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旅立ち
2人ボッチ
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あの行商人の言っていたことは本当だったようだ。言われた方向に歩いていると街が見えてきた。
チスタの街。規模はクルトよりほんのちょっと大きいくらいだが、大きな時計台が見える。夕陽と相まってすごくきれいだ。やっぱこういうの大事だよな異世界には。
中は、露店がメインストリートに沿って並んでいた。営業は終わっているっぽいが、飲み屋であろう家からわいわいやってる声が聞こえる。とりあえず宿を探す。
「アーヤ、宿はどこだ?」アーヤはキョロキョロした後、指を差す。ほう、ベッドっぽい絵が描いてある看板が宿ね。わかりやすくて良し!さっそく中に入ると肝っ玉母ちゃんぽい店主がいた。
「いらっしゃい! 2人かい?」
「はい、そうなんです。1泊いくらですか?」
「うちは200ヤンだよ!」
『え!? 宿が1泊200ヤン!? あのエセ商人どんだけぼったくろうとしてやがったんだ!』
あのムカつく顔を思い出してしまった。運良く向こうの欲求とこっちの持ち物が合致していたからお金を払わずに済んだが、出だしから冷や汗をかかされた。もう奴のことを考えるのはやめよう!
「あの~、この荷車はどうしたらいいですか?」
「それは横の倉庫に入れておくれ」言われた通り荷車を預け、部屋の鍵をもらう。
ふぅ、宿の確保はオッケーだ。荷物を部屋に置いてゆっくりした後、軽くアーヤにお金の事を教わった。どうやらお札は無いようだ。金貨1000、銀貨100、銅貨10、それに1ヤン硬貨がある。
「アーヤ、俺はこれから街を歩いてくるつもりだけど、どうする?」
アーヤは親指を立てて、グッドのサインを見せる。
「助かるよ。俺、人と話すのが苦手でさ・・・知らない人が怖いんだ。」
これ以上は言わなかった、わざわざトラウマを話す必要は無いだろう。アーヤがこっちを心配そうな顔で見る。アーヤにこんな顔をさせてはいけない、俺がなんとかするんだ!
「さぁ、アーヤ行くよ」2人で夜の街に出かける。
俺には行きたいところがあった。そう、飲み屋だ。これは日本の友達を思い出しての事だ。
酒が大好きな友達がいた。そいつは1人でいろんな飲み屋を巡っていたのだが、俺は酒がそこまで好きではなかったため、あまり誘われなかった。本人も一人でぶらぶらするのが好きだと言っていた。
「引っ越して新しい町に来たらまず居酒屋探すだろ!」今でもこの言葉は覚えている。
この男のすごかったことは、いろんな店でいろんな人と出会い、意気投合し友達になったり、一緒に趣味の絵の個展を開いたり、更には仕事すらやることがあった。
俺の知見が狭いのは承知しているが、人見知りの人間からするとあいつのやっていることは神業のように思えた。自分には無理だと思いつつも憧れた。なるべく知らない人と会う飲みやイベントに誘われたらがんばって参加するようにしていたが、なかなか心が開けなかった。こっちが開かないと、相手も開かない。人間関係とはそのようになっているのだ。
もちろん出会うべくして出会う人もいる。俺にもいた。日本だと親戚、同じ部活の仲間、クラスメイト、近所の人々、サークルの仲間。こっちだともちろん、ばあちゃんとアーヤだ。これらは全部俺が進んで出会いに行ったものではない。生きていく中で、成り行きで出会った人々。「さぁ、今日から仲間だ」と最初から仲間意識が生まれたところから繋がった人々。どれもみんな大切な人たちだ。
でもたぶんこれだけじゃダメなんだ。自分からどんどん関係を築いていける人間はやっぱりいろんな事を教えてもらえる。何かあったとき、始めたいとき、協力を頼むことができるかもしれない。そんな人の数が、たぶん俺の何倍もいるはずだ。今の俺にはアーヤしかいない、これだけじゃきっとこの先必ず行き詰まってしまう、情報を聞き出すんだ。自分に言い聞かせながら飲み屋の入り口に着いた。
弱音を吐いてる場合じゃない、やるしかないんだ。大きく深呼吸をしてドアを開ける。
様々な人がテーブルを囲んで楽しそうにわいわいやっているのが目に入る。「あの、」声を出そうと意気込んだと思っていた。あれ?声が出てない。全てがスローモーションになる。心の中で勝手に俺が語り始めた
良いなぁ。そんなバカ笑いして楽しいだろうなぁ。
この中の誰も俺のことを知らない・・・。
誰も俺に気づいてない・・・。
誰も俺が入っていけるように、輪っかを空けてくれていない・・・。
いっそみんな初対面の方が楽だ。仲間内に入っていくのが1番ツライ、、大学の風景がダブって見える
『こんなに人がいて、にぎやかな空間に俺はヒトリボッチ』
気づくと俺はたたずんでいた。前に、進めなかった。足が動かなかった。逃げ出したくて、この場から離れたいのを我慢するのが精一杯だった。
何も考えられない。頭が白くなって、どうしていいのかわからない。すごく長い間ここに立ち尽くしているように感じる・・・
ギュッ!!
ハッと我に返る。アーヤが俺の手を強く握っていた。握られて、はじめて俺の手が震えていたことに気づいた。
横を見るとアーヤが俺を見つめていた。いきなり俺が立ち尽くして不思議に思っただろうな
「アー、、ヤ」情けない声を出す
アーヤはううんと首を横に振った。その顔は八の字眉ではなく、力強かった。
”ほら、行くよ!”
アーヤが口を動かした、でも声は出てない。でも俺には何を言ったのかはっきりわかった
アーヤに連れられて、にぎやかな空間に2人ボッチで入る。
チスタの街。規模はクルトよりほんのちょっと大きいくらいだが、大きな時計台が見える。夕陽と相まってすごくきれいだ。やっぱこういうの大事だよな異世界には。
中は、露店がメインストリートに沿って並んでいた。営業は終わっているっぽいが、飲み屋であろう家からわいわいやってる声が聞こえる。とりあえず宿を探す。
「アーヤ、宿はどこだ?」アーヤはキョロキョロした後、指を差す。ほう、ベッドっぽい絵が描いてある看板が宿ね。わかりやすくて良し!さっそく中に入ると肝っ玉母ちゃんぽい店主がいた。
「いらっしゃい! 2人かい?」
「はい、そうなんです。1泊いくらですか?」
「うちは200ヤンだよ!」
『え!? 宿が1泊200ヤン!? あのエセ商人どんだけぼったくろうとしてやがったんだ!』
あのムカつく顔を思い出してしまった。運良く向こうの欲求とこっちの持ち物が合致していたからお金を払わずに済んだが、出だしから冷や汗をかかされた。もう奴のことを考えるのはやめよう!
「あの~、この荷車はどうしたらいいですか?」
「それは横の倉庫に入れておくれ」言われた通り荷車を預け、部屋の鍵をもらう。
ふぅ、宿の確保はオッケーだ。荷物を部屋に置いてゆっくりした後、軽くアーヤにお金の事を教わった。どうやらお札は無いようだ。金貨1000、銀貨100、銅貨10、それに1ヤン硬貨がある。
「アーヤ、俺はこれから街を歩いてくるつもりだけど、どうする?」
アーヤは親指を立てて、グッドのサインを見せる。
「助かるよ。俺、人と話すのが苦手でさ・・・知らない人が怖いんだ。」
これ以上は言わなかった、わざわざトラウマを話す必要は無いだろう。アーヤがこっちを心配そうな顔で見る。アーヤにこんな顔をさせてはいけない、俺がなんとかするんだ!
「さぁ、アーヤ行くよ」2人で夜の街に出かける。
俺には行きたいところがあった。そう、飲み屋だ。これは日本の友達を思い出しての事だ。
酒が大好きな友達がいた。そいつは1人でいろんな飲み屋を巡っていたのだが、俺は酒がそこまで好きではなかったため、あまり誘われなかった。本人も一人でぶらぶらするのが好きだと言っていた。
「引っ越して新しい町に来たらまず居酒屋探すだろ!」今でもこの言葉は覚えている。
この男のすごかったことは、いろんな店でいろんな人と出会い、意気投合し友達になったり、一緒に趣味の絵の個展を開いたり、更には仕事すらやることがあった。
俺の知見が狭いのは承知しているが、人見知りの人間からするとあいつのやっていることは神業のように思えた。自分には無理だと思いつつも憧れた。なるべく知らない人と会う飲みやイベントに誘われたらがんばって参加するようにしていたが、なかなか心が開けなかった。こっちが開かないと、相手も開かない。人間関係とはそのようになっているのだ。
もちろん出会うべくして出会う人もいる。俺にもいた。日本だと親戚、同じ部活の仲間、クラスメイト、近所の人々、サークルの仲間。こっちだともちろん、ばあちゃんとアーヤだ。これらは全部俺が進んで出会いに行ったものではない。生きていく中で、成り行きで出会った人々。「さぁ、今日から仲間だ」と最初から仲間意識が生まれたところから繋がった人々。どれもみんな大切な人たちだ。
でもたぶんこれだけじゃダメなんだ。自分からどんどん関係を築いていける人間はやっぱりいろんな事を教えてもらえる。何かあったとき、始めたいとき、協力を頼むことができるかもしれない。そんな人の数が、たぶん俺の何倍もいるはずだ。今の俺にはアーヤしかいない、これだけじゃきっとこの先必ず行き詰まってしまう、情報を聞き出すんだ。自分に言い聞かせながら飲み屋の入り口に着いた。
弱音を吐いてる場合じゃない、やるしかないんだ。大きく深呼吸をしてドアを開ける。
様々な人がテーブルを囲んで楽しそうにわいわいやっているのが目に入る。「あの、」声を出そうと意気込んだと思っていた。あれ?声が出てない。全てがスローモーションになる。心の中で勝手に俺が語り始めた
良いなぁ。そんなバカ笑いして楽しいだろうなぁ。
この中の誰も俺のことを知らない・・・。
誰も俺に気づいてない・・・。
誰も俺が入っていけるように、輪っかを空けてくれていない・・・。
いっそみんな初対面の方が楽だ。仲間内に入っていくのが1番ツライ、、大学の風景がダブって見える
『こんなに人がいて、にぎやかな空間に俺はヒトリボッチ』
気づくと俺はたたずんでいた。前に、進めなかった。足が動かなかった。逃げ出したくて、この場から離れたいのを我慢するのが精一杯だった。
何も考えられない。頭が白くなって、どうしていいのかわからない。すごく長い間ここに立ち尽くしているように感じる・・・
ギュッ!!
ハッと我に返る。アーヤが俺の手を強く握っていた。握られて、はじめて俺の手が震えていたことに気づいた。
横を見るとアーヤが俺を見つめていた。いきなり俺が立ち尽くして不思議に思っただろうな
「アー、、ヤ」情けない声を出す
アーヤはううんと首を横に振った。その顔は八の字眉ではなく、力強かった。
”ほら、行くよ!”
アーヤが口を動かした、でも声は出てない。でも俺には何を言ったのかはっきりわかった
アーヤに連れられて、にぎやかな空間に2人ボッチで入る。
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