あの~、ちょっといいですか?

佐土原いづる

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リコーン編

リコーン逃亡

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何だ!? 突然大きな鐘の音が聞こえてきた。ジャスミンの顔が青ざめる

「まさか、警鐘!? リコーンで警鐘が鳴るなんて!」

「ってことは、今リコーンが攻撃されてるのか!?」

「えぇ、その通りよ!帝国軍しか考えられないわね」

「!?」

嫌な予感がする。

エセ商人が言ってた、帝国軍は”災いをもたらす者”が現れたと。俺がこっちに来たタイミング、襲われるクルトとリコーン。

『俺か? 俺なのか!?』

でも災いをもたらす者なんて捕まったら絶対死ぬに決まってる!

「どうする? 逃げるか?」

「そうしましょう。でもリコーンは小さいけど警備軍を持っているわ、侵攻を食い止められればいんだけど、あまり期待できないわね・・・」

「クルトをあんなにした奴らだ。侵攻されれば何も残らないかもしれない。うまく敵が少ない所から脱出しよう、アーヤも良いか?」アーヤが頷く。

病院を出ると街がごった返していた。当たり前だ、自分の街が攻撃されてるんだから。

「がぁ!!!」街を走る女性が右肩にぶつかった、それでもとんでもない痛みだ。

「やべぇ。よりにもよってこんな時に!!」まだ走ることは俺には無理だ

アーヤがすかさず俺の道路側に立ち、腰に手を回してくれる

「アーヤごめ、、ありがとうな!」アーヤの表情は真剣だった

「2人ともこっちよ!」ジャスミンの指示で脇道に入っていく

「みんな港に向かっているわね、そんなに大勢で行っても船はおろか、帝国軍の的になるだけだというのに、」

「でも、港以外にどうやって? 泳いで行くには遠すぎるぞ」

「大丈夫、こういう時のためにレーナと昔から打ち合わせしている場所があるの。そこに向かいましょう」さすがジャスミン、こういう事にもぬかりがない。

はぁ、はぁ、早歩きでもしんどいな。さっきの振動で傷口から血が滲んでいる。

ドン!

遠くで爆発音がする、とうとう侵攻が始まったか。急がないと!

海が見えてきた、船が着けそうな場所は無いがジャスミンの言う待ち合わせ場所なのだろう

「止まれ!」

振り向くと剣を持った帝国兵がこちらに向かってくる。くそ!こんなところにも。奴ら本当に隅々までリコーンを潰すつもりだ。見える人間を殺した後は、隠れているのを燃やすってか。

「待ちなさい! 私は医者です。帝国も医者は少ないんじゃない? ここにいるのは何の役にも立たないケガ人と女の子だけよ」ジャスミンが交渉を持ちかける

「医者か。確かに悪くない、帝国も喉から手が出るほど欲しいだろう。だが、どいつが災いをもたらす者かわからない以上、今リコーンにいる人間は残さず排除する必要がある。」

『何が占いだ? もうちょっと細かいとこまでわかんねぇのかよ!』

話が通じない兵士に怒り覚える。

「私たちを見逃してくれたら、あなたの体を上から下まで治療してあげるけど」

「ほーう。それは名案だ。だが、それはお前以外を殺して俺の奴隷にすればいいだけのこと、死んでもらおうか」

ジャスミンの誘惑も帝国兵には届かなかった。

「お前、まじでクズだな」

「最後の言葉はそれで良いか?」兵士が俺に向かってくる。よし、とりあえず標的は俺になったな。

「アーヤ、俺が一瞬だけ時間を稼ぐ。後ろから奴の急所、玉を蹴り上げろ、わかるな?」

口を拭うふりをしながらアーヤに小声で話しかける。

「前は鎧に守られている、下から突き上げてくれ。頼んだよ」アーヤを俺から離す

「さぁ、ケガ人一人と勝負だ。かかってきな」精一杯の挑発をかける

相手をよく見ろ、一瞬だけ全力を出せれば良い。戦いを経験したことは無い、でも逃げ腰だと見えるものも見えなくなることくらい知ってる。集中しろ!

「ザコの分際で口だけは達者だなぁ、死ねぇ!」兵士が剣を振り上げる。縦に大振り、てことは横に動けば!

パンチは打ったことはないが、蹴りならガキの頃から何万回とやってきた。センタリングに合わせるように奴の腕にタイミングを合わせろ!

「ふん!」こっちからも2歩踏み込んで奴の横っ腹に蹴りを入れようとする。間合いがいきなり狭くなった分俺の蹴りの方が先に当たる。が

「あああ!!!」傷にかかる衝撃に倒れる。でも奴のひと振りを防ぎ、バランスを崩すことはできた。

奴が体勢を整え、俺に剣を振り上げる。その時

バン!

アーヤが奴の股間を後ろから蹴り上げた

「ぐう!」兵士の動きが止まった。

「おまえええ!!」兵士が形相を変えてアーヤに振り向く。鎧で守られててダメージが通ってない!? 成功していたら確実にうずくまるか気絶するはずだ!

「アーヤ!!逃げろ!!」叫ぶがアーヤが動かない。どうする!!その時、俺の横を人影が通り抜ける。

ガン!!!

誰かが兵士の後頭部を大きな棒で勢いよく叩き、その場で人形のように倒れた。

「間に合ったようだね。遅くなってごめんね!」

「レーナさん!」

「レーナ!!」

俺とジャスミンが同時に叫ぶ

「感動の再開は後だよ! さぁ早く、こっち!」

「ううう!!!ダメだ、体が動かない!」どうやらあのキックで完全にやってしまったらしい

「やっぱりあんた、傷が治ってないんだね!」

「俺の事は置いて、先にい」言いかけると、アーヤが俺を持ち上げようと必死に力を入れている

「あんたの死に場所はここじゃないよ! ジャスも手伝って!」

「ええ!!」

3人が俺を持ち上げて運んでくれている。

「あんた軽いねぇ、ちゃんと食べてんのかい?」レーナさんがそんなことを言って気を紛らわしてくれる

「こっちに来て大変なことが多くてね・・・ありがとう、みんな」

間もなく船に到着し、リコーンを離れる。良かった、兵士が1人だったから何とかなったが、複数人いたらやばかった・・・
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