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1章
12 帰宅
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ポルシェを乗り捨て、愛器は組織の用意している数ある隠し場所のひとつに押し込み、帰宅する。こういう場合は電車を使う。普段着のままだし、リーマンが朝帰りくらいにしか見えないだろう。間違っても組織の仕事を請け負って逃げているとは思うまい。
でもなと思うのは、獣人って鼻が効くんだろ? セックスの匂いとか硝煙の匂いとか、分かるのかな。町中の寂れた銭湯でも寄って帰るかと思い、そういえば鍵を掛けて来た事を思い出す。だったら良い。鍵は後回しで風呂に入り、朝食を用意して鍵を開ければ良い。多少の時間のズレは寝坊って事で良いのでは。
マンション前の状況を確かめて、無駄に一周して、マンションに入る。エントランスを潜ればエレベーターが一階で待機している。乗り込んで部屋まで上がり、鍵を開けて中に入り、昨夜と状態が同じなのを確認しながら自室に入り、シャワーを浴びる。時刻8時半。それでも余裕をもって朝食の準備を始めるフリを整えてから、ニアの部屋の鍵を外した。ノックをして声を掛けて、ドアを開ける。
「ニア? 遅くなってすまない」
ドアを開けると冷たい風が入って来る。ニアがテラスに出ていて、志津木の呼びかけで室内に戻る所だった。確かに夜間の出入りを禁じただけで、朝に出てはいけないとは言っていない。でも獣人って目も良くないか? 鼻は流石に25階の上昇気流に阻まれて効かないだろうけど。
「いえ、おはようございます、ご主人様」
ご主人様? 昨日は呼んで無かったような。
「なぜご主人様? 改まって伏せなくても良い」
部屋に入って来たニアは、床に膝をついて視線を下げる。まるでそれが躾された格好であるように。
「リビングにおいで。朝食にしよう」
ニアをソファに座らせて、待機を告げる。あの女にされた躾を披露しているのだとすれば、腹の底がムカムカする。獣人は飼い主を転々と渡り歩く者も多い。野良獣人となり、保護されて、また他所へ渡されるからだ。残念な事に使い物にならなくなれば破棄される存在で。こうして住む場所を与えられるだけでも幸運といえる。だが本当にそうだろうか。ニアは無表情で言いつけ通り、ちょこんとソファに座っているが、望んでいる訳はなかった。
「おまたせ」
最初の朝食だ。当初の予定では蜂蜜たっぷりのパンケーキを焼こうか、純和風の朝食にしようか悩んでいたのに、ニアの前に出したのは、食パンの上にレタスとハムと目玉焼きを乗せた簡易なもので、ホットミルクとセットだ。夕食の教訓を得て、志津木はテーブルでニアを正面に見ない位置に座った。
「いただきます」
そう言うと、ニアも同じように手を合わせて「いただきます」と言った。ホッと息を吐きたい所だが、ニアの内心に隠した本音が聞きたいと思っている。
でもなと思うのは、獣人って鼻が効くんだろ? セックスの匂いとか硝煙の匂いとか、分かるのかな。町中の寂れた銭湯でも寄って帰るかと思い、そういえば鍵を掛けて来た事を思い出す。だったら良い。鍵は後回しで風呂に入り、朝食を用意して鍵を開ければ良い。多少の時間のズレは寝坊って事で良いのでは。
マンション前の状況を確かめて、無駄に一周して、マンションに入る。エントランスを潜ればエレベーターが一階で待機している。乗り込んで部屋まで上がり、鍵を開けて中に入り、昨夜と状態が同じなのを確認しながら自室に入り、シャワーを浴びる。時刻8時半。それでも余裕をもって朝食の準備を始めるフリを整えてから、ニアの部屋の鍵を外した。ノックをして声を掛けて、ドアを開ける。
「ニア? 遅くなってすまない」
ドアを開けると冷たい風が入って来る。ニアがテラスに出ていて、志津木の呼びかけで室内に戻る所だった。確かに夜間の出入りを禁じただけで、朝に出てはいけないとは言っていない。でも獣人って目も良くないか? 鼻は流石に25階の上昇気流に阻まれて効かないだろうけど。
「いえ、おはようございます、ご主人様」
ご主人様? 昨日は呼んで無かったような。
「なぜご主人様? 改まって伏せなくても良い」
部屋に入って来たニアは、床に膝をついて視線を下げる。まるでそれが躾された格好であるように。
「リビングにおいで。朝食にしよう」
ニアをソファに座らせて、待機を告げる。あの女にされた躾を披露しているのだとすれば、腹の底がムカムカする。獣人は飼い主を転々と渡り歩く者も多い。野良獣人となり、保護されて、また他所へ渡されるからだ。残念な事に使い物にならなくなれば破棄される存在で。こうして住む場所を与えられるだけでも幸運といえる。だが本当にそうだろうか。ニアは無表情で言いつけ通り、ちょこんとソファに座っているが、望んでいる訳はなかった。
「おまたせ」
最初の朝食だ。当初の予定では蜂蜜たっぷりのパンケーキを焼こうか、純和風の朝食にしようか悩んでいたのに、ニアの前に出したのは、食パンの上にレタスとハムと目玉焼きを乗せた簡易なもので、ホットミルクとセットだ。夕食の教訓を得て、志津木はテーブルでニアを正面に見ない位置に座った。
「いただきます」
そう言うと、ニアも同じように手を合わせて「いただきます」と言った。ホッと息を吐きたい所だが、ニアの内心に隠した本音が聞きたいと思っている。
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