異世界めぐりの白と黒

小望月 白

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第一の世界

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「サルティナに少し話があるから借りるわね」


そう言われ、着いて来る様促される。


「私が聞いちゃいけない話?」


レイチェルはかなり拗ねている様に見えた。今回の騒動が始まってから、初めて自我を持つパールとレイチェルのやり取りを見たがパールに対してレイチェルは普段よりもかなり子供っぽく、というよりもパールに対してはかなり甘えている様に見える。


「いいの?」

私がパールへ小さく問いかけると「いいのよ」と言って愛おしそうにレイチェルを見ていた。


ーー本当に大切にしているのね


パールはレイチェルの真珠だ。真珠というのは主人の命令には絶対服従だが、パールの態度は『服従』という風には見えない。それが自我を持っているからかどうなのかはわからないが、とにかくパールはレイチェルを溺愛している。
大切に、大切に守っている。騒動後からしか見ていないがそれがよくわかる。

そしてレイチェルもきっと、それがわかっている。だからこんなにも無防備にパールへと甘えた態度を出すのだろう。


「サルティナにお願いがあるのよ」


レイチェルから私へと視線を移したパールが話し出す。


「さっきの薬瓶、見てたでしょう」

「ええ」

学園長が投げて、それをパールが薙ぎ払う事で被ってしまったあれの事だろう。


「あれね。私にも効くみたいよ」


ーーえ?


パールが平然としているので混乱する。


ーー待って、パールにも効くって事はパールも溶解されてしまう………?


言葉が出てこない私を他所にパールは続ける


「本当は言うつもりなかったんだけど、私今『核』がないのよ」


「核…ってあの真珠を作り出す時に使うあの核………?」


「ええ」


よくわからない事になってきた。真珠たちは普通、核を中心に粘土等様々な物で作られる。しかしその核が無くなれば真珠たちは形を保てず、ただの粘土となって崩れ去るだけだ。


「核が無いのに動き続けられるなんてありえるの……?」


そう言うとパールは笑い


「そこはまあ、私だから」


と言いながら肩を竦めた。


「核が抜けたのはおそらく私の記憶がないあの時よ」


少し考えたがすぐに思い出せた。


「あの黒髪の男性パールの時?」


私の言葉にパールが頷く


「記憶が戻った時、核が無くなっている事に気が付いた。そして核が無くなった事で私の戦闘力が驚く程に落ちたのよ。
核が入っていればきっと今回の溶解剤も効かなかったはず」


そんな事、本当にありえるのだろうか。パールとは眠っている時間はあったが基本的にずっと一緒に行動していたのだ。しかし核が取り出される様な事はなかった。
目立った外傷もないのに急に核だけが無くなっているなんて事が果たして本当に起こるのだろうか


ーーでもこれは考えても無駄な事ね


ふう、と息をついて気持ちを落ち着かせる


「それで、お願いっていうのは?」


そう聞くとパールは制服のポケットから古そうな鍵を差し出した。


「理事長室で拝借した、この先で必要になる鍵よ。正確な距離はわからないけどこの先に鉄格子があるはずなの。そこを開けるのに使って」


ーーつまり、そこまでパールは保たないって事?


そう聞きそうになって、聞けなかった。声が出なかった。


「どれくらい保つかはわからないけど、余り長くないのはわかるわ」


私の心を読んだかの様にパールが話す。ちなみに先程の液体は徐々に身体の中へと浸透して行くタイプの様で、もうパールへと触れても問題はないそうだ。


「核が無くなって抜け殻状態の私にはあの溶解剤は効果的だった。それだけよ」


「それだけって……」


ならレイチェルはどうなるのか。きっとパールが居ないとレイチェルは壊れてしまう。私にパールの代わりなんて絶対に無理だ。
そう伝えるとパールは少し困った顔になった。

「わかってる。自惚れかもしれないけれど、レイチェルは私をとても頼りにしてくれてるわ」

「………もう本当にどうしようもないの?」


「私がレイチェルの事を他人に託さなければいけない程にはね」


そう言ったパールの顔は笑っていたが、私は気付いてしまった。笑顔のパールの拳は強く握りしめられ、悔しそうに震えているのを。


ーーきっと、パールが1番悔しいのよね


「わかった。鍵も預かるし、レイチェルの事は私が命に変えても守る。でも、この事レイチェルには………」


「言わないわ。余計な事を考えさせたくないもの。あの子には、出来る限り笑っていて欲しいの」


こんな状況じゃ、なかなか難しいけど。そう言って笑うパールを私は見ていられなかった。


「じゃあ、まあそう言う事だから。よろしくね」

そう言ってレイチェルの方を振り返ったパールは盛大に吹き出した。不思議に思って私もレイチェルの方を見ると、彼女は見事に拗ねていた。
その頬は大きく膨らみ、口を尖らせまるで小さな子供の様だった。


「ちゃんと今度教えてよね」


レイチェルの言葉にパールは困った様な顔をして「ええ」と答えていた。


ーーきっと、レイチェルが話し合いの内容を知る時は、パールとの別れの時ね


2人の事を思うと胸が張り裂けそうになる。


「あ、でも無理にとは言わないから!別に本気で怒ってる訳じゃないの」

「わかってる」


そんな2人の会話を聞いているのが辛くなって、私は口を噤んだまま歩き出す。
すぐにパールが前と後ろを交代する様言ってきた。


ーーああ、きっと何か異変があったのね




辛く、悲しい別れに向かって私達3人は歩き出す
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