寵愛バトル~ワンオペ王妃ソフィアの苦悩の日々~

高橋 カノン

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041 一網打尽の魔法陣

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「色々わかったぞ」

 ダービルがオートナムから帰って来た。



「何かあったの?」

「ああ。あの側室、飛んでもない女だぞ。薬の行商のふりして、娼館に入り込んだんだ。男を虜にする薬とか、しわに効く薬とかを売り込みにな。簡単に入れてくれた」

「なるほどー。ダービル、頭いいね」

「今分かったのか、デルタ」

 ダービルは、デルタの頭をワシワシとした。



「色々聞いてみたら、フローリアって娼妓がいる間は、皆腹痛だの、下痢やら、頭痛やらでいつも誰かが具合が悪かったらしい。だが、死んでいなくなったら、皆ケロっとしたんだそうだ。災いを呼ぶ女って言ってたぞ」



「え?仲間に、一服盛っていたって事……?やばいな、あんなきれいな顔をして」



「それで、縁起が悪いから、払いの効果のある薬草を炊いてやるって言って、フローリアの部屋に入ったんだ」

「おお!潜入上手いな、ダービル」

「ふふん。もっと褒めてくれ、ティモシー」



「こっそり光らない魔法陣を作動してみたら、部屋中に魔法草の残滓ざんしがあった。草の残滓ざんしなんて本当は微々たるもんだが、あれは毎日何かをやってた後だぞ」

「毒を盛り慣れてるって事か……」



「あと、領主もフローリアの客だったそうだ」



「え?」

 皆で顔を見合わせた。ドット子爵は義父だ。王は知っているのだろうか。



「あと、こっちも分かった事がある」

「公子、いついらしたんですか?」

「さっきだ。ヘルガに会いたくてね」

 ヘルガの髪を一筋取って言う。公子、それはヘルガでなくても、見ているこちまで胸が高鳴るので止めて頂きたい。



「ドット子爵は、ガーランド伯爵夫人の妹のエリス姫との婚約を申請していた。王太后が邪魔をしたがね。貧乏爺に嫁にやろうと画策したが、それを嫌ってエリス姫は自分で命を絶った」



「いつの話ですか?知りませんでした」

「十年くらい前の話だ。王太后はその申請の記録ごと破棄している。なかった事にされたんだ」

 公子は公爵家の諜報部隊”影”を使って、王宮周辺の情報を集めていた。



「エリス姫が亡くなって、母親のシンシア・バークレー夫人は心を病んだ。末の姫とバークレーで死んだように暮らしてるよ」



 ドット子爵とガーランド夫人が、商売以外でつながっている可能性が出てきた。



「ガーランド伯爵夫人からしたら、王太后は憎い相手でしょうね」

「そうだな、ティモシー。それに、本来はバークレー夫人が立后して、オードリー姫が王太子になるかもしれなかったんだ」



「そうなってたら……」

「と、本人たちは思うだろうな」

 ウィリアム陛下が産まれたのは、ただの偶然だ。だが、偶然が運命の輪を回すこともある。



「そこで、だ」

 公子が、最奥の間の中心に、ものすごい魔法陣を広げて光らせた。



「グレッグ、何これ。何十種類の魔法陣を交差させてるの?こんなの、起動出来ないよ」

 ヘルガの言う通りだ。一つの魔法陣が次の魔法陣を起動し、それが三つ組みになって順次、時間をずらしながら、全体の魔法陣を発動させるように見える。これ以上は、ちょっと所見で分かるレベルじゃない。



「すごいだろう?ヘルガ」

 公子は嬉しそうに、ヘルガの賞賛を待っている。



「あの、グレッグ。すごい事はすごい。けど、これ何が発動するの?」

「エドワード殿下を座標化したんだ。どこに居てもエドワード殿下の場所が分かり、初期設定した時に付随していなかったものは、全てマーキングされる」



「と、いいますと……」

 ダービルがおずおずと言う。

「つまり、王子様がどこに居ても、何か飲み食いしたり、体につけられたり、触ったりしたらすぐに分かるって事でしょ?」

「ご明察」

 公子がデルタの頭を撫でた。デルタ、やはり優秀だな……。



「公子、マーキングだけだと、毒や刃物を使われたりしたら間に合わなくないですか?」

「マーキングの瞬間に、物質を異空間に飛ばすから大丈夫だ。それとマーキングは連鎖にしてあるから、その素材や人物に関わった物や者すべてにマーキングする」

「ああ、なるほとー。ここのとこが、排除と連鎖の魔法陣なんだー」

 公子とデルタは魔法陣を眺めながら、二人だけで理解しあっているようだ。



「あの、大変言いにくいのですが」

 これは俺が言わないといけない。

「何だい?」

「これ、人が発動できる魔力の三倍ありますが……」

「うん。だから、ティモシー、君がやってくれ。僕はそこまで魔力量ないからね」



「え?私がですか……。多分死んでしまいますが……」



「大丈夫だよ。ソフィアのためじゃないか。それに、気づいてないのかな?『時戻し』はこれのさらに二倍の魔力がいる。そんなのをやって戻ってきたんだから、これくらい、気持ちよくやっておくれ」



「ええー!これの二倍?」

 部屋にいた全員が叫んだ。



(そ、そうなのか……?)



 俺は必死だったので、魔力量の計算をしないで発動させた。出来るかどうか、そんな事は考えないでやったんだ。



「ソフィアの側には私が付く。ティモシーはこの魔法陣を発動して、他のメンバーは、マーキングの瞬間にその場にいる者を捕らえてくれ。これで、一網打尽にするんだ」



「ヘルガ。これを作るのに、十日も寝ていないのだ……。君の胸で休ませてくれ」

 こうしはヘルガに甘えて、彼女の頭に自分の頭をもたせかけた。こんな男に掴まったヘルガは災難だと言わなければならない。



「……仕方ないわねえ」

 ヘルガは、すっかり一年間放置された事を忘れて、公子を受け入れている。ヘルガ、男の我儘を全部受け入れてはいけない。







 後は具体的な警備体制を組むために、公子と俺はフォースリア公爵家と連携する必要がある。魔塔の全面協力については、公爵家が経済的なバックアップを約束してくれた。



(ソフィア、もう少しだ。待っててくれ……!)
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