魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

文字の大きさ
33 / 114
MMM(トリプルエム)の文化祭

立花咲夜の手作りスーパーお好み焼き

しおりを挟む
 遂にそんなに待ってもないが始まった文化祭。俺たちのクラスはお茶を濁すような提案により、コスプレ衣装レンタル屋となった。西田がほとんどの用意をしてくれたおかげで校内をうろつくことができるようになった俺は、望月と一緒に文化祭を楽しむことにした。
 おみくじで人生観が変わりそうになった俺は逃げるように望月と出店探しに勤しんだ。
「なぁ望月。立花たちを探しに行かないか? 出店探しのついでに」
「いいね! どうする? どこから行こうか? 」
「まずは立花のクラスの教室だな。何組だったっけ? 」
「う~んとたしか……8組だったかな? 」
 俺たちは1号館の2階にある8組の教室に行くことにした。
 そこにはさっきの焼きそば屋とはケタ違いな人がが行列を作っていた。1号館の奥に教室があるというのに、2階に来た瞬間から行列に並ぶハメになった。
 そんなに並ぶ価値があるほどのもんがこの先にあるということを期待しながら。
「なんちゅう行列だ……。立花のクラスって何の店やってたっけ? 」
「お好み焼き屋さんだって! これだけ並ぶってことは絶対美味しいよね~っ! 楽しみだな~」
 お好み焼き屋か……。それにしてはやたら客の回転がはやい気がする。これも立花のクラスに対する圧倒的な貢献の賜物だろうか。
 そういえばお好み焼きってどれくらいの値段なのだろうか?
 俺はポケットの中にある小銭入れを取りだそうとした。
 ん?なんかあるぞ?レシートの捨て忘れか?
 と思い、なんとなくポケットの中身を出してみると『1年8組お好み焼き屋特別優待半額券』と綺麗な印刷されたような字で書かれた小さな紙が入っていた。
「おい望月、こんなのあったぞ? 」
「わ、私もあったよ! 凄いね立花さん……」
 ほえ~。
 と感心したような声を出した望月は、じっと立花の手書き半額券を見つめていた。
 もしかしたら立花は俺と望月が一緒に来ることをわかっていたのではないだろうか。西田が教室に残ること、俺が望月以外と一緒に文化祭を楽しむことはないということ。
 もしこうなることを全部分かってたとしたら立花のIQってどれくらいなのだろうか。あのなんでもできる万能型無表情は500くらいIQがあってもおかしくはないぞ。改造人間じゃなくてもそれ以上あったって俺は驚きはしない。
 間もなくすると俺たちの番になった。
 教室に入ると、そこにはものすごい手際のよさでせっせとお好み焼きを作る立花の姿があった。目にも止まらないようなスピードでお好み焼きを一気に5個くらいポンポンとカウンターに出している。
 他の女子生徒は手伝おうと絶えず隙をうかがっているが無意味なかかし状態だった。料理は全て立花が作っているようだ。
 俺たちは近くにあった席に案内されると、メニューの一覧表を渡された。

 特製お好み焼き  500円
 大阪風お好み焼き 550円
 広島風お好み焼き 650円
 シーチキンサラダ 150円
 ポテトサラダ  150円
 ウインナー  50円
 たい焼き  100円

 模擬店や出店ではなく本物の店を出してしまえばいいと思うのだが。
 というかそんなに料理が出来るんだったら普段から手伝って欲しいな。望月と立花の胃袋を満たすだけで俺がどれだけ苦労していることか。
 俺と望月は、早めの昼飯ってことにしてガッツリ食べることにした。俺は広島風お好み焼きとシーチキンサラダを、望月は広島風お好み焼きとウインナーとたい焼きを女子生徒に注文して割引券を渡した。
「あなたたちなのね? 立花さんが割引券を渡した人っていうのは」
 好奇心全開の目で突然ウエイトレスの女子生徒が聞いてきた。
 この目は恋愛トークで盛り上がる時の女子の目と一緒だ。
「いつもは大人しくて静かな立花さんが、手を挙げてどうしてもって割引して上げたい人がいるって言うからさ。今までそんなこと言う人じゃなかったからこれはなんとしても叶えてあげないとな~って! 職員室まで行って立花さんと一緒に先生に直談判したんだから、しっかりとこの立花さんのお好み焼きを味わってよね! 」
 下手くそなウインクをして女子生徒は立花に注文を告げに言った。
 カウンターに置かれた割引券を見つけた立花はこっちをお好み焼きを作りながらじっくりと(と言っても2秒もなかったくらいの短さだったが)無表情のまま見つめてきた。
 暇つぶしをする暇がないくらいすぐに運ばれてきたお好み焼きは、ホクホクと出来立て特有の美味しそうな湯気をあげていた。
 普段は滅多に食べれない立花の手料理だ。じっくり味わうことにしよう。ついでに毎日料理を作る係は立花に任命することにしよう。
 運ばれてきたお好み焼きを早速頬張ってみると、これがまた超絶美味い。こんなに美味いものを数分で作れる立花は一体何者なんだろうか。
「ううん! おいひい~っ! あっちっ! 」
 ガツガツとお好み焼きを食べまくる望月の食いっぷりは、周りの女子生徒どころかその場にいる全員の視線をかき集めた。
 だが望月がこれだけガツガツ食べまくりたいという気持ちも全然分かる。それだけ、このお好み焼きは美味しいのだ。
 俺たちは満腹になるまで立花のお好み焼きを食べ続け、追加注文をしてさらに食べまくった結果今日使う予算がほとんどなくなってしまった。
 早瀬たちのクラスの出し物は金のかからないものであることを祈るしかない。
 俺たちはこれだけ人が並んでいるというのについ長居してしまったことに申し訳なさを感じながら席を立った。
「ありがとう」
 後ろの方からボソッと聞こえたその声は、気のせいと言われたら納得できるようなあまりにも小さすぎる声だった。
 (多分)その声の持ち主である立花の方を見てみると、相変わらず忙しそうにバタバタとお好み焼きを作っていた。
「あれ? 立花さん、なにか言った? 」
 カウンターでお好み焼きなどを運んでいる女子生徒が立花にハテナマークを顔に浮べながら聞いた。
「なにも」
 俺の視線に気づいたのか、立花はこちらをチラリと見るとさっきよりも少し大きな声で強調するように言った。
「なにも言ってない」
「ふーん……そう……。あ! 注文がええと……特製お好み焼き1とたい焼き2、あと広島風お好み焼きが2ね! 」
「了解した」
 女子生徒は興味が失せたようにまたせっせとウエイトレスの仕事に戻った。
 だが俺の地獄耳が騙されることはなかった。まさかあの立花がありがとうなんて言うなんてな。
 俺たちは超絶美味いお好み焼き屋を後にして、早瀬たちのクラスの教室に向かった。
「早瀬って何組だったっけ? 」
「もうっ! マスター、みんなのクラスくらい覚えておきなよ。真理ちゃんのクラスは3組だよ! 」
「3組っていったら5号館の3階か……俺たちの教室にも通りかかるし、冷やかしついでに行ってみるか? 」
「冷やかしたりなんかしませんよ~だっ! 」
 俺に向かって舌を出してきた望月は、そのまま5号館に向かって走っていった。
「どっちが私たちのクラスに早く着くか競走だよっ! いぇーいっ! 」
 人混みを上手く交わして行きながら、望月はあっという間に5号館に行くための通路を超えて階段を駆け上がっていった。俺は望月の後ろ姿を捉えるだけで精一杯だった。
 魔法少女ってのはみんなどんだけ足が速いんだ?
「とうちゃくーっ! マスターの負けだよ~? 勝った人に食べ物1つ奢ってね! 敗戦の弁は聞きません! 」
 なんだって?それじゃあもっと本気でやるんだった。
「ん? ようこそマスター、と望月さ~ん! いらっしゃいいらっしゃい! じゃんじゃんコスプレしまくって楽しんでいってくださいよぉ! 」
 西田のおそらく望月にのみ向けられたその明るいデレッデレの言葉は、教室中に響き渡った。
 望月は苦笑というか愛想笑いを浮かべて、テキトーに選んだ服をもって簡易更衣室にそそくさと向かっていった。
 ざまみろ西田。お前じゃどんだけ頑張ってアピールしまくっても望月は振り向かんだろうさ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...