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第一の世界
龍神族と伝承
しおりを挟むラクナザスのお爺さんに会いにいく事になった。
とりあえず今は早すぎるので朝食と昼食の間くらいの時間に面会依頼をしていると言う事だが孫と祖父の関係で面会依頼とは面倒なと思わないでもないが、この学園都市のトップとも言える人なのだから仕方ないのかもしれない。
とりあえずそれまでレポートをする
「ねえラクナザス。どうして破滅の乙女は現れるのかしら。何が目的なのかしら」
「そうだね……石版には様々な事がかかれているけれど、どれも核心的な事が書かれているものはない様に感じるね。ただ破滅の乙女…と言うよりは海の世界に伝わる古い伝承なら存在するよ」
そう言ってラクナザスは目を閉じてまるで歌うかの様に話してくれた
大昔
今よりも世界と世界の境界線が曖昧で不安定だった頃
平和を愛する海の世界の住人の元へ1人の少女が現れた
少女の髪は漆黒の髪に紅い瞳
それが『破滅の乙女』
少女は少女を饗そうとする海の世界の住人に見向きもせず、全ての世界の均衡を揺るがそうとした
するとそれを見た全ての世界の創造神たる3人の龍神族は1人の乙女に特別な力を与える。それが『聖なる巫女』
巫女は純白の髪にシルバーの瞳で美しい少女
ついに始まる戦いの時
苛烈な攻防の末龍神族の援護の元純白の巫女は漆黒の乙女を打ち倒す
戦いが終わった事を確認した龍神族はいつかまた復活する破滅の乙女に対抗する為『洗礼の泉』を作成
そしてその泉の石より作られる槍を使いこなす力を海の世界の住人に与える
そして力を与えられた海の世界の住人達は今日も明日も自らの槍の力を磨いていく
ラクナザスが話し終わったあとにまず思ったのは「え、龍神族は援護だけ?」だ。
他にも「戦いの後巫女はどこへ行ったのか」「洗礼の泉とは何か」等気になる部分が多々あったが、その伝承は神聖な物とされておりこれを深く追求したりましてや批判する事はこの世界では許されないらしいと言うことを苦笑いをしたラクナザスが教えてくれた。
それと洗礼の泉と言うのは5歳になる年に赴く場所で、そこで自分の槍の元となる『槍の元石』を手に入れるらしい
その方法はまず泉の近くにある浄めの場で禊を行う。
そして心身を整えた後に泉へ1人ずつ向かう。
その後龍神族への忠誠の祝詞を唱え泉に手を入れる
すると1つだけ、龍神様より授けられた石が1つだけ手に吸い付く様に寄ってくる。それを持ち帰り毎日自分の気を流し槍の腕を鍛え、石を錬えて行く
石は持ち主自身が鍛えられれば鍛えられる程
強固に、そして持ち主の手に馴染んで行く
ある程度の気を流せば自分と同化させる事が出来、自分の中にしまっておく事ができる
ーーラクナザスが何も無いところからいきなり槍を出したりするのは体内に収納されてたからなのか……
ちなみに体内にどういう風に収納されているのか聞いたところ「しらない」だそうだ。
あまり解剖学とかが進んでいないのかな?
それとこれは余談だが、伝承の影響もありこの世界では槍の強い男がモテる。性格も強気なのが人気らしく、所謂亭主関白タイプがいいらしい。そして女の方はそれに三歩後ろを歩くタイプが人気なのかと思えばそうではない。
伝承内でも分かる様に聖なる巫女は女だ。
なので女も強く、亭主関白な男に負けない様な心身を持った者が好まれるらしい
ーーこの世界の夫婦喧嘩とか凄まじそうね
しかしこれであのディードレーヤが何故人気なのかわかった。
奴はあれでも生粋の貴族で家柄も良いし、顔もこの世界基準で言うと物凄くイケメンらしい。なのでまあ多少そういった所で取り巻きがいるのは何となくわかっていたけれど、性格が残念なので周りは下心のある人達ばかりなのかと思っていたがどうやら違うらしい
ーーあの性格までこの世界でよしとされているだなんてもう驚きしかないわね
何だか余談で一気に疲れた気がするがとりあえず伝承は何となく理解した
「聖なる巫女と破滅の乙女の容姿ついて一般的にハッキリとは公表されている訳ではないんだけどね。何せ伝承は昔の事だから何となくのイメージはあるんだろう。
この世界で色彩が薄ければ薄い程美しいとされているのも色彩の濃いもの、殊更黒に関して過剰な程忌避感を抱く風潮もきっとこのイメージからきている」
そう言った後ラクナザスはため息をつきながら「色が全てではないと言うのに」と言い何かを思い出すかの様に目を細めた
そういえばラクナザスと共に私の召集を拒否してくれたナルザルクは確か黒よりのグレーでかなり色彩の濃い髪色だった
彼もきっと苦労しているのだろう
「ま、伝承についてはこんな感じだね。何か参考にはなったかい?」
ラクナザスが微笑む
「ええ、ありがとう。
そうだ。もしラクナザスがいいなら少し槍を見せて貰ってもいいかしら」
思えばじっくりとは見た事がない槍だ。この機会に少し見てみたい
「ああ勿論いいよ」
そう言ってラクナザスは槍を出現させる。
すらりと伸びたシンプルな形の槍
ーー菊池槍……って言うんだっけこういうの。綺麗ね……
聞けば槍は皆それぞれ少しずつ形や長さが違うらしく、中には二本使ったりする者もいるらしい
そう言う者も洗礼の泉で受け取った時は1つの石らしい。錬え、そして使い込んで行く内に自分に合った姿になって行くとラクナザスは言っていた
そういえば前にこの世界へきた直後、サルファに襲われた所をディードレーヤに助けられたんだっけ。彼はどんな槍を使っていたのかしら
「ディードレーヤは槍先が十字にクロスしている形だよ。それからサルファに襲われている所に出会したのは私だよ」
思った事が口からでていたらしくラクナザスか答えてくれていた
ーーん?
「待って待って。あの時サルファから助けてくれたのはラクナザスだったの?!」
驚きの新事実だ。あの時あの雰囲気の中頑張ってお礼を言っていたのに!
ディードレーヤも否定しろよと叫んでやりたい
「あの辺りはたまにしか行かなくてね。たまたま行ったらレイチェルに会ったんだよ」
そう言うラクナザスは少し照れている様だがラクナザスもラクナザスだ。もっと早く言って欲しかった。
「ごめんなさい。私てっきりディードレーヤが助けてくれたものだとばかりでラクナザスにお礼も言ってなかったわ。本当にありがとう」
「今もあの時も、レイチェルが無事ならそれでいいんだよ」
そう言うとラクナザスは私の手の甲にキスをした。そういえば初対面の時もラクナザスは手の甲にキスをしてきたな
大分慣れたとは言え急にやられると未だにびっくりする
どうしてこんなにもスキンシップが激しめなのか
「レイチェル?」
遠い目をしているとクスクスとラクナザスが笑っている
ーー楽しそうね
とりあえず命の恩人がディードレーヤじゃなくてラクナザスだったというのがわかって少しほっとした
「さて、そろそろ出発しようか」
そう言ってラクナザスは手を差し出してきた。2年前の部屋を案内してもらった時を思い出す
「自分で歩けるわよ」
そう言って笑うと「それは残念」と言いながら手を引っ込めていた
ーー本当、いい人なのよね
この世界で不自由なく過ごせているのは、間違いなくラクナザスのおかげだ。
そしてそのラクナザスの後ろ盾であるお爺さん。ちゃんと挨拶できるか少し心配になってきた
「私もお伴します」
リビングを出ようとするとパールが一緒についてきた
「え?そうなの?」
パールがいてくれるなら心強いがいいのだろうか。ラクナザスの方を見ると
「そう言うかなとは思ったよ」
と苦笑していた
そしてラクナザス、私、例のショートカット姿のパールの3人で理事長であるラクナザスのお爺さんに会いに行く為私達は部屋を出た
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