魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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片思いフレンズ 序章

If only he liked me!

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 俺たちが向かったのは、ゴールデンウィークの時に西田が立花とデートした時に行ったショッピングモールである。
 俺たちが来た頃には、だいたいの店が開店していろんな客で賑わっていた。
「あ、マスターさん、南館の2階にあるお店に行っていい? あそこ、流行の服とか色々あって人気なんだってっ」
「あぁ、いいぜ。それにしても珍しいな」
「なにが? 」
「三好が服にキョーミ持つなんて。今まではそんなことぜんぜん気にしなかったのに、どういった心境の変化だ? 」
「え、えと……それはその……」
「なんとなく、って感じか? 」
「そ、そうそう! なんとなくなんとなく! なんとなくオシャレしたかったの」
 そう答えながらアハハと苦笑いしてきた三好を見て、なんでそんなに照れるのかと思ったが、まぁアイツだって女子高生だ。オシャレの1つや2つくらいしたくもなるもんなのだろう。
 俺たちは南館の服屋にやってきた。三好の言う通り、ハリウッド女優が身につけてたブランドだの最近流行りのブランドが大量にあった。
 服のことに関してはなんにもわからんので、三好が選んできた服をテキトーに褒めときゃいいだろう。
「マスターさん! これなんて似合うかな? 」
 三好が持ってきたのは、大人っぽい感じの白いセーターだった。
「別にいいと思うけど、そんなのでいいのか? 最近流行りのブランドがうんぬんかんぬんとかじゃなくていいのか? 」
「いいの! 流行りの服とかにはついていけないし、それに……」
 三好が言葉をとぎらせた。
「どうした? 」
「ううん、なんでもない」
 レジで精算しに行く時に、店内にいるヤツら全員がそうだったが、やはりオシャレな人たちが多い。
 俺や三好みたいなオシャレに全く気を使ってない感丸出しの来るところじゃないな。
「1490円になります」
 うわっ、思ったより高いな。
 服なんて最近は親からの仕送りに入ってあるので、そういった相場は一切知らない。まさかセーター1着で1500円もするとは。今のビンボー暮らしの俺にとってはでかい出費だ。
 だがまあ、三好の買い物に同行しちまった以上、こーゆーことは奢ってやらないとダメなのかな。
 俺はバッグから財布を素早く取り出して、三好があたふたしてるうちに金を払った。
「え? あ、いや、いいよマスターさん。私が払うのに」
「いやいや、俺が払いたかっただけだ。気にすんな」
 財布の中身は砂漠化が進んでいるが、こんな時ばっかりは金の心配なんてしたくなかった。
「いい彼氏さんですね」
 せっせとセーターを袋詰めしていた若い女の店員が三好に向かってクスクスと笑いながら話しかけてきた。
「え? か、カレシ? 」
 三好がオドオドして次に言う言葉を探していると、
「あれ? お2人はカップルじゃないんですか? 」
 この店員は、なにか勘違いしているらしい。
 三好はあっという間に顔を真っ赤にした。
「ち、ちが……違います! 彼とはえと……その……顔見知りですただの! 」
 三好は勢いのあまり店内中に響き渡りそうなくらいでかい声を出していた。
「ほわっ! すす……すいません……」
 今度は三好の声に店員がオドオドする番だった。それにしても……
「えっと……お友達でもないんですか? 」
 俺も同じとこが引っかかったのだが。
「えっ! おお、おお友達ですよ? そうだよねマスターさん」
「俺はそう思ってたんだが……フーン、顔見知りねぇ。俺はお前にとって顔見知りなだけって仲だったのか。ふーん、知らなかったなぁ」
 俺がたまに嫌な性格だと言われる原因が発動した。
「うぅっ……ごめんなさい……」
 そんなにマジで謝られたら申し訳なくなる。
 店員は俺たちの面白くなさすぎて客から空き缶を投げられる級コントモドキを見て、またクスクス笑った。
「でもお2人ともお似合いだと思いますよ? 付き合っちゃったらいいじゃないですか」
 店員が袋詰めされたセーターを渡しながら言ったセリフに、またしても三好の顔が真っ赤になった。
 それにしても今日は真っ赤になりすぎな気がするのだが、血圧的には大丈夫なのだろうか。さすがに心配になってくる。
「えっ! ……えっと……」
 店員はまたクスクスと笑っていた。
「ありがとうございましたー」
 商品を受け取った俺は、三好の様子を見る限りここにいると顔に血がたまり過ぎて死ぬんじゃないかと思ったので、とっとと別の店に行くことにした。
「大丈夫か? 顔めっちゃ赤いけど」
「えへへ……大丈夫大丈夫。それよりも次のお店に行くよ! 」
 次の三好のお目当てはスカートのようだ。
 俺たちは北館2階にあるいかにもオシャレそうな人しかあつまらない雰囲気の店に行った。
 店の雰囲気ってのは大事だなと思い知らされる店である。こんなにオシャレオシャレしてたら、俺なんて萎縮しちまって三好がいねえとこういった店に入れたもんじゃない。
 三好は多分無意識のうちにしてたことなんだろうけど、俺の手を取って引っ張りながら入店した。
 スカートのコーナーをしばらく探して見つけると、すごい勢いで腕を引っ張りながら行った。
「あったあった、スカート売り場! あれ? マスターさん……ひゃっ! ごめんなさい! 私気付かなくて……」
 スカートコーナーに来た途端俺の腕を引っ張っていることに気づいた三好が、俺に赤い顔をしながら何度もペコペコ頭を下げた。
 ここでの買い物は意外とソッコーで決まった。黒と白のリバーシブルになったスカートを見た三好は、ほとんど即決でそいつを買った。
 黒側を着たかったらしいが、そこにはハサミでもないとカンタンには取れないような値札が付いていたので、仕方なく白の方を表にして早速着るのだった。
「白に白って……なんだか変だねっ」
「そうか? 黒でも白でもどっちでもいいだろ。両方似合ってるんだし」
「なっ……! あ、ありがとう……」
 なんだかラブコメみたいになってきたな……。
「三好、次はどこに行くんだ? 」
「えっと次は……靴屋さんっ」
「じゃあそこ行くか」
 と言っても、ここのショッピングモールに靴屋さんなんてものはなかった。
 最初から分かっていたことだが、俺たちはもしかしたらあるんじゃないかと思い、散々探し回った挙句諦めることになった。
「どうしよう……」
「とりあえず北館1階に行ってみるか。靴屋さんなんてのはないが、多分靴売り場くらいならあったはずだ」
 三好にそういった途端、磁石を近づけられた砂鉄のような勢いで三好は北館1階に向かった。
 どこぞの掃除機メーカーもビックリの吸引力である。昔あのメーカーの掃除機ってやたらうるさかったけど最近はそんなことないよなとか思い始めている頃には、三好は窓の向こうにいた。
「決まったか? 」
「うん、これかな」
 三好が選んだのは、ヒールが低いが黒いブーツだった。
 普段スニーカーしか履いてないのに、わざわざ履き慣れてないブーツなんか選んで大丈夫なのだろうか。
「ブーツなんか選んで大丈夫か? 履いたことないだろ」
「あるよ一応……。大人っぽくするためには必要なの! 出来ればスカートも黒くしたかったけど、しょうがないし」
 ふーむ……大人っぽくするのが最近のファッションの流行なのか? 
 ビミョーな短さのシャー芯みたいに、変に硬いが役には立たない俺の頭ではそーゆーことは分からない。
 次に三好に引っ張られて来た店は、南館3階にある有名なファッションブランドの店だった。
「これいいかも……っ」
 三好が目を輝かせてみていたのは、ハデではなく落ち着いた感じのピンク色のコートだった。
 ピンク色と言っても薄いピンク色である。最近のランドセルみたいにハデな色ではない。まさに大人っぽい印象を与える色だ。
 スカート以降三好が金を出しているのだが、金は大丈夫なのだろうか。あのコートは高校生にとってけっこうなお値段なのだ。今三好が着てるクソダサコートを下取りに割引いてくれないだろうか。
 そんなことを考えているうちに、三好はコートのお会計を済ませていた。
「財布の中は大丈夫か三好。あのコート高かっただろ」
「大丈夫大丈夫。まだまだ使う予定あるから、お財布の中身は心配しないで」
 今日買った服一式を着ている三好は、そう言いながら浮かれた顔をしていた。
 オシャレが出来て嬉しいのだろう。
「さて、次はどうする? 」
「美容院に行きたい」
 すぐ近くにある美容院に行った三好は、店外で俺を待たせて店の中に入った。なんでそんなことをしたのか理由を聞くと、
「……秘密……っ」
 だそうだ。別に隠さなくてもいいだろう。
 …………暇だな。
 小一時間ほど経つと三好が出てきた。
 だが見違えるほど印象が違っていた。さっきまでボサボサの三つ編みだった三好は、肩甲骨にかかるくらいの黒髪ストレートにしたおかげで別人のようにしか思えなかった。
「マスターさん、似合うかな……」
「すげえよ三好。めちゃくちゃ似合ってるぞ。いつもその髪型にすりゃいいのに」
「アハハ……ありがとう」
 最後に三好は眼鏡を外した。俺は近くにあったベンチに座った。
「三好は座らないのか? 」
「……うん」
 三好はベンチの横にあった木にもたれかかった。
「あの……マスターさん……」
 な、なんだ? いきなり三好の顔が真っ赤になったと思ったら重大なことを今から言いますみたいな雰囲気じゃないか。
「スうぅー……ハァーっ! 」
 なにかを決心したかのような顔付きになっているが、なにがあったんだ? いきなり変にシリアスな空気になっちまって。
「マスターさん、私と……私と、付き合ってください! 」
 三好の口からそんな言葉が放たれた後、時が止まったかのような静寂が訪れた。
 2人とも頭が真っ白になっているらしい。
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