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第一の世界
大好きな笑顔
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※残酷な描写があります。苦手な方はご遠慮ください。
コトン、カサカサ
サルティナとパールが内緒話を終え、歩き出してから時折小さな音が後ろから聞こえる。
しかしパールは「小動物が住み着いている様ね。追っ手ではないから気にしなくていいわよ」と言うので気にしない事にした。
何より信用できるパールの言葉だ。パールが後ろを守ってくれているのだからきっと大丈夫なのだろう。
ゴトン!
階段を降り続けていると、先程とは比べ物にならないくらいの大きな音が聞こえ、思わず振り返る。すると少し離れた所でパールが壁にもたれながら蹲っていた。
「パール!」
慌ててパールへと駆け寄り、その姿を見てすぐに言葉が出なかった。
「パー………ル?」
彼女は皮膚の至る所が剥がれ落ち、顔は半分程ズルズルに溶けていた。そして数歩後ろには恐らくパールの物と思われる左足が落ちている。両手は既に失われて居て、今四肢の中で残っているのは右足だけだ。
「ごめんねレイチェル。私これ以上もう進めないみたいなの」
パールの言葉がすり抜ける
ーーえ?どう言う事?やっぱりあの時の溶解剤は効いていたって事?
きっと、先程からしていた物音はパールの身体が少しずつ剥がれ、壊れて落ちて行く音だったのだろう。そしてギリギリまで私と共に進んでくれていた。なのに私は気が付かなかった。
「パール、戻って。ほら、真珠達は袋に入れるくらいの大きさに戻れるでしょう?ち、小さくなって。わたし………運ぶから」
気付かぬ内に流れていた涙と嗚咽のせいで上手く話せない。必死にポケットから昔、ラクナザスがパールを運ぶのに使っていた袋を取り出し、差し出す。
するとパールは静かに首を振る
「ごめんねレイチェル。無理なの」
「なん……で………?」
「私は真珠の『理』を曲げ過ぎた存在。もう他の真珠達の様に小さくはなれないのよ」
諦めた様に笑うパール。しかし私は絶対に諦められない。
「わかった。パール、私が運ぶから」
パールへと近づき彼女を抱えようと手を伸ばす
「?!」
その時、パールが目を見開き後ろを激しく振り向くが特に何も無い。しかし小さく舌打ちをしたパールは強い口調で私とサルティナへと話す
「追っ手の気配がするわ。早く逃げて。サルティナ、レイチェルを頼むわ。お願い、絶対に守って」
それを聞いて頷くサルティナ。
「嫌よパール!絶対に嫌!私あなたを運べるわ!サルティナもどうしてそんなに驚かないの?ねえ、私絶対に諦めないから!」
「レイチェル」
私の言葉に被せるかの様に静かにパールが私の名を呼ぶ
「ねえ、レイチェル。私あなたが大好きよ。何よりも、誰よりも大切なの。
私はいずれにしても壊れて無くなる運命。それなら、私はただ壊れるよりも大好きなあなたを守って消えたいわ。
私の想いを無駄にしない為にも絶対に生きて」
そうしてパールは私のおでこに自分のおでこを軽くぶつけて言う
「楽しかった。家族として扱ってくれてありがとう。大好きよ、私の愛しいレイチェル」
「パール……」
「ああでももし最期にお願いを1つ聞いてくれるなら、貴方の笑顔が見たいわレイチェル」
とめどなく流れる涙をぐっと目をつぶって閉じ込める。そしてぎこちなく笑顔を作る
「ありがとう。さあ、行って」
ーー本当に、もう無理なの?まだこうやって話しているのに?
私が動けないでいると後ろからサルティナの声がかかる
「レイチェル」
振り返るとサルティナも辛そうな顔をしていた。
「………わかった。さよなら、パール。私も大好き」
パールは私の言葉に笑顔で静かに頷いた。それを確認して私は前を向き、サルティナと共に走り出した。
ーーパール………!!
パールと別れるまでは頑張って涙を止めていた。しかしもう無理だ。どんどんと溢れてくる涙と嗚咽を止めようともせずに走る。
「っ!」
隣を見ると、サルティナも声を殺して泣いていた。
ーーレイチェルが私を大好きだと言ってくれた。もうそれだけで私は十分だ。
レイチェルとサルティナの走り去る後ろ姿を眺めながらそう思った。
ーー嘘。
本当はずっと側に居たかった。誰より、自分よりも大切なレイチェル。彼女の側に居られるのならもう他に何もいらなかった。
あっという間に見えなくなってしまった背中を引き止めたくて仕方がなかった。もっとずっと一緒に居たかった。
レイチェルの色んな表情を見て居たかった
ーーでも、もう無理ね。
共に生きる。その願いが叶わぬのなら、せめて少しでもあの子の行く道の手助けを。
ヒタヒタヒタヒタ
忌々しい足音が私の隣で止まる。そしてヒタヒタと気味の悪い足音とは別の足音も。
「おい貴様。レイチェルをどこへやった」
ーーああ、最期に見るのがこいつの顔だなんて反吐が出そうだけれど、お前を道連れにできるのならそれも悪くはないわね………
ドオオォオオオオオン
サルティナと走っていると、後ろから聞いた事も無いような爆音が聞こえてきた。
「なに?!」
2人で同時に振り返ったが、すぐに凄まじい爆風が私たちを襲う
「うっ!!!」
ーー熱い!
爆風は一瞬で私達の身体を吹き飛ばし、背中に激しい衝撃を受けた
「がはっ!」
肺の中の空気が全て押し出されたかの様な感覚。痛みで上手く息が吸えず、意識が朦朧としてくる。
ーーだめ!
必死に意識を繋ぎとめ起き上がり、辺りを見渡す。隣には大きな鉄格子があった。どうやら爆風でここまで飛ばされ、この鉄格子に叩きつけられたらしい。
ーーサルティナは?!
「うっ!げほっ!」
ゼイゼイと苦しそうな声が聞こえてそちらを見ると、サルティナが苦しそうに壁に手をついて立ち上がる所だった。
「サルティナ……無事だったのね!」
「ええ、レイチェルも無事でよかったわ」
「鉄格子を開けるから少し待って」
そう言ってサルティナはポケットから古そうな鍵を取り出し鉄格子の鍵を開け始めた。聞けば先程の話し合いの時、死期を悟ったパールから託されたのだと言う。
恐らく先程の爆音と爆風はパールの自爆だろう。
ーーパール………
先程の爆風の熱と、パールへの思いでむせ返る。鉄格子を通り、再び鍵を掛けたサルティナは一瞬こちらを見て辛そうな顔をしたがすぐに「行きましょう」と行って走り出す。
身体が重く、思う通りに足が動いてくれないがナルザルク、ラクナザス、パールの命を無駄にはしたくない。その一心で私は必死に走った。
コトン、カサカサ
サルティナとパールが内緒話を終え、歩き出してから時折小さな音が後ろから聞こえる。
しかしパールは「小動物が住み着いている様ね。追っ手ではないから気にしなくていいわよ」と言うので気にしない事にした。
何より信用できるパールの言葉だ。パールが後ろを守ってくれているのだからきっと大丈夫なのだろう。
ゴトン!
階段を降り続けていると、先程とは比べ物にならないくらいの大きな音が聞こえ、思わず振り返る。すると少し離れた所でパールが壁にもたれながら蹲っていた。
「パール!」
慌ててパールへと駆け寄り、その姿を見てすぐに言葉が出なかった。
「パー………ル?」
彼女は皮膚の至る所が剥がれ落ち、顔は半分程ズルズルに溶けていた。そして数歩後ろには恐らくパールの物と思われる左足が落ちている。両手は既に失われて居て、今四肢の中で残っているのは右足だけだ。
「ごめんねレイチェル。私これ以上もう進めないみたいなの」
パールの言葉がすり抜ける
ーーえ?どう言う事?やっぱりあの時の溶解剤は効いていたって事?
きっと、先程からしていた物音はパールの身体が少しずつ剥がれ、壊れて落ちて行く音だったのだろう。そしてギリギリまで私と共に進んでくれていた。なのに私は気が付かなかった。
「パール、戻って。ほら、真珠達は袋に入れるくらいの大きさに戻れるでしょう?ち、小さくなって。わたし………運ぶから」
気付かぬ内に流れていた涙と嗚咽のせいで上手く話せない。必死にポケットから昔、ラクナザスがパールを運ぶのに使っていた袋を取り出し、差し出す。
するとパールは静かに首を振る
「ごめんねレイチェル。無理なの」
「なん……で………?」
「私は真珠の『理』を曲げ過ぎた存在。もう他の真珠達の様に小さくはなれないのよ」
諦めた様に笑うパール。しかし私は絶対に諦められない。
「わかった。パール、私が運ぶから」
パールへと近づき彼女を抱えようと手を伸ばす
「?!」
その時、パールが目を見開き後ろを激しく振り向くが特に何も無い。しかし小さく舌打ちをしたパールは強い口調で私とサルティナへと話す
「追っ手の気配がするわ。早く逃げて。サルティナ、レイチェルを頼むわ。お願い、絶対に守って」
それを聞いて頷くサルティナ。
「嫌よパール!絶対に嫌!私あなたを運べるわ!サルティナもどうしてそんなに驚かないの?ねえ、私絶対に諦めないから!」
「レイチェル」
私の言葉に被せるかの様に静かにパールが私の名を呼ぶ
「ねえ、レイチェル。私あなたが大好きよ。何よりも、誰よりも大切なの。
私はいずれにしても壊れて無くなる運命。それなら、私はただ壊れるよりも大好きなあなたを守って消えたいわ。
私の想いを無駄にしない為にも絶対に生きて」
そうしてパールは私のおでこに自分のおでこを軽くぶつけて言う
「楽しかった。家族として扱ってくれてありがとう。大好きよ、私の愛しいレイチェル」
「パール……」
「ああでももし最期にお願いを1つ聞いてくれるなら、貴方の笑顔が見たいわレイチェル」
とめどなく流れる涙をぐっと目をつぶって閉じ込める。そしてぎこちなく笑顔を作る
「ありがとう。さあ、行って」
ーー本当に、もう無理なの?まだこうやって話しているのに?
私が動けないでいると後ろからサルティナの声がかかる
「レイチェル」
振り返るとサルティナも辛そうな顔をしていた。
「………わかった。さよなら、パール。私も大好き」
パールは私の言葉に笑顔で静かに頷いた。それを確認して私は前を向き、サルティナと共に走り出した。
ーーパール………!!
パールと別れるまでは頑張って涙を止めていた。しかしもう無理だ。どんどんと溢れてくる涙と嗚咽を止めようともせずに走る。
「っ!」
隣を見ると、サルティナも声を殺して泣いていた。
ーーレイチェルが私を大好きだと言ってくれた。もうそれだけで私は十分だ。
レイチェルとサルティナの走り去る後ろ姿を眺めながらそう思った。
ーー嘘。
本当はずっと側に居たかった。誰より、自分よりも大切なレイチェル。彼女の側に居られるのならもう他に何もいらなかった。
あっという間に見えなくなってしまった背中を引き止めたくて仕方がなかった。もっとずっと一緒に居たかった。
レイチェルの色んな表情を見て居たかった
ーーでも、もう無理ね。
共に生きる。その願いが叶わぬのなら、せめて少しでもあの子の行く道の手助けを。
ヒタヒタヒタヒタ
忌々しい足音が私の隣で止まる。そしてヒタヒタと気味の悪い足音とは別の足音も。
「おい貴様。レイチェルをどこへやった」
ーーああ、最期に見るのがこいつの顔だなんて反吐が出そうだけれど、お前を道連れにできるのならそれも悪くはないわね………
ドオオォオオオオオン
サルティナと走っていると、後ろから聞いた事も無いような爆音が聞こえてきた。
「なに?!」
2人で同時に振り返ったが、すぐに凄まじい爆風が私たちを襲う
「うっ!!!」
ーー熱い!
爆風は一瞬で私達の身体を吹き飛ばし、背中に激しい衝撃を受けた
「がはっ!」
肺の中の空気が全て押し出されたかの様な感覚。痛みで上手く息が吸えず、意識が朦朧としてくる。
ーーだめ!
必死に意識を繋ぎとめ起き上がり、辺りを見渡す。隣には大きな鉄格子があった。どうやら爆風でここまで飛ばされ、この鉄格子に叩きつけられたらしい。
ーーサルティナは?!
「うっ!げほっ!」
ゼイゼイと苦しそうな声が聞こえてそちらを見ると、サルティナが苦しそうに壁に手をついて立ち上がる所だった。
「サルティナ……無事だったのね!」
「ええ、レイチェルも無事でよかったわ」
「鉄格子を開けるから少し待って」
そう言ってサルティナはポケットから古そうな鍵を取り出し鉄格子の鍵を開け始めた。聞けば先程の話し合いの時、死期を悟ったパールから託されたのだと言う。
恐らく先程の爆音と爆風はパールの自爆だろう。
ーーパール………
先程の爆風の熱と、パールへの思いでむせ返る。鉄格子を通り、再び鍵を掛けたサルティナは一瞬こちらを見て辛そうな顔をしたがすぐに「行きましょう」と行って走り出す。
身体が重く、思う通りに足が動いてくれないがナルザルク、ラクナザス、パールの命を無駄にはしたくない。その一心で私は必死に走った。
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