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異世界っぽい現実 第2章
立花咲夜出現っ!
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中華鍋の1件からおよそ1週間。
これといって特筆すべきような騒がしい出来事は起きなかった。中華鍋みたいな魔人が再び襲ってくるようなことも、魔法少女が現れて目の前でバトルし始めることもなかった。言わば平凡な日常である。
いや、一つだけあったな。中華鍋が戦うようなことほどの大きな出来事ではなかったのだが。
入学式の次の日、望月が俺の通う学校に転校してきたのだ。そのつもりなら最初から入学しとけよ。
「しょうがないじゃん! 私だってこうなるんだったらちゃんと入学してたよ~」
頬を膨らませて反論するその姿は、駄々をこねて暴れ回る子どものようだった。
「じゃ、なんで転校なんかしたんだ? 今の状況は最初の予定とは違ってきているってことか? 」
「うん。本来、私はマスターのご近所さんになってい親しくなりつついざという時にお守りするっていう予定だったんだけどね。予測襲撃時刻に大幅なズレが出てきてしまったから、おそらくいつ襲ってくるかわからない状況になってしまったの。だからこうしてマスターのできるだけ近くにいたほうがいいっていうワケよ」
「なんでその予測襲撃時刻とやらに大幅なズレが出来ちまったんだ? 」
「原因は分からないの。なんでズレちゃったのかなぁ……。こんなこと滅多に、いや、絶対になかったはずなのに」
というのが転校してきた理由らしい。
望月が転校してきた日の帰りにこんな感じで聞き出した。
嘆くように呟く望月を見て、会話が途切れることを恐れた俺は新たな質問をぶつけてみた。どうでもいいようなことだったのだが。
「ところで望月、その予測襲撃時刻とやらをアテにするといつ俺は中華鍋みたいな魔人に襲われる予定だったんだ? 」
「えーっと、あの日から1週間後の午後3時頃のはずよ」
おいおいおい。中華鍋の日から1週間後っていったら土曜日じゃねえか。俺は土曜日の3時のおやつも堪能できない予定だったのか? 予測襲撃時刻が外れてくれてありがたく思う。そんなことで休日のリラックスタイムが潰されてたまるか。
この話を最後に会話が途切れてしまい、俺たちは無言で家まで帰らなければならないことになってしまっていた。
というくらいしか特筆するようなことも起きない平凡な日々を満喫しまくってた俺は高校生活初めての休日を向かえた。
どう過ごそうかとあれこれ考えているうちに、望月が元気いっぱいの声で近所迷惑なことをやらかした。
「図書館行こうよ! マスターっ! 」
こいつに読書の趣味があるとは意外だったな。
他にやることなんて格闘ゲームで望月と対戦くらいしかないのでその提案にのることにした。
そうだな。
休日の散歩も兼ねて市内の図書館の中でも一番大きいところに行くか。
と、提案すると、
「え? いやいいよぉ。私はここから一番近い図書館がいいっ」
と言って駄々をこねそうになったので、仕方がない。こいつの望むとおりにしてやるか。
俺の住むマンションから一番近い図書館まで行くことにした。
といっても、マンションからはどんなに頑張っても15分以上かかるような距離にあるので、けっして近くてコンビニ感覚で行けるというわけではない。
そんな道を30分かけてやっと図書館までたどりいた。2人とも図書館の中にある椅子に腰を下ろしてぐったりとしていた。
近くにあった本を適当に取って読んで暇でも潰そうかと考えた俺だが、図書館なんてくるのは小学校の読書感想文を書くために課題図書を探したとき以来だ。なんとなく懐かしさを感じた俺は、重くくたびれた身体を無理やり起こして図書館を1周することにした。
一方望月はと言うと、なにか読みたい本があるのか知らんがキョロキョロと辺りを見回してなにかを捜しているような様子をしていた。やがて図書館中をぐるぐると歩き出すようになった。
「ふぅ」
題名が面白そうだからという単純な理由で手に取ったラノベを読みふけっていると、これがまた面白い。
読書も悪くないかもななんて思い始めてグングンと本の世界に惹き込まれていく。
推理ものだったのだが、現実にもありそうでなさそうな難解な事件を気持ちいいほど次々と解いてい……
「あ! いたいた!マスターっ! 」
どうやら俺はゆっくり読書も出来ないらしい。
俺のリラックスタイムを奪い去った被告人望月は、反省する様子も全くなく満面の笑みでこちらを見てきている。無期懲役の刑に処したい。
っていうか図書館くらい静かに過ごしてくれ。
「エヘヘへ。ゴメンね。マスターに会わせたい人がいるから連れてきたの。図書館で待ち合わせってことになってたからここまで来たんだ。黙っててゴメン」
俺の心の呟きが顔に書いてあったのか、いきなり望月が詫びを入れてきた。しかしこいつは、俺のリラックスタイムを邪魔したことにはあまり反省していないようで、俺に隠し事をしたことを詫びているようだ。一応図書館のマナーについても詫びの言葉はあったが述べただけって感じだな。
ん? おれに会わせたい人がいるって?
「うん! 立花咲夜さんっていうの」
そう言って立花咲夜さんとやらを紹介する望月。
あれ? そういやそんなとこに人なんていたっけか?
ものすごく影の薄い人がこちらを無表情で見ている。
「立花咲夜」
自分の名前をなんの感情をこめることもなくポツリと呟くように言った。
立花と名乗った少女は、これまた髪が耳にかかるかかからないかくらいの短い髪型だった。そしてなにより美少女だ。望月は黙ってりゃ可愛いタイプなのだが、立花は喋ったら可愛いタイプだろう。
その無表情過ぎる顔はまるで囚人の証明写真のようになんの感情も入っていない。
なんとなく神秘的なオーラを出していた。
「立花さんはね、なんと私と同じ魔法少女なのっ! 」
ジャジャーンなんて幼稚な効果音をつけながら、世紀の大発表をする発明家のような声で望月は立花を紹介した。
うーむ。
なんとなく望月が魔法少女だと言われるより、立花が魔法少女だと言われるほうが真実味がある。
「ごめんなさい」
突然ポツリと呟くように謝り始めた立花。思わずこっちが謝りそうになる。
急に謝られて俺があたふたしているうちに立花はさらに続けた。
「予測襲撃時刻に大幅なズレが生じてしまったのはこちらのミス。我々の情報に誤りがあった」
「なんでその予測襲撃時刻とやらがズレちまったんだ? 」
「我々の入手した情報に誤りがあった。偽の情報を魔人に掴まされた。不手際」
淡々と原因を述べる立花の横で、望月が申し訳なさそうな笑みを浮かべた。
そういや俺はこいつに同じ質問をぶつけたんだっけな。そん時の答えはたしか「わからない」だったっけ?
「エヘヘ~、ゴメンね。私に聞かれた時はまだ原因が分かってなかったんだよぉ」
「そう。原因が判明したのはつい先日のこと。彼女を責めるのは間違い」
立花が望月にフォローを入れる。というより情報を付け足していると言うべきだろうか。
無感情で言われても分からん。
「緊急時の索敵行動は出来なくはなかったが距離があったので手遅れになる可能性が高かった。なのであなたの自宅に現れた魔人には対処出来なかった。だから急遽当時最も距離が近い望月さんを派遣した。幸い魔人にはなんとか対処出来たが、やはりこちらの不手際としか言いようがない」
いやだから無表情でそんなこと言われても。
望月もバツが悪そうに頭をかいてエヘヘへと笑う。
そんなこともお構いなしに立花はさらに続ける。
「魔人出現予測地点や予測襲撃時刻に関しての報告があったわけではないが、この周辺の地域に強い魔力を感知した。なのでこの世界にやって来た。おそらくもうすぐ魔人が襲撃してくる」
「な、なんだってー!? 」
わざとらしくリアクションしてみるのも、やはり俺には実感がほとんどわいてないからだ。中華鍋との一戦も俺は夢だと言われたら信じてしまうかもしれない。
物音も立てずに立ち上がる立花。相変わらず無表情だ。
望月の顔をふと見てみると、望月の顔は中華鍋の時と同じく冷静で緊張感のある顔つきに変わっていた。
「そろそろ、来る」
望月の顔付きがさらに緊張感を増してきた。立花は無表情なので分からない。
足元になんとなく嫌な感じがしたので下を見てみると、小さな黒煙がモクモクと上がっていた。
小火か?
床にいる蜘蛛が黒煙に近づいていく。
「しまった! 魔人が足元に! 」
呟くように叫ぶ立花。としか言いようが無い。悪いがこれ以上今の言葉を適切に伝える表現が俺には思い浮かばない。
ワケがわからんって思った奴は俺の代わりに今のセリフを聞いてきてくれ。
ついでに俺の役割と交換してくれよ。中華鍋しか出てきてないがもう疲れてきた。お願いしますかわってください。
「え? 嘘ぉっ? 」
蜘蛛を取り巻くように黒煙が蜘蛛に取り付いてきた。蜘蛛が黒く発光していく。そしてどんどんでかくなっている。
今度はなんだ?
「魔人出現を確認。『空間魔法・十式』」
どおぉぉ!
でっかい波みたいな音を立てて図書館が樹海に変わっていた。
ズンっ!
デカい音が響いてきた。そこには黒く光ったデカい蜘蛛がいた。
あ~あ。
どうやらまた命の危機が迫ってきているらしい。
これといって特筆すべきような騒がしい出来事は起きなかった。中華鍋みたいな魔人が再び襲ってくるようなことも、魔法少女が現れて目の前でバトルし始めることもなかった。言わば平凡な日常である。
いや、一つだけあったな。中華鍋が戦うようなことほどの大きな出来事ではなかったのだが。
入学式の次の日、望月が俺の通う学校に転校してきたのだ。そのつもりなら最初から入学しとけよ。
「しょうがないじゃん! 私だってこうなるんだったらちゃんと入学してたよ~」
頬を膨らませて反論するその姿は、駄々をこねて暴れ回る子どものようだった。
「じゃ、なんで転校なんかしたんだ? 今の状況は最初の予定とは違ってきているってことか? 」
「うん。本来、私はマスターのご近所さんになってい親しくなりつついざという時にお守りするっていう予定だったんだけどね。予測襲撃時刻に大幅なズレが出てきてしまったから、おそらくいつ襲ってくるかわからない状況になってしまったの。だからこうしてマスターのできるだけ近くにいたほうがいいっていうワケよ」
「なんでその予測襲撃時刻とやらに大幅なズレが出来ちまったんだ? 」
「原因は分からないの。なんでズレちゃったのかなぁ……。こんなこと滅多に、いや、絶対になかったはずなのに」
というのが転校してきた理由らしい。
望月が転校してきた日の帰りにこんな感じで聞き出した。
嘆くように呟く望月を見て、会話が途切れることを恐れた俺は新たな質問をぶつけてみた。どうでもいいようなことだったのだが。
「ところで望月、その予測襲撃時刻とやらをアテにするといつ俺は中華鍋みたいな魔人に襲われる予定だったんだ? 」
「えーっと、あの日から1週間後の午後3時頃のはずよ」
おいおいおい。中華鍋の日から1週間後っていったら土曜日じゃねえか。俺は土曜日の3時のおやつも堪能できない予定だったのか? 予測襲撃時刻が外れてくれてありがたく思う。そんなことで休日のリラックスタイムが潰されてたまるか。
この話を最後に会話が途切れてしまい、俺たちは無言で家まで帰らなければならないことになってしまっていた。
というくらいしか特筆するようなことも起きない平凡な日々を満喫しまくってた俺は高校生活初めての休日を向かえた。
どう過ごそうかとあれこれ考えているうちに、望月が元気いっぱいの声で近所迷惑なことをやらかした。
「図書館行こうよ! マスターっ! 」
こいつに読書の趣味があるとは意外だったな。
他にやることなんて格闘ゲームで望月と対戦くらいしかないのでその提案にのることにした。
そうだな。
休日の散歩も兼ねて市内の図書館の中でも一番大きいところに行くか。
と、提案すると、
「え? いやいいよぉ。私はここから一番近い図書館がいいっ」
と言って駄々をこねそうになったので、仕方がない。こいつの望むとおりにしてやるか。
俺の住むマンションから一番近い図書館まで行くことにした。
といっても、マンションからはどんなに頑張っても15分以上かかるような距離にあるので、けっして近くてコンビニ感覚で行けるというわけではない。
そんな道を30分かけてやっと図書館までたどりいた。2人とも図書館の中にある椅子に腰を下ろしてぐったりとしていた。
近くにあった本を適当に取って読んで暇でも潰そうかと考えた俺だが、図書館なんてくるのは小学校の読書感想文を書くために課題図書を探したとき以来だ。なんとなく懐かしさを感じた俺は、重くくたびれた身体を無理やり起こして図書館を1周することにした。
一方望月はと言うと、なにか読みたい本があるのか知らんがキョロキョロと辺りを見回してなにかを捜しているような様子をしていた。やがて図書館中をぐるぐると歩き出すようになった。
「ふぅ」
題名が面白そうだからという単純な理由で手に取ったラノベを読みふけっていると、これがまた面白い。
読書も悪くないかもななんて思い始めてグングンと本の世界に惹き込まれていく。
推理ものだったのだが、現実にもありそうでなさそうな難解な事件を気持ちいいほど次々と解いてい……
「あ! いたいた!マスターっ! 」
どうやら俺はゆっくり読書も出来ないらしい。
俺のリラックスタイムを奪い去った被告人望月は、反省する様子も全くなく満面の笑みでこちらを見てきている。無期懲役の刑に処したい。
っていうか図書館くらい静かに過ごしてくれ。
「エヘヘへ。ゴメンね。マスターに会わせたい人がいるから連れてきたの。図書館で待ち合わせってことになってたからここまで来たんだ。黙っててゴメン」
俺の心の呟きが顔に書いてあったのか、いきなり望月が詫びを入れてきた。しかしこいつは、俺のリラックスタイムを邪魔したことにはあまり反省していないようで、俺に隠し事をしたことを詫びているようだ。一応図書館のマナーについても詫びの言葉はあったが述べただけって感じだな。
ん? おれに会わせたい人がいるって?
「うん! 立花咲夜さんっていうの」
そう言って立花咲夜さんとやらを紹介する望月。
あれ? そういやそんなとこに人なんていたっけか?
ものすごく影の薄い人がこちらを無表情で見ている。
「立花咲夜」
自分の名前をなんの感情をこめることもなくポツリと呟くように言った。
立花と名乗った少女は、これまた髪が耳にかかるかかからないかくらいの短い髪型だった。そしてなにより美少女だ。望月は黙ってりゃ可愛いタイプなのだが、立花は喋ったら可愛いタイプだろう。
その無表情過ぎる顔はまるで囚人の証明写真のようになんの感情も入っていない。
なんとなく神秘的なオーラを出していた。
「立花さんはね、なんと私と同じ魔法少女なのっ! 」
ジャジャーンなんて幼稚な効果音をつけながら、世紀の大発表をする発明家のような声で望月は立花を紹介した。
うーむ。
なんとなく望月が魔法少女だと言われるより、立花が魔法少女だと言われるほうが真実味がある。
「ごめんなさい」
突然ポツリと呟くように謝り始めた立花。思わずこっちが謝りそうになる。
急に謝られて俺があたふたしているうちに立花はさらに続けた。
「予測襲撃時刻に大幅なズレが生じてしまったのはこちらのミス。我々の情報に誤りがあった」
「なんでその予測襲撃時刻とやらがズレちまったんだ? 」
「我々の入手した情報に誤りがあった。偽の情報を魔人に掴まされた。不手際」
淡々と原因を述べる立花の横で、望月が申し訳なさそうな笑みを浮かべた。
そういや俺はこいつに同じ質問をぶつけたんだっけな。そん時の答えはたしか「わからない」だったっけ?
「エヘヘ~、ゴメンね。私に聞かれた時はまだ原因が分かってなかったんだよぉ」
「そう。原因が判明したのはつい先日のこと。彼女を責めるのは間違い」
立花が望月にフォローを入れる。というより情報を付け足していると言うべきだろうか。
無感情で言われても分からん。
「緊急時の索敵行動は出来なくはなかったが距離があったので手遅れになる可能性が高かった。なのであなたの自宅に現れた魔人には対処出来なかった。だから急遽当時最も距離が近い望月さんを派遣した。幸い魔人にはなんとか対処出来たが、やはりこちらの不手際としか言いようがない」
いやだから無表情でそんなこと言われても。
望月もバツが悪そうに頭をかいてエヘヘへと笑う。
そんなこともお構いなしに立花はさらに続ける。
「魔人出現予測地点や予測襲撃時刻に関しての報告があったわけではないが、この周辺の地域に強い魔力を感知した。なのでこの世界にやって来た。おそらくもうすぐ魔人が襲撃してくる」
「な、なんだってー!? 」
わざとらしくリアクションしてみるのも、やはり俺には実感がほとんどわいてないからだ。中華鍋との一戦も俺は夢だと言われたら信じてしまうかもしれない。
物音も立てずに立ち上がる立花。相変わらず無表情だ。
望月の顔をふと見てみると、望月の顔は中華鍋の時と同じく冷静で緊張感のある顔つきに変わっていた。
「そろそろ、来る」
望月の顔付きがさらに緊張感を増してきた。立花は無表情なので分からない。
足元になんとなく嫌な感じがしたので下を見てみると、小さな黒煙がモクモクと上がっていた。
小火か?
床にいる蜘蛛が黒煙に近づいていく。
「しまった! 魔人が足元に! 」
呟くように叫ぶ立花。としか言いようが無い。悪いがこれ以上今の言葉を適切に伝える表現が俺には思い浮かばない。
ワケがわからんって思った奴は俺の代わりに今のセリフを聞いてきてくれ。
ついでに俺の役割と交換してくれよ。中華鍋しか出てきてないがもう疲れてきた。お願いしますかわってください。
「え? 嘘ぉっ? 」
蜘蛛を取り巻くように黒煙が蜘蛛に取り付いてきた。蜘蛛が黒く発光していく。そしてどんどんでかくなっている。
今度はなんだ?
「魔人出現を確認。『空間魔法・十式』」
どおぉぉ!
でっかい波みたいな音を立てて図書館が樹海に変わっていた。
ズンっ!
デカい音が響いてきた。そこには黒く光ったデカい蜘蛛がいた。
あ~あ。
どうやらまた命の危機が迫ってきているらしい。
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