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20 どういう感情のはなし

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 いつも一緒にいる友達でも、知らない部分は沢山ある。それが恋人だって同じ事で、夫婦だって同じだ。それが知らない方が良かったと思うのか、知れて良かったと思うのか、それもまた受け取る側の自由であるけど。

 何をどう考えて良いのか分からない。五條とハルとの間でされた俺の話は、土曜の試合に必要だからされたのか、ハルが俺の事を知りたくて話題にしたのか。五條から俺の話をハルに振ったのだとすれば、それはどんな意味を持つのか。しかもこの話を五條とハルのどちらに聞いたら良いのか。いっそ聞かずに土曜を無難にやり過ごして、無かった事にすれば良いのか。

 スマホがポケットの中で震える。見れば五條からだ。

「なに?」

「さっきは悪かったな」

「良いけど」

 五條のこと、好きだと思うのは、こういうフォローの速さだったり、面倒見のいい所だったりする。あとは変に取り繕わないところだけど、それは時と場合にもよる。

「なーおまえが言い出したの? 俺のこと」

 そこがかなり気になる。五條はノーマルなはず。蓮池がどっちもイケるって話の時、五條は是正も否定もしなかったけど、そういう話は聞いた事がない。というか、女の子が周りにいっぱいいるし、何人かとそういう関係になったという話を聞いた事がある。

「ハルの気を惹きたくて話題にしたんだ。まさか呼ぶ話にまでなるとは思わなかった」

「なんだよ、それ」

 やっぱりかという気持ちと、まさかなという気持ちが入り混じって気分が悪い。なんで五條がハルの気を惹くっていう話になる? 友情? 恋人的な感情?

「ハルってさ、先月までバイト忙しくて練習に来てなかったんだ。でさ、出て来られるようになると、ギャラリーも増えて、それ目当てでメンバーも出て来るし。そういう理由でハルが必要でさ。おまえが来てハルが喜んで出てくれるならーって」

「そういう理由? 俺、ギャラリー多いの苦手だけど?」

「知ってる。でもグラウンドの中には入って来ねえし。一回だけで良いからお願いな」

 っていうか、すげえホッとした。恋人的な感情とか言われてたら、俺、どうしてたんだろう。確実に行かなかったのは分かるけど、付き合いまで終わらせたかもしれない。ハルとの。

「良いって言ったから、心配しなくても行くよ」

「ありがとうな、じゃ」

 通話が切れる。本気でホッとした。これでハルとも普通に話せる。ハルの方には下心があったとしても、それは嬉しい。うん、ちゃんと嬉しい。普段は友達で、ふたりの時は恋人で。本当にそうなれたら良いなって思うよ。できるかどうかは分からないけど。俺は五條とどうにかなりたいとは思っていない。好きだけど、そういう対称には見ていない。見てはいけないと線引きしている。でもハルは違う。好きになる。ちゃんと好きになって、付き合えたら良いなと思っている。
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