異世界転生する話が大好きなお前らのためにコミュ症の私が現実世界の楽しさを教えてやるよwww

円田時雨

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アミのかんびょー

病は気から

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「寝言は寝て言えって言うけど、ホントにこんな寝言言う人初めて見たわ」
 そう言ったサクラちゃんは、心底呆れ返ったような顔をしている。
 もしかしてさっきのって何かのネタだったの? サクラちゃんがさっきのセリフ知ってそうな感じだったし。
「ねぇなっちゃん、もしかしてさ……」
 ちょっと躊躇いの色を見せながら、サクラちゃんがボクの耳元まで顔を近づけてきた。
「友希に何かのネタを言ったらさ、きっと寝言で返してくれるんじゃない?」
 要するにイタズラする気満々ってことか……。
 くひひっと子どもっぽく笑うところは、こうして見ると人気作家とは思えないほど小学生らしい。
「じゃあ、まずは私からやってみるからね」
 ヌッと顔を突き出すように、顔を近づけるサクラちゃん。楽しくて仕方なさそうだ。
「ファイナルベント……」
 耳元でボソッと呟いたサクラちゃんは、反応を待ってる間、生き生きとした表情をしている。
「これで1人減りましたね……」
 どんな返しだよそれは。
「クスクス……うふふふふ……」
 サクラちゃんは、我慢出来ない様子で笑いを堪えている。しかし、そんな我慢の糸もプツンと切れてしまったようだ。とうとうサクラちゃんは大笑いしてしまった。近所迷惑なくらい……。
「みんなどうしたの? 楽しそう!」
 そう言ったやってきたのは、眩い笑顔を放ったアミだ。表情筋がフル活用されてる。
「アミ、友希ってば耳元で何か囁いたら寝言で返事してくれるの! 面白いから友希もやってみなよ!」
 サクラちゃんの表情筋もブラック企業並に仕事しているようだ。アミに負けず劣らず、輝かしい笑顔になっている。
 アミは、サクラちゃんと同じように顔をコッソリと近づけて、耳元で囁いた。
「波動拳……」
 なんでそんなの知ってるんだよ……。
 思わず喉から出かかった言葉を喉奥にしまい込む。ボクだってあんまり知らないのに。
 と、思ったけど、同居人が友希だもんなぁ。そりゃあ毒されるよきっと。友希とゲームやらアニメやら見てたら、変な影響くらい受けるに決まってるか。
 アミは、友希からどんな返しがくるのかと、目をキラキラさせていた。サクラちゃんと一緒だ……。
「ソニックブーム!」
 イヤイヤイヤ、どうしてその返しになるんだよ。
 口調までカンペキに真似て、ドヤ顔になってる友希だった。寝てるのに。
 そう言えばなんでアイツってコンテニューした時も『ソニックブーム』なんて言うんだろうか。なんで1人だけ技名を言っちゃってるんだろ。
 アミもサクラちゃんも、腰をくすぐられたのかと思うくらい騒がしく爆笑していた。なんじゃこりゃ……。
「ねぇねぇ、なっちゃんもやってみよーよ! スっっっごく面白いよ!」
 大爆笑してる2人からそんなことを言われたけど……。
 誰か友希の心配をしてよ。なんでボクしかマトモに看病してないんだよ。
「あのさぁ、お2人さん……」
「なに?」
「なんなの?」
 口を開いた瞬間、期待の眼差しを向けられる。2人とも目の中に星が入ったるんじゃないかと思うくらい、輝きを目に宿していた。
「私たちは、友希の看病をするためにここにいるんじゃないの? 寝言で笑うよりもまず、友希を心配するべきよ」
 思い切って、ちょっとキツめの口調で言った。これくらいビシッと言ってやらないとダメな気がしたから。
 でも……
「大丈夫だよ~。だって、友希ってただの風邪なんでしょ? じゃあなんとかなるって! スグ元気になるでしょ!」
 と、サクラちゃん。
「友希はきっと元気になるよ! それに、こんなので死ぬほど友希は弱くないって言ったのは、なっちゃんじゃん! 大丈夫よ絶対!」
 と、アミ。
 たしかにそう言ったけど……
「それとこれとじゃ話が違ーう!」
 あ……、ついやっちゃった。おっきな声出しちゃった。友希が起きたらどーしよ! ……静かなイビキがスースー聞こえる。大丈夫、爆睡中のようだ。
「なっちゃん……」
 ちょっと反省の色を見せるサクラちゃん。
 一方アミは、
「なっちゃん、『病は気から』だよ! 私たちがいっぱい笑って、いっぱい楽しんだら、きっと友希もいっぱい元気になるよ!」
 いやだから……私が言いたいのはそういうことじゃなくてね、
「……じゃあさ、せめてリビングで友希のゲームやるとかさ、とにかく友希は安静にしなきゃダメなの。じゃないと風邪も治らないよ。分かった?」
  サクラちゃんは申し訳なさそうな目を友希に向け、その後ボクをじっと見つめた。
「それじゃ、友希の寝言で遊んでたら、友希の病気って治らないの?」
 心配そうな顔つきで、ボクにそう聞いたサクラちゃん。いくらしっかりしていても、こういう所はやっぱり小学生だ。
「心配しなくても、静かにしていたら友希の病気もスグ治るから」
 サクラちゃんは大人しくリビングへ向かった。一方アミは、友希に微笑を浮かべ、
「なっちゃん、寝ている友希に楽しくなってもらう方法ってない?」
 『病は気から』って言葉を未だに引きずっているらしい。ボクは静かに首を横に振り、2人でリビングに行った。

 その後、ボクたち3人がゲームで騒ぎすぎて友希を起こしたのは、当然誰にも言わないでね。
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