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第二の世界
鏡
しおりを挟む「レイチェル様は?」
「いえ、まだお目覚めになられません」
「そう……これだけあからさまにレイチェル様へと危害を及ぼしているのに何も証拠がないだなんて悔しいわ」
「ええ、腸がに煮えくりかえるとはこの事です」
「とにかく、早く目を覚まされると良いのだけど」
誰かが会話する声が聞こえる。
「そうですね。他の皆は落ち着きましたか?」
「ええ、カーヌに頼んであるからきっと大丈夫よ」
「そうですか。それならば安心です。所でルル、貴女はそろそろ休まれた方が良いですよ。酷い顔です」
「ふふ、それはお互い様でしょうアリネス。貴女こそずっとレイチェル様に張り付いているじゃない。レイチェル様の侍女は実質1人しか居ないんだから、貴女が倒れたらレイチェル様がお目覚めになった時に困るわ。護衛騎士が交代でみておくから貴女は少し休みなさいな」
「いえしかし………」
ああ、ルルとアリネスが話しているのか。私が起きないせいでかなり心配をかけているらしい。
早く目を開けて安心させたいのに身体が思うように動かず、目すらも開けられない。口を開こうとしたが、まあ普通に無理だった。
ーーあーごめんみんな。もう少しかかりそう
もう一度何とか力を入れようとしたがやはり無理だった。
ーーあれ?また夢の中?
どうやらまた眠ってしまったらしい。辺りが真っ暗だ。しかしもう昔の私は居なかった。代わりに全身鏡がぽつんと置いてある。
「なんで鏡?」
覗き込むと、レイチェルとして見慣れた姿が映る
ーーまあ、鏡だしね
そりゃそうだわな、と思いながら眺めていると鏡に映った私の姿にモヤがかかりだす
「?!」
慌てて鏡から距離を取る
ーーやめてよーやめてよー。私ホラー本当だめなんだってー
しかし見ないのもそれはそれで怖い。なのでゆっくり近づいていくとそこには見慣れた私の姿ではなく、白いもやもやとした綿の様な物が映っていた。
「でっかいケサランパサラン………」
するとケサランパサラン擬きはムクムクと大きくなり、やがてぼやっとした人型になる。
「男……いや、女の人?」
恐る恐る近づいてみると人型の動きが止まる
「レイチェル………」
そしてどこからともなく声が聞こえてきた。一瞬ビクリとしたが、なんだか聞き覚えのある女性の声だったので返事をしてみる事にした。
「あなたは誰ですか?」
「レイチェル、レイチェル、レイチェル」
ーーん?こっちの声聞こえてない?
すると人型は顔を覆って泣く様な仕草を見せる
「生きて欲しいの。責任なんて感じないで、貴方には生きて欲しいの」
悲しそうな女性の声はそう言うと、静かに人型と共に消えて行った。
ーーどこかで聞いた気がする声だった
チャリ
ーーん?
ふと小さな音がしたかと思うと、着ているドレスの隠しポケットにほんの少し違和感がある
「何か入れてたっけ?」
ゴソゴソと漁ってみると綺麗なホワイトオパールの様な石が付いたペンダントと、ペンダントトップはなく華奢な作りのペンダントチェーンが出てきた。
「なんか綺麗なのが出てきた。私こんなの持ってたっけ………」
しかし妙に安心する。
一先ず確認はできたのでもう一度ポケットへ戻そうと思うとすると、突然ペンダントが熱を持つ
「あっつ!」
慌てて離そうとしても手から離れない
「え?え?」
もう片方の手で摘んで引張ってみたが意味がなかった
「熱い熱い熱い!」
焦って手を振ったがまだ取れない
「ちょ、本当にあつ………」
「………様!レイチェル様!どうなされたのですかレイチェル様!」
ハッとして目を開けると泣きそうな顔のアリネスと心配そうな表情をしたノメルが居た。
「あれ………」
「かなり魘されておりました。お身体の調子はどうですか?」
アリネスが支えてくれたが割とちゃんと身体は動いた。
ーーもう動くな
自分の身体を見つめながらぼうっとしているとノメルがお水を渡してくれる
「ありがとう」
ーーん?
水を受け取ろうとして自分が何かを握りしめている事に気がつく
「なんでここにあるの……」
それは夢の中で見た2つのペンダントだった。片方チェーンだけだけど。
「どうかされましたか?」
「えっと、私の勘違いかもしれないんだけど」
ノメルの問いかけになんと言おうか迷ったが結局夢の中で見た事を話した。すると2人は真剣な表情で頷いてくれた。
そしてその後着替えや食事を軽く済ませてから護衛騎士の皆を集めてアリネスと共に私がここではない日本という場所から来た事、記憶が戻ったは戻ったがなんだかまだ忘れている事がありそうな事をざっと話した。
皆は驚いた顔をしていたが急にそんな事を言われても戸惑うだろう。私ですら驚いている。
「では、レイチェル様はいつかそのニホンという場所に帰られるのですか?」
沈黙を破ったのはノメルだった。そしてその目には涙が浮かんでいた。
「そうね、まず帰れるかはわからないけど………帰って両親にも会いたいと思ってる」
するとノメルは一筋の涙を流し、泣き笑いをしながら「寂しいですが、わたくしもお手伝いを致します」と言ってくれた。
そのまま今日はもう休むことになったがまだ外は明るく、眠る気にはなれなかったのでベッドの上でこれからの事を考えていた。
先程ノメルに言った様に両親には会いたい。しかしここでも私にとって家族の様な大切な人が沢山できた。なので『帰る!』
と即答できない自分がいる
ーーそもそもどうやって帰ればいいのかしら
悶々としている内にいつのまにか私は眠っていた。
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