性癖って性格と同じだけ異なると思うんだけど俺に合う相手っている？

15 ない物ねだりの愚痴

　大学生男子の一人暮らしといえば1Rとか1Kで部屋には寝に帰って来る程度で自炊も面倒でカップ麺で済ますのが定番だと思っていたけど、完全に人それぞれだと思わざるを得ない。

　自分の部屋に戻ってため息を吐く。だいたいウチにはベッドがない。入り口左右にキッチンと風呂とトイレがあって奥に出しっぱなしのコタツ机がある。あとは冷蔵庫と小さなカラーボード。ハシゴがあってロフトがある。ロフトに布団を敷いていて、気が向いたら干すけど気が向くのは季節の変わり目くらい。足元に収納袋を置いて中に季節ごとの布団を収納している。夏は分厚く、冬は薄く、みたいな。

　そういうのが普通だと思っていた。仕送りバイトで一人暮らししてるヤツは皆金に困っていると、どうして思い込んでいた。だいたい蓮池や五條の家も知らない。どこのエリアに住んでいるのかも。遊びに行く時は決まって目的地付近の駅前だったし、帰りはいち早く別れるから、誰がどの路線を使っているのかも知らない。そういえば五條はたまにバイクで通学している。蓮池は車を持っていたような。夕凪は別。アイツは実家から通っているからまた話が違う。

　机に荷物を置いて紙袋から着替えを出して洗濯機に入れる。色柄物とか素材とか気にした事もない。服全部脱いで洗濯機に入れて、ひとまずシャワーを浴びた。

　ウチの風呂は湯船が小さい。膝を抱えてやっと入れる広さだ。間違っても男二人で入ろうとは思わない。湯船だけでなくシャワーをするスペースだって二人は無理だ。

　はあっとため息。ハルは金持ちだ。バーからマンションまでタクシーだったし。セキュリティのしっかりしたマンションであの広さって幾らかかるの。俺ん所はこれでも月6万。それに水道光熱費が掛かるから、テレビとか電子レンジとか置いていない。最初から付いていたエアコンも付けた事がない。なんか良いなと思って買ったコタツも極力付けないようにしているし。それでも仕送りとバイト代じゃ苦しい。

　息を吐く。これは愚痴だ。俺はそれでも家を出たいと思った。過干渉な両親と姉のいる家では自分の心が壊れそうだったからだ。俺は今望んで手に入れた場所にいる。女がダメで、でも普通に接しなければ生きて行けない世の中だと思っていたけど、一歩踏み出せば別の見え方になった。女がダメで、でも男が好きって訳でもない。それでもその中に希望があって、希望だと思える人に出会えた。それがどんな意味を持つ相手になるのかはわからないけど、踏み出した一歩は大きかったと思える。

　今はまだそれで良いと思う。