上 下
30 / 39

30 それから (完)

しおりを挟む
 人生何が起こるか分からない。よく聞く言葉だけど事実だと分かるのは、実際に起こってからだと実感する。だってこんな自分は想定していない。今でも思う。あの出会いは運命だった? なんてクサいセリフが思い浮かぶくらい、俺は幸せなんだろう。

「ユウキ、準備できてる?」

「はい、大丈夫です。患者さん呼びますね」

 ハルの義理の姉になった朱音先生に呼び捨てられる日々。主に院内の先生を朱音先生がしていて、ハル先生は外に出ている事が多い。まだ新米の歯科医だから、研修も多い。

「山田さん、お待たせしました。奥のお部屋へどうぞ」

 歯科助手もいるけど、俺の仕事の手が空いている時は手伝っている。主な仕事はレセプト管理と会計業務だ。本当は別のどこかに就職しようと思っていたけど、ハルが忙しすぎて会えないから、側にというか、ハルの生活圏内にいて欲しいとお願いされたのと、朱音先生の信頼のおける男がいてくれると助かると言う、ハルのお兄さんの意見も汲んで一緒にいる。確かに女性ばかりではいざと言う時に困るし、臨時で雇う医師を完全に信用するのもなかなか難しい。その点、俺は女性に性的感情はないし、ハルがいる。それにハル家族との付き合いも4年になるし。単純に信用されているのは嬉しいし。

「ハル先生、午後には戻って来るみたいですよ」

 歯科助手のミカさんがからかって来る。院内では俺とハルの事がバレてる。俺がハルといると表情が変わるって言われたのに対し、狼狽えたのが原因なんだけど。仕方ないよね? 週1くらいしか会えない時だったし、白衣のハル、すげえ格好良いし。裏倉庫でキスされた後なんて顔赤くなってるだろうし。

「ホント、うるさい」

 ミカさんはもう奥に行っていないのに、俺は顔が赤くなってるのを自覚して、狼狽えている。今は目の前の席に患者はいないけど。大きくため息を吐いて気分を変える。

——もうすぐハルに会える。奥に引き入れて、キスをしよう。




おわり

◇◇◇

ありがとうございました。
番外編続けます。
本文に入れるには弾けすぎ?私的にお遊び感覚のお話です。
二人が付き合ってLillyに訪れたら?編です。エロ度上げてます。当作比ですが。
色んな意味で覚悟を持ってお付き合い頂けたら嬉しいです。拍子抜けだったらごめんなさい。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:589pt お気に入り:0

サカバンバスピスのぼうけん

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

一攫千金

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

幼なじみはイケメン関西人!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:43

【完結】婚約破棄は計画的に!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:48

ロマンスの壊し方教えます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:139

卑猥な「大人の恋愛指令カードゲーム」を体験します

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:0

うさぎの楽器やさん

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:68

忘れられない匂い

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...