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2章
14 想定内の動き
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御者台方向の窓がノックされ、小さな隙間からレイモンドへ紙片が渡された。こういう緊急の連絡。志津木のいた世界ならメール的な扱いで、緊急であればあるほど胡散臭く思える。現に紙片に視線を落としたレイモンドは渋面だ。それからしばし考える様にして、御者台の隙間に紙片を戻した。
「緊急事態だ」
そう言ってレイモンドは志津木を見て、すでに降りる用意をしている志津木の勘の良さに笑みを漏らす。
「っていうかそのナイフ、ハクとメイの作業用の物では?」
志津木の武器は勝手に拝借して来た2本のナイフと向こうから持ち込んだサバイバルナイフ1本だけだ。それを使いやすい位置に隠している所をレイモンドに見られたのだが、志津木は特に気にしていない。
「良くわかったな、勝手に持って来たから、今度会う時に謝っておいてくれ」
「……仕方がないな、新しい物を贈っておくよ」
「悪いな」
冗談を交えている暇などないだろうに、レイモンドは落ち着いている。その様子から、この事態は把握済みか、元より狙っていた状況だと判断した志津木は、窓に掛かるカーテンの隙間から外を見る。馬が並走している。乗っているのは軍人のようで、隙間から覗き見た志津木と視線を合わせて来た。面倒な相手らしいと踏んだ志津木は思うより先に隙間をカーテンで埋め、レイモンドを見る。面白そうに見やるレイモンドと視線が合い、人が悪いと思った。
「想像通り、俺が聖気を持つ人を匿い、屋敷に向かっていると軍に伝達された。屋敷にはすでに軍兵が到着して待ち伏せしている」
「どこへ向かう」
「王城へ」
レイモンドがニヤッと笑んだので、志津木も笑う。悠長な事をやっているより目的地に直行する。それは志津木も望む所だ。
「だが王城にはアニエス侯率いる第一精鋭部隊が待ち受けている。真昼間に正面からぶつかる勇気はあるかい?」
志津木は笑う。
「おまえひとりで受けたら良い。俺は勝手にさせて貰う」
前方の窓から王城が臨める。まだ距離があるが、周りを囲う馬の数が増えている。
「ニアは王城裏手の3階だったな?」
「そうだ。胡散臭く鉄格子が後付けされた部屋だから分かりやすいだろう」
レイモンドと話しながらドアを開け、並行する馬の兵を蹴り落として奪い取る。幸いな事に兵の武器は腰に穿いた剣のみらしい。抜刀して追って来る兵馬を後ろに、狭い路地へ入って行く。道など知らない志津木は王城裏を目指しながら路地を迂回し、追いつかれる前に馬上から飛び降り、街の中へ紛れ込む。平凡な庶民服で顔バレもしていない。獣人でないとバレればひとたまりもないが。ただ聖気っていうのが厄介で、居場所はすぐにバレてしまう。ひと所に落ち着く事は叶わない。志津木は王城裏を目指して走った。隠れながら走るのは得意だ。傭兵の血が騒ぐ。静かな家で家事手伝いをして呑気に暮らすより、よっぽど自分らしいと思う志津木だった。
「緊急事態だ」
そう言ってレイモンドは志津木を見て、すでに降りる用意をしている志津木の勘の良さに笑みを漏らす。
「っていうかそのナイフ、ハクとメイの作業用の物では?」
志津木の武器は勝手に拝借して来た2本のナイフと向こうから持ち込んだサバイバルナイフ1本だけだ。それを使いやすい位置に隠している所をレイモンドに見られたのだが、志津木は特に気にしていない。
「良くわかったな、勝手に持って来たから、今度会う時に謝っておいてくれ」
「……仕方がないな、新しい物を贈っておくよ」
「悪いな」
冗談を交えている暇などないだろうに、レイモンドは落ち着いている。その様子から、この事態は把握済みか、元より狙っていた状況だと判断した志津木は、窓に掛かるカーテンの隙間から外を見る。馬が並走している。乗っているのは軍人のようで、隙間から覗き見た志津木と視線を合わせて来た。面倒な相手らしいと踏んだ志津木は思うより先に隙間をカーテンで埋め、レイモンドを見る。面白そうに見やるレイモンドと視線が合い、人が悪いと思った。
「想像通り、俺が聖気を持つ人を匿い、屋敷に向かっていると軍に伝達された。屋敷にはすでに軍兵が到着して待ち伏せしている」
「どこへ向かう」
「王城へ」
レイモンドがニヤッと笑んだので、志津木も笑う。悠長な事をやっているより目的地に直行する。それは志津木も望む所だ。
「だが王城にはアニエス侯率いる第一精鋭部隊が待ち受けている。真昼間に正面からぶつかる勇気はあるかい?」
志津木は笑う。
「おまえひとりで受けたら良い。俺は勝手にさせて貰う」
前方の窓から王城が臨める。まだ距離があるが、周りを囲う馬の数が増えている。
「ニアは王城裏手の3階だったな?」
「そうだ。胡散臭く鉄格子が後付けされた部屋だから分かりやすいだろう」
レイモンドと話しながらドアを開け、並行する馬の兵を蹴り落として奪い取る。幸いな事に兵の武器は腰に穿いた剣のみらしい。抜刀して追って来る兵馬を後ろに、狭い路地へ入って行く。道など知らない志津木は王城裏を目指しながら路地を迂回し、追いつかれる前に馬上から飛び降り、街の中へ紛れ込む。平凡な庶民服で顔バレもしていない。獣人でないとバレればひとたまりもないが。ただ聖気っていうのが厄介で、居場所はすぐにバレてしまう。ひと所に落ち着く事は叶わない。志津木は王城裏を目指して走った。隠れながら走るのは得意だ。傭兵の血が騒ぐ。静かな家で家事手伝いをして呑気に暮らすより、よっぽど自分らしいと思う志津木だった。
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