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2章
18 画策
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王城内でクーデターが起こっているから、裏から脱出するニアに追手は掛からないが、任務に忠実な犬だけが執拗に追って来ている。だが行動の範囲は決まっていて、当然だ、街へ出てしまえば害獣となる。外壁を越えれば追手はおらず、街に溶け込む事も可能となる。
強そうな蔦を引き抜き、ロープを作る。内側は木があるから壁の上に乗れるが、外側は足掛かりのない滑らかな素材だ。ナイフを突き刺してみたが、表面に傷が付くだけで刺さらない。蔦を頼りに降りるしかないが、壁の半分までしか長さがない。その下は建物ニ階分くらいあるだろうか。ひとりなら飛び降りても良いのだが、背にニアがいる。いけるかどうか微妙な所だ。
「ニア、蔦の先から飛び降りれる?」
「うん」
志津木の背から下を見たニアは平然と頷く。信用ならない。木にも登れないのに二階から飛び降りられるのか? それはただ落ちるのではなく?
「怪我無く着地できる?」
そう聞き直せば首を振った。
だろうな。やはり飛び降りるではなく落ちるのだ。ニアが死を厭わない考え方であるのを思い出す。落ちて骨折するくらいの怪我など日常茶飯事だと思い出して辛くなる。なぜニアばかりに不幸が襲うのか。国の第二王子などワガママ放題で臣下を困らせるものではないのか?
「ニア、壁伝いで表に回れる?」
首を振られる。
「隠し通路は?」
ニアが辺りを確認し、指で示した。
「王城正面に出る。意味がない」
ニアが指し示したのは、犬が吠えている辺りの地面で、排水溝の様な蓋が見える。
「王城前から裏へ逃げる隠し通路で、王室からも通じている」
逆走かと思うが、外壁から飛び降りても、そこから動けなくなるよりは、犬を気絶させて穴を抜け、王城前へ抜けた方が混乱に紛れて逃げられる? 微妙な所だ。敵がニアをどう扱うのか分からない。今は大人しく監禁されていると思っているから静かなのだろう。見つかればどうなるのか。
クーデターで王を廃し、兄が王となる。そしてニアはアニエスと婚姻予定だ。王城前にはアニエスがいる。だがレイモンドがいるかもしれない。
「ニアに委ねる。どちらの道を選ぶ?」
「飛び降りる。アニエスに会いたくない」
フルフルと首を振るニアは怯えている様子だ。嫌な事をされたのか? 確かに正面に向かうのを避けたのはニアだ。正面から逃げられるのなら、素直に建物内を抜ければ良い。
それ以上を聞く余裕はなく、壁伝いに降りる判断に従う。だがニアに飛び降りさせない。背負ったまま飛び降りる覚悟を決めた。だが場所は選ぶ。生垣と木のクッションが望める位置。途中まで降りて木に飛びつく。最悪手が届かなくても、生垣がクッションになれば良いと望みを掛けた。
「ニア、掴まって手を離すな。目を閉じて良いと言うまで開けるな、できるか?」
うんと頷いたのを肩で感じた。首輪にキスをされる。忘れていた。ニアに付けた首輪が志津木の首にある。ずっと外さずにいたのはニアとの繋がりだからだ。外さずにいた事を知られた気恥ずかしさと、それを喜んでいるらしいニアの行為に、絶対に守ると言う意気込みが増す。
あれほど嫌だった獣人保護法にサインしたのは、ニアを幸せにするため。ニアが幸せに笑う姿を見たいと思った。
強そうな蔦を引き抜き、ロープを作る。内側は木があるから壁の上に乗れるが、外側は足掛かりのない滑らかな素材だ。ナイフを突き刺してみたが、表面に傷が付くだけで刺さらない。蔦を頼りに降りるしかないが、壁の半分までしか長さがない。その下は建物ニ階分くらいあるだろうか。ひとりなら飛び降りても良いのだが、背にニアがいる。いけるかどうか微妙な所だ。
「ニア、蔦の先から飛び降りれる?」
「うん」
志津木の背から下を見たニアは平然と頷く。信用ならない。木にも登れないのに二階から飛び降りられるのか? それはただ落ちるのではなく?
「怪我無く着地できる?」
そう聞き直せば首を振った。
だろうな。やはり飛び降りるではなく落ちるのだ。ニアが死を厭わない考え方であるのを思い出す。落ちて骨折するくらいの怪我など日常茶飯事だと思い出して辛くなる。なぜニアばかりに不幸が襲うのか。国の第二王子などワガママ放題で臣下を困らせるものではないのか?
「ニア、壁伝いで表に回れる?」
首を振られる。
「隠し通路は?」
ニアが辺りを確認し、指で示した。
「王城正面に出る。意味がない」
ニアが指し示したのは、犬が吠えている辺りの地面で、排水溝の様な蓋が見える。
「王城前から裏へ逃げる隠し通路で、王室からも通じている」
逆走かと思うが、外壁から飛び降りても、そこから動けなくなるよりは、犬を気絶させて穴を抜け、王城前へ抜けた方が混乱に紛れて逃げられる? 微妙な所だ。敵がニアをどう扱うのか分からない。今は大人しく監禁されていると思っているから静かなのだろう。見つかればどうなるのか。
クーデターで王を廃し、兄が王となる。そしてニアはアニエスと婚姻予定だ。王城前にはアニエスがいる。だがレイモンドがいるかもしれない。
「ニアに委ねる。どちらの道を選ぶ?」
「飛び降りる。アニエスに会いたくない」
フルフルと首を振るニアは怯えている様子だ。嫌な事をされたのか? 確かに正面に向かうのを避けたのはニアだ。正面から逃げられるのなら、素直に建物内を抜ければ良い。
それ以上を聞く余裕はなく、壁伝いに降りる判断に従う。だがニアに飛び降りさせない。背負ったまま飛び降りる覚悟を決めた。だが場所は選ぶ。生垣と木のクッションが望める位置。途中まで降りて木に飛びつく。最悪手が届かなくても、生垣がクッションになれば良いと望みを掛けた。
「ニア、掴まって手を離すな。目を閉じて良いと言うまで開けるな、できるか?」
うんと頷いたのを肩で感じた。首輪にキスをされる。忘れていた。ニアに付けた首輪が志津木の首にある。ずっと外さずにいたのはニアとの繋がりだからだ。外さずにいた事を知られた気恥ずかしさと、それを喜んでいるらしいニアの行為に、絶対に守ると言う意気込みが増す。
あれほど嫌だった獣人保護法にサインしたのは、ニアを幸せにするため。ニアが幸せに笑う姿を見たいと思った。
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