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1章
17 揺動
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海辺のホテルのエグゼクティブルーム。プライベートビーチ所有の完全分離型のホテルだ。ホテル内のショップも貸し切り。ニアにドレスアップさせてショッピングを楽しむ。
「大人しくしてろ」
ニアをソファに座らせて、最上級の客を相手に張り切って接客をする店員が働き蟻に見える。
ニアの作り物の耳にダイヤのピアスをはめ、なんかダイヤに比べたら安いけど、小さな花がかわいいピアスでもう一つの穴を埋めて、シルバーのピンで耳上部の軟骨に通す。
「ニア、キラキラ」
頬にキスをして所有の獣人だとアピールすれば、お金持ちが獣人を自慢げに連れている事情を汲んだ店主が絶賛のアピールをして来た。カード一括で支払って、部屋へ戻る。戻れば食事の用意がされていて、給仕に付いている者を帰した。もちろんチップを握らせて。
「気が済みましたか?」
用意されている食事を窓辺のテーブルに運んで行くニアを見ながら、ネクタイを抜き取ってソファへ投げる。ジャケットを脱ごうとすれば、ニアが後ろに回って脱がしてくれた。慣れた態度でジャケットをハンガーに掛け、ネクタイも取り上げたニアは、きちんとクローゼットへしまった。
「気がすむとは? これも仕事なんだけど?」
「別に良いですけど、これ、高すぎませんか? もちろん返品されるのですよね?」
総額ん千万使った。ダイヤのピアスが特に高い。でも別にカード支払いだし気にもならない。
「付けてろよ。おまえを着飾るの楽しいし、飼い主の甲斐性だろ?」
実際、今までの報酬のほとんどを組織に預けっぱなしで生活費以外に使っていない。総額いくらあるのか知らないけど、数千万くらいなら端金だ。それくらい危ない仕事をして来たとも言うが。
「怖くて歩けません」
着飾らせていたのに、さっさと脱いで、バスローブを付けて食事を前にしている。食べるのは飼い主の許可がいるらしく、そこは従順なまま。
「マジで付け耳なんだな。重みに耐えられるかとヒヤヒヤしたけど、普通だったな」
志津木がそう言うと、ニアは耳に触れる。ダイヤの大きさは小さいが、希少価値のある物でカットも最高級らしい。志津木は良くわからないまま、値段と軽そうな物で決めていたが、店員はお目が高いと絶賛していた。
「考えた事もありませんでした。鏡もあまり見ないので。手術をしたとすれば、尾を取った時かもしれません」
「尾ね、どんなの?」
獣人は尾を手術で取るのが一般的なのだろうか。確かに道ゆく獣人に尾があるのを見た事がない。
「あまり記憶にありませんが、あるとすれば黒豹の形の物でしょうか」
「そんな記憶もないの?」
自分の尾なのに? 取ったのはあの女に拾われた時だから、もう大人だったはず。そんな事まで忘れるほど酷い扱いだったのか。
「ないです。過去の記憶はとても断片的で、本当は現実では無いのかもと思う時もあるくらい曖昧です。もしかしたらチップのせいかもしれません」
「ますます外したくなるな」
食事の合図を与え、志津木はワインを飲む。ふたりの時間を邪魔されたくないとホテル側へ伝えているから、給仕もあっさりと引き下がった。手酌でワインを飲む金持ちはいないと思うが、海と空を背景にして、美味しそうに頬張るニアを見ながら飲む酒は美味い。食事のマナーも、ホテル内での行動も態度も洗練されていた。さすがあの女のペットだった事はある。けどさ、今夜、ここは戦場になる。ニアをあれだけ見せびらかしたんだ。食い付く獲物があるだろう。
「大人しくしてろ」
ニアをソファに座らせて、最上級の客を相手に張り切って接客をする店員が働き蟻に見える。
ニアの作り物の耳にダイヤのピアスをはめ、なんかダイヤに比べたら安いけど、小さな花がかわいいピアスでもう一つの穴を埋めて、シルバーのピンで耳上部の軟骨に通す。
「ニア、キラキラ」
頬にキスをして所有の獣人だとアピールすれば、お金持ちが獣人を自慢げに連れている事情を汲んだ店主が絶賛のアピールをして来た。カード一括で支払って、部屋へ戻る。戻れば食事の用意がされていて、給仕に付いている者を帰した。もちろんチップを握らせて。
「気が済みましたか?」
用意されている食事を窓辺のテーブルに運んで行くニアを見ながら、ネクタイを抜き取ってソファへ投げる。ジャケットを脱ごうとすれば、ニアが後ろに回って脱がしてくれた。慣れた態度でジャケットをハンガーに掛け、ネクタイも取り上げたニアは、きちんとクローゼットへしまった。
「気がすむとは? これも仕事なんだけど?」
「別に良いですけど、これ、高すぎませんか? もちろん返品されるのですよね?」
総額ん千万使った。ダイヤのピアスが特に高い。でも別にカード支払いだし気にもならない。
「付けてろよ。おまえを着飾るの楽しいし、飼い主の甲斐性だろ?」
実際、今までの報酬のほとんどを組織に預けっぱなしで生活費以外に使っていない。総額いくらあるのか知らないけど、数千万くらいなら端金だ。それくらい危ない仕事をして来たとも言うが。
「怖くて歩けません」
着飾らせていたのに、さっさと脱いで、バスローブを付けて食事を前にしている。食べるのは飼い主の許可がいるらしく、そこは従順なまま。
「マジで付け耳なんだな。重みに耐えられるかとヒヤヒヤしたけど、普通だったな」
志津木がそう言うと、ニアは耳に触れる。ダイヤの大きさは小さいが、希少価値のある物でカットも最高級らしい。志津木は良くわからないまま、値段と軽そうな物で決めていたが、店員はお目が高いと絶賛していた。
「考えた事もありませんでした。鏡もあまり見ないので。手術をしたとすれば、尾を取った時かもしれません」
「尾ね、どんなの?」
獣人は尾を手術で取るのが一般的なのだろうか。確かに道ゆく獣人に尾があるのを見た事がない。
「あまり記憶にありませんが、あるとすれば黒豹の形の物でしょうか」
「そんな記憶もないの?」
自分の尾なのに? 取ったのはあの女に拾われた時だから、もう大人だったはず。そんな事まで忘れるほど酷い扱いだったのか。
「ないです。過去の記憶はとても断片的で、本当は現実では無いのかもと思う時もあるくらい曖昧です。もしかしたらチップのせいかもしれません」
「ますます外したくなるな」
食事の合図を与え、志津木はワインを飲む。ふたりの時間を邪魔されたくないとホテル側へ伝えているから、給仕もあっさりと引き下がった。手酌でワインを飲む金持ちはいないと思うが、海と空を背景にして、美味しそうに頬張るニアを見ながら飲む酒は美味い。食事のマナーも、ホテル内での行動も態度も洗練されていた。さすがあの女のペットだった事はある。けどさ、今夜、ここは戦場になる。ニアをあれだけ見せびらかしたんだ。食い付く獲物があるだろう。
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