性癖って性格と同じだけ異なると思うんだけど俺に合う相手っている？

1 狙いは五條、みんな五條

　その日の飲み会は、びっくりするほど何もなく終わった。

　いったい何の為に集まったのかと考えてみるが、その理由さえも思い出せない。ただ流されるままに参加した。それが答えのような気がする。だいたい蓮池が悪い。男4人で暇つぶし的に集まったハズの飲みの席に、隣にたまたま座った女子大生を引き入れたからだ。蓮池は女の子大好きだし、飲むと口が軽くなるお調子者だ。メンバーに五條がいたのも悪い。顔面偏差値の高い五條。隣の女子どもがチラ見していたのは記憶にある。男4×女4、声を掛けないなんて男が廃る、のか？　俺は嫌なんだけど？

　蓮池め、俺がトイレに行っている間に素敵女子ひとりをお持ち帰りして逃げやがった。残りの2人は五條の左右にぶら下がる勢いで攻めているし、心の友(顔面平均値という意味で)、夕凪は頭脳派女子と何やら頭良さげな話題で討論を始めていた。俺、ひとり？　えーありえねえ。酒は美味いよ。つまみも美味い。でもなぜ俺の話し相手がいない？　ちょうど4×4だったんじゃねえの？　五條の顔面偏差値のせい？　いやいや、俺のモテなさっぷりのせいでしょ。

　朝の清々しい日差しに打ち拉がれながら、無駄に飲み過ぎた酒のせいで、ぐわんぐわんと回る視界にきつく目を閉じて、隙間の開いたカーテンを閉める。少しでも日差しから身を守ろうとカーテンを引っ張り、ブチブチっと裂ける音を聞いて、破れたカーテンを確認したくなくて枕に突っ伏した。弱い、弱すぎる。カーテンの話ではない、俺のことだ。思い返しても素敵女子の顔を思い出せない。浮ついた笑い方と語尾を上げる媚びた声。五條の腕に手を置いて、ベタベタベタベタ触れる手先——ムカつく。

　俺はどうせヘタレだ。飲みの席に五條がいるからって毎度毎度参加して、五條のモテっぷりにイラついて、そんなのおくびにも出さずに飲んで飲んで飲みまくって、気づけば家の玄関で倒れていたりする。そしていつも思うのだ。今日もまたびっくりするほど何も無く終わったと。