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番外編 以前のハル 6 (完)
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ハルに支えられながら簡易なシャワー室で体を流して、安いボディソープの匂いになって、服もハルに着せて貰って、肩を借りて部屋を出た。人生最大の恥ずかしさで覚束無い足を動かして、階段を降りて行くと、ぬるい視線が向かって来る。さすがに暗黙の了解な部分はあるけど、いいな~とか、さすがハルとか、小さな声が意に反して届いてしまう。ハルの肩に顔を埋めて歩き、人のいない入り口付近のソファに座らされる。カウンターへ行き、鍵を返して会計をするハルを眺めている。カレンと話しながらすごく嬉しそうに笑うハルを見れば、こんな恥ずかしさなんて我慢できてしまう自分が不思議だ。
「お待たせ、タクシー呼んだから、行こう」
抱えられて、立たせてもらって、もう介護だ。でも腰が立たなくて、太ももがガクガクしている。すぐに治ると思ったのに、まだダメらしい。カウベルの鳴るドアを出て、タクシーを待つ。
「1時間くらい入れっぱだったから」
仕方ないよって、耳元で言われて——恥ずかしすぎる。
「早く帰ろ」
タクシーに乗せられて、ハルの肩に頬を寄せる。乗った場所が場所だから、運転手も目的地を聞いた後は見て見ぬフリをしてくれる。タクシーを降りる頃には歩けるようになっていて、マンション前では距離を取った。
「お風呂入るだろ?」
もう帰る先が普通にハルの家になっている。疑問も何もない。着替えも置いてあるし、私物が増えて行っている。
「入る」
簡単にシャワーを浴びただけだ。まだ青臭い匂いや古いヤニの匂いが付いている気がして落ち着かない。
「ゆっくり入って」
着替えやタオルを用意してくれていて、お湯も入れてある。スマホで湯張りをしたんだろうな。用意周到はハルのデフォルトだ。
あんなに夢中になったの初めてで、ハルを信頼しているから出来たんだと思う。あそこでは初対面でああいう事をする人がたくさんいる。俺だってハルに出会えなければ、あそこで求めなければならないくらい、切実な状況になってたかもしれない。ただ楽しめるかは別として。体を隅々まで洗って、お湯に浸かってゆっくりして、風呂を出る。交代でハルがお風呂に入っている間に髪を乾かして、歯を磨く。眠いけど、ハルを待つ。
「まだ寝てなかったの?」
髪を拭きながら出てきたハルが洗面台の前に立ってドライヤーのスイッチを入れる。近づいてハルの腹に手を回して、肩甲骨に頬を寄せる。
「どうした?」
ううんって頬を動かして意思を伝えると、ハルが振り返ってキスをくれる。少し満足してキッチンへ向かう。水分補給しているとハルが来て、グラスを奪われた。
「寝よう」
って手を繋がれてベッドルーム行く。疲れてる。頭がぼんやりしているけど、ハルが足りない気がしている。ベッドに横になって、一緒の布団に入っても、ハルの体に触れている。ハルは電気を消してスマホを見ている。
「明日、車で送るから、ギリギリまで寝る? 1限あるんだよね?」
明日の用意を家に取りに帰って、大学へ向かう。ハルも1限あるから、家から大学まで電車だ。
「7時起き」
「了解」
ハルがスマホのアラームをセットする。腕に手を絡めて肩におでこを寄せている。離れがたい。ハルがスマホを置いて、向き合ってくれる。
「疲れただろ? 寝ろよ」
髪を撫でられた手を取って、甲にキスをすると、手を引かれて俺の甲にハルがキスをする。ふふって笑う息がかかる。
「なに? ユウキ、可愛いね。余韻、抜けない? なんかまだ気怠げ」
「寝たら、朝になる。帰りたくない」
ぼんやり口にして、何を言っているんだろうと思う。
「ごめん、寝る、おやすみ」
背を向けて目を閉じる。色ボケたアホさが恥ずかしすぎる。
「可愛い、ユウキ、引っ越して来る?」
後ろから抱きしめられて、声が背中に響く。Tシャツめくられて、背中にある噛み跡とキスマークにキスされた。ピクッと体が揺れる。
「本気で、ユウキ。実際、来年から大学忙しくなるんだよね。ユウキと会う時間無いかもしれなくて。春までにはお願いしようと思ってたんだ。一緒に住んで? ユウキ。兄にはもう話してある」
「いいの?」
振り返ってハルを見る。キスできる距離にハルがいて、真剣な視線を受け止めた。
「少しずつ越しておいで。兄の部屋だったところ、使って良いって」
「お金、今の払ってる分くらいしか払えないよ? すげえ頼るし、ハルの負担じゃない?」
キスされる。ゆっくりした、甘いやつ。
「ユウキと俺は話し合いだろ? ゆっくりお互いに慣れて行こう?」
嬉しくてハルに抱きついた。嬉しいを最大限に伝える。
「好きだよ、ハル、嬉しい」
「うん、俺も」
ハルの匂いとミントの香り。大好きなハル。
おわり
◇◇◇
ありがとうございました。
次話 番外編 Lillyでの実証
付き合って2年目の終わりの春の話。
ハルとユウキの関係を外野が色々言うお話です。Hなし。
「お待たせ、タクシー呼んだから、行こう」
抱えられて、立たせてもらって、もう介護だ。でも腰が立たなくて、太ももがガクガクしている。すぐに治ると思ったのに、まだダメらしい。カウベルの鳴るドアを出て、タクシーを待つ。
「1時間くらい入れっぱだったから」
仕方ないよって、耳元で言われて——恥ずかしすぎる。
「早く帰ろ」
タクシーに乗せられて、ハルの肩に頬を寄せる。乗った場所が場所だから、運転手も目的地を聞いた後は見て見ぬフリをしてくれる。タクシーを降りる頃には歩けるようになっていて、マンション前では距離を取った。
「お風呂入るだろ?」
もう帰る先が普通にハルの家になっている。疑問も何もない。着替えも置いてあるし、私物が増えて行っている。
「入る」
簡単にシャワーを浴びただけだ。まだ青臭い匂いや古いヤニの匂いが付いている気がして落ち着かない。
「ゆっくり入って」
着替えやタオルを用意してくれていて、お湯も入れてある。スマホで湯張りをしたんだろうな。用意周到はハルのデフォルトだ。
あんなに夢中になったの初めてで、ハルを信頼しているから出来たんだと思う。あそこでは初対面でああいう事をする人がたくさんいる。俺だってハルに出会えなければ、あそこで求めなければならないくらい、切実な状況になってたかもしれない。ただ楽しめるかは別として。体を隅々まで洗って、お湯に浸かってゆっくりして、風呂を出る。交代でハルがお風呂に入っている間に髪を乾かして、歯を磨く。眠いけど、ハルを待つ。
「まだ寝てなかったの?」
髪を拭きながら出てきたハルが洗面台の前に立ってドライヤーのスイッチを入れる。近づいてハルの腹に手を回して、肩甲骨に頬を寄せる。
「どうした?」
ううんって頬を動かして意思を伝えると、ハルが振り返ってキスをくれる。少し満足してキッチンへ向かう。水分補給しているとハルが来て、グラスを奪われた。
「寝よう」
って手を繋がれてベッドルーム行く。疲れてる。頭がぼんやりしているけど、ハルが足りない気がしている。ベッドに横になって、一緒の布団に入っても、ハルの体に触れている。ハルは電気を消してスマホを見ている。
「明日、車で送るから、ギリギリまで寝る? 1限あるんだよね?」
明日の用意を家に取りに帰って、大学へ向かう。ハルも1限あるから、家から大学まで電車だ。
「7時起き」
「了解」
ハルがスマホのアラームをセットする。腕に手を絡めて肩におでこを寄せている。離れがたい。ハルがスマホを置いて、向き合ってくれる。
「疲れただろ? 寝ろよ」
髪を撫でられた手を取って、甲にキスをすると、手を引かれて俺の甲にハルがキスをする。ふふって笑う息がかかる。
「なに? ユウキ、可愛いね。余韻、抜けない? なんかまだ気怠げ」
「寝たら、朝になる。帰りたくない」
ぼんやり口にして、何を言っているんだろうと思う。
「ごめん、寝る、おやすみ」
背を向けて目を閉じる。色ボケたアホさが恥ずかしすぎる。
「可愛い、ユウキ、引っ越して来る?」
後ろから抱きしめられて、声が背中に響く。Tシャツめくられて、背中にある噛み跡とキスマークにキスされた。ピクッと体が揺れる。
「本気で、ユウキ。実際、来年から大学忙しくなるんだよね。ユウキと会う時間無いかもしれなくて。春までにはお願いしようと思ってたんだ。一緒に住んで? ユウキ。兄にはもう話してある」
「いいの?」
振り返ってハルを見る。キスできる距離にハルがいて、真剣な視線を受け止めた。
「少しずつ越しておいで。兄の部屋だったところ、使って良いって」
「お金、今の払ってる分くらいしか払えないよ? すげえ頼るし、ハルの負担じゃない?」
キスされる。ゆっくりした、甘いやつ。
「ユウキと俺は話し合いだろ? ゆっくりお互いに慣れて行こう?」
嬉しくてハルに抱きついた。嬉しいを最大限に伝える。
「好きだよ、ハル、嬉しい」
「うん、俺も」
ハルの匂いとミントの香り。大好きなハル。
おわり
◇◇◇
ありがとうございました。
次話 番外編 Lillyでの実証
付き合って2年目の終わりの春の話。
ハルとユウキの関係を外野が色々言うお話です。Hなし。
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