ、自分も食べ始めた。
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