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処刑台へ
しおりを挟む今僕は、処刑台に自ら上がろうとしている。
処刑されるこの日を望んでいた。
今までありがとう。
さようなら。
いつから歯車は噛み合わなくなったのか。
いつから友人の顔が、仮面を付けたかのように一定のものになってしまったのか。
いつから壊れたラジオのように同じ話を繰り返すようになったのか。
処刑が行われるその時まで過去の思い出に浸っていた。
今日も誘われるがままに、深夜のコンビニの前に集合する。
若い男たちは自分を入れて六名集まった。
もともとこの集いには八名の参加者がいた。
しかし、一人はこの集いが始まって三ヶ月で処刑され、もう一人は一ヶ月前に処刑された。
最近の話題は、二人目に処刑された子の話でもちきりだった。
内容は、もちろん罵倒や誹謗といった罵りであった。
でもそれは仕方のないことだ。
今残った僕らによって処刑されたのだから。
彼らも処刑されることを望んでいた。
事実、自らこの場を去ったのだ。
そんな中、次は自分の番であると心の中で確証していた。
ここは変化を嫌う。
変化しようとするものはこの場所から処刑されてしまうのだ。
同じ話、同じ仲間、同じことの繰り返し。
それらを好む者だけがここで生きて行くことができる。
しかし、それに対しての嫌悪の感情が、自分の中に確かに存在してしまっていたのだ。
だから、私は処刑される。
一通り二人目に処刑された子の話が終わると、煙草に火をつける。
各々違った名柄のタバコを吸っているが、全て同じに見えてしまう。
僕は風向きを読み、風が流れる反対側に位置を取る。
そういえば、処刑された二人も煙草は吸っていなかった。
偶然だろうか。
煙草を二吸いほどすると、まるで台本があるかのように最近買った車の話に移る。
稼ぎはそこまでないが、ローンを組んで好きな車を持つ。
僕は車を持っていなかったので、話にはあまり興味がなかった。
それでも、なんとか話について行くように、質問をして誤魔化す。
早く処刑されたいのだが、いざその場に立つと中々足を踏み出す勇気が湧かない。
すると、一人の友人が最近抱いた女の話をふる。
女の名前は変化していたものの、話の内容は淡白でいつもと何も変わりはしない。
日付を跨いでこの話を続ける。
すごく退屈だ。
これもまたいつもと同じことだが、クライマックスに入る。
一人一人将来の夢を語り始めた。
本当に夢を見ているのではないかと思うくらい安易な夢で、僕には「空を飛びたい」「宇宙旅行をしたい。」といっているのと何ら変わりはなかった。
だが、これはチャンスだ。
処刑されるにはこの機を逃してはならない。
これまでの友人との別れを意味する。
全ての映像がフラッシュバックする。
こういう時人はなぜ良いことばかり思い返すのだろうか。
だが、それは記憶ではあるが幻想である。
勇気を振り絞り、その場にいる全ての人に言い放つ。
「叶うわけねーだろ。」
処刑が始まる。
「はぁ?」
一瞬きょとんとした視線が集まったが、その後は苛立ちに変わったのがわかった。
「何でそんなこというんだよ」「空気壊しやがって」「つまんねー」
そういった感情が視線から発せらていた。
こちらもしっかりと処刑されるため、挑発するような態度でその集いを見下ろす。
そこに今までの情のようなものは存在していなかった。
最後の言葉を言い放てば処刑は完了する。
もう二度とここには戻ってこないだろう。
だけどもし先に行った二人に僕が会えるなら、今後違った形で会えるかもしれない。
何年も一緒にいたのに、変わってしまったのは僕の方だ。
「帰るわ。」そう言い残した。
最後は友人の顔も見ず、重い足取りでその場を後にする。
~あとがき~
長く一緒に付き合ってきた友人でもある時一瞬で、離れたり仲良くなくなったりすることがあると思います。
それは小学校から中学校、中学校から高校、高校から大学。
人それぞれ、時期は違えど、別れはやってくると思います。
それは「変化」が密接に関わっていて、言い方を変えれば「成長」とも捉えられると思います。
けど、忘れちゃいけないのは、自分が変化できるように、他人も変化できると言うことです。
だからどれだけ長くなろうとも、必ずまた笑い合うためにどこかで再会できる。処刑台のその先で。
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