4 / 39
4 相談は計画的に
しおりを挟む
好きになれば全てが許せるなんて綺麗事は経験不足による妄想でしかない。
それでもそれに縋りたいと思うくらいには拗れていて、恋愛が全てじゃないと言いつつも、世には恋愛が溢れていて、隣を見れば愛を疎かにできるくらい恵まれた環境のヤツらがゴロゴロいる。
「ユウキちゃんはネコなの? 試したいの?」
去って行ったナナは俺を見限ったらしい。新規客を狙う為か入口付近に立って常連と話している。チラ見されていると思うのも自意識過剰なのか。
「ネコ……なんですかね? とりあえず入れるのムリだから、そっちはどうかと思うんですけど。試したいのともまた違って。好きな人が相手ならいけるんじゃないかな~って感じで」
照れ隠しで笑って見せているけど内心は戦々恐々だ。ゲイバーだって初体験でどこまで話して良いのかわからないし、男と経験のない俺が踏み込んでいい場所かさえわからない。
「好きな人は?」
「います!」
せめて好きな男がいるアピールくらいしないと許されない気がする。
「どういう子?」
「同じ大学の友人で見た目がタイプというか」
「綺麗系でしょ」
カレンに指摘されてビクッとする。どうして分かるのかとじーっと見たら、不敵に笑まれた。
「綺麗系の素敵女子に乗られて満更でもなかったんでしょ? すごく面食いなんじゃない? でも理想と現実とのギャップに耐えられなかった。ある意味ああいう行為は不潔だものね。思春期の夢見る坊やには刺激が強かったのかも」
今でも思い出せるあの光景。きっと普通の男子なら性的興奮を覚えるあの瞬間に、俺は射精ではなく汚物を吐いた。素敵女子に素敵なことをされているのに吐くっていうトラウマは今でも健在で、女子とそういう行為をしようとも思えない所か、女子そのものが苦手となり、触れるのさえ躊躇う存在になってしまった。
「一度試してみたら? ユウキくんとシたいって相手、良かったら紹介するけど? 理想の相手を前に出来なくなるよりはダメージ受けないと思うし、慣れた相手ならその時に相談も出来ると思うけど?」
たしかに。そう思いながらも戸惑う。五條の事が好き。許される範囲内で側にいたいと思うくらいには好き。両腕に寄り添う女を敵視するくらいには好き。でもその反面で諦めている。五條は女が好きだ。同棲相手がいるという噂もある。同棲相手がいるのに女遊びをしているし、女のいる場所に出向いてモテを楽しんでもいる。
「綺麗系のタチっていってもいろいろいるけど、同い年くらいが良い?」
「……そうですね」
もう一杯、お酒を飲んで、覚悟を決める。
「出来ればお付き合いできる相手が良い——と思います」
わおっとカレンが声を上げる。
「そうね、真面目そうだものね」
同情にも見える笑み。憐れみ? でも良い。俺に遊ぶなんてスキルはない。そういう行為をするのなら、好きになれる相手が良い。
「俺なんかを好きになってくれそうな相手っているものでしょうか?」
自分に自信などカケラもない。魅力的な話術もない。惹きつけるような特技もない。そしてああいった行為にトラウマを持つような俺を相手にしようと思うような危篤な相手っているのだろうか。
「長期戦ね」
とカレンが呟く。グイッと酒を飲み、俺を見る。
「金曜日にいらっしゃい。大学生の坊やは金曜に多いわ。おすすめを教えてあげる」
相談料五千円。さらに後日追加予定。それでもこのトラウマを克服できるのなら必要経費か。
「わかりました。よろしくお願いします」
財布から五千円を抜き出して、差し出した。
「頑張りましょうね」
五千円を引き抜いたカレンがウンウンと頷いている。ドキドキするのは新たな恋人の出現に対する緊張によるものか? ドアまで送られて、外に出る。嫌、違う。寂しくなった財布の中身に対する不整脈だ。仕送りとバイトで生活している学生にとって飲み代五千円は痛い。明日から菓子パンひとつかカップ麺の生活にしよう。
それでもそれに縋りたいと思うくらいには拗れていて、恋愛が全てじゃないと言いつつも、世には恋愛が溢れていて、隣を見れば愛を疎かにできるくらい恵まれた環境のヤツらがゴロゴロいる。
「ユウキちゃんはネコなの? 試したいの?」
去って行ったナナは俺を見限ったらしい。新規客を狙う為か入口付近に立って常連と話している。チラ見されていると思うのも自意識過剰なのか。
「ネコ……なんですかね? とりあえず入れるのムリだから、そっちはどうかと思うんですけど。試したいのともまた違って。好きな人が相手ならいけるんじゃないかな~って感じで」
照れ隠しで笑って見せているけど内心は戦々恐々だ。ゲイバーだって初体験でどこまで話して良いのかわからないし、男と経験のない俺が踏み込んでいい場所かさえわからない。
「好きな人は?」
「います!」
せめて好きな男がいるアピールくらいしないと許されない気がする。
「どういう子?」
「同じ大学の友人で見た目がタイプというか」
「綺麗系でしょ」
カレンに指摘されてビクッとする。どうして分かるのかとじーっと見たら、不敵に笑まれた。
「綺麗系の素敵女子に乗られて満更でもなかったんでしょ? すごく面食いなんじゃない? でも理想と現実とのギャップに耐えられなかった。ある意味ああいう行為は不潔だものね。思春期の夢見る坊やには刺激が強かったのかも」
今でも思い出せるあの光景。きっと普通の男子なら性的興奮を覚えるあの瞬間に、俺は射精ではなく汚物を吐いた。素敵女子に素敵なことをされているのに吐くっていうトラウマは今でも健在で、女子とそういう行為をしようとも思えない所か、女子そのものが苦手となり、触れるのさえ躊躇う存在になってしまった。
「一度試してみたら? ユウキくんとシたいって相手、良かったら紹介するけど? 理想の相手を前に出来なくなるよりはダメージ受けないと思うし、慣れた相手ならその時に相談も出来ると思うけど?」
たしかに。そう思いながらも戸惑う。五條の事が好き。許される範囲内で側にいたいと思うくらいには好き。両腕に寄り添う女を敵視するくらいには好き。でもその反面で諦めている。五條は女が好きだ。同棲相手がいるという噂もある。同棲相手がいるのに女遊びをしているし、女のいる場所に出向いてモテを楽しんでもいる。
「綺麗系のタチっていってもいろいろいるけど、同い年くらいが良い?」
「……そうですね」
もう一杯、お酒を飲んで、覚悟を決める。
「出来ればお付き合いできる相手が良い——と思います」
わおっとカレンが声を上げる。
「そうね、真面目そうだものね」
同情にも見える笑み。憐れみ? でも良い。俺に遊ぶなんてスキルはない。そういう行為をするのなら、好きになれる相手が良い。
「俺なんかを好きになってくれそうな相手っているものでしょうか?」
自分に自信などカケラもない。魅力的な話術もない。惹きつけるような特技もない。そしてああいった行為にトラウマを持つような俺を相手にしようと思うような危篤な相手っているのだろうか。
「長期戦ね」
とカレンが呟く。グイッと酒を飲み、俺を見る。
「金曜日にいらっしゃい。大学生の坊やは金曜に多いわ。おすすめを教えてあげる」
相談料五千円。さらに後日追加予定。それでもこのトラウマを克服できるのなら必要経費か。
「わかりました。よろしくお願いします」
財布から五千円を抜き出して、差し出した。
「頑張りましょうね」
五千円を引き抜いたカレンがウンウンと頷いている。ドキドキするのは新たな恋人の出現に対する緊張によるものか? ドアまで送られて、外に出る。嫌、違う。寂しくなった財布の中身に対する不整脈だ。仕送りとバイトで生活している学生にとって飲み代五千円は痛い。明日から菓子パンひとつかカップ麺の生活にしよう。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる