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地獄の狂炎
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密林を歩きながら、俺たちは『耐火樹の樹液』を集めることにいそしんだ。
「にゃッ!! ムシー!!」
テナが興奮した様子で虫を捕まえている。やはり猫人というのは猫なのだろうか。
「テナ、その調子だ。虫も貴重な資金源!」
「ミャウッ!」
俺も苦手とまではいかないが、テナほど熱意を持って虫と接することはできないな。
「俺から離れすぎるなよ」
「むしろボクから勝手に離れないで。怖いから」
急に人に戻るテナである。
採集に戻ったテナの姿を少し眺めていると、ミリアがぽつりと言う。
「資金源、か……」
そんなことを呟いてどうしたのだろう。もしかして金欠なのか?
これはビジネスチャンス――なんて、別に金貸しはしていないのだが、英雄の力にはなりたいと思う。
「お金にお困りで?」
「ううん、ぜんぜん」
A級冒険者は資金に困らないらしい。いいなあ。
「ただ、あんたが闇のダンジョンであたしたちにサービスした聖水……150?」
「使ったのは142です」
「それっていくらしたのかなって」
「さあ、採集しましょうか」
「あ、逃げた!」
「終わった話ですよ」
「あんたねぇ……」
「実は、あの聖水は無料だったんです」
「うそ」
「本当です」
ミリアが銀色の瞳を輝かせた。
「……半分嘘でしょ」
「その目凄いですね。無料でもらって、俺はその価値に相応しいだけの金額を寄付したんです。寄付は自分勝手にするものなので、ミリアさんが気にする必要はないんですよ」
そう伝えると、ミリアは呆れるように微笑んだ。
「ありがとね、実際助かったわ。あんたとテナのおかげで」
「正直言うと、俺たちがいなくてもミリアさんとネリスさんのお二人でどうにかしたんじゃないかって思ってましたけどね」
俺がそう言うと、ミリアは「当たり前じゃない」と笑ってみせる。
「どうにかしてみせたわよ。けど――」
「けど?」
「――半年か一年か……もっと長い期間か、ネリスは戦線には復帰できなかったと思う」
ありがとね、そう言ってミリアは樹液を集め始めた。その流れでテナに近づいていき、テナにも「ありがと」と伝えていた。
「にゅん?」振り返るテナ。
「げぇっ!」引くミリア。
テナが両手に金色の甲虫を掴んでいたのだ。もはや虫取り少年である――
「――ってその虫すごーい!」
「にゅ?」
テナの手にあるのは黄金大王甲虫のオスとメスだった。
「なによ急に……びっくりするわね」
「知らないんですか!? ゴールデンキングオオカブト!?」
「……知らないわよ」
「なんということだ……この素晴らしさを共有できる人がいないなんて……」
崩れ落ちそうになった時――
ガサッ ガサッ
――密林の木々を分け入って進んでくる誰かの、どっしりとした声が聞こえてくる。
「ゴールデンキングオオカブト、それは『熱水の密林』に生息するカブトの中で最も美しく、最も大きなカブトである――」
突如現れた老人が、ゴールデンキングオオカブトの概要を説明してくれた。素晴らしい。
老人は、背は低くも筋骨隆々、豊かな髭を蓄えていた。鎧兜を身に着け、何より目を引くのはその背に負う巨大なハンマーである。
「――ぬがッ!!」
その巨大さのあまり、木と木の間にハンマーが引っかかった。
「わしの名はウォロク。魔導士もとい鎚魔導士のウォロクだ。よろしくな」
彼は、ぎちぎちと引っかかったままお辞儀をする。
ここで挨拶せぬは、無作法というもの。
「これはこれはご丁寧に。俺はアイテム屋のルウィンです。こっちの猫人は従業員のテナで、こちらの魔女様は――」
「いやツッコミなさいよ!」
「――さんです」
「ミリアよ!」
俺とウォロクは「おー」と拍手した。
「……拍手してんじゃないわよ」
格別なるツッコミだ。
ウォロクが引っかかったまま口を開く。
「はじめましてだな、ミリア――もとい『イヤツッコミナサイヨ』」
「会ったことあるでしょうが。『もとい』じゃないわよ」
「…………のほほ!」
「ぼけてんじゃないわよ!?」
これが大いなる鎚魔導士――ウォロクとの出会いだった。
「にゃッ!! ムシー!!」
テナが興奮した様子で虫を捕まえている。やはり猫人というのは猫なのだろうか。
「テナ、その調子だ。虫も貴重な資金源!」
「ミャウッ!」
俺も苦手とまではいかないが、テナほど熱意を持って虫と接することはできないな。
「俺から離れすぎるなよ」
「むしろボクから勝手に離れないで。怖いから」
急に人に戻るテナである。
採集に戻ったテナの姿を少し眺めていると、ミリアがぽつりと言う。
「資金源、か……」
そんなことを呟いてどうしたのだろう。もしかして金欠なのか?
これはビジネスチャンス――なんて、別に金貸しはしていないのだが、英雄の力にはなりたいと思う。
「お金にお困りで?」
「ううん、ぜんぜん」
A級冒険者は資金に困らないらしい。いいなあ。
「ただ、あんたが闇のダンジョンであたしたちにサービスした聖水……150?」
「使ったのは142です」
「それっていくらしたのかなって」
「さあ、採集しましょうか」
「あ、逃げた!」
「終わった話ですよ」
「あんたねぇ……」
「実は、あの聖水は無料だったんです」
「うそ」
「本当です」
ミリアが銀色の瞳を輝かせた。
「……半分嘘でしょ」
「その目凄いですね。無料でもらって、俺はその価値に相応しいだけの金額を寄付したんです。寄付は自分勝手にするものなので、ミリアさんが気にする必要はないんですよ」
そう伝えると、ミリアは呆れるように微笑んだ。
「ありがとね、実際助かったわ。あんたとテナのおかげで」
「正直言うと、俺たちがいなくてもミリアさんとネリスさんのお二人でどうにかしたんじゃないかって思ってましたけどね」
俺がそう言うと、ミリアは「当たり前じゃない」と笑ってみせる。
「どうにかしてみせたわよ。けど――」
「けど?」
「――半年か一年か……もっと長い期間か、ネリスは戦線には復帰できなかったと思う」
ありがとね、そう言ってミリアは樹液を集め始めた。その流れでテナに近づいていき、テナにも「ありがと」と伝えていた。
「にゅん?」振り返るテナ。
「げぇっ!」引くミリア。
テナが両手に金色の甲虫を掴んでいたのだ。もはや虫取り少年である――
「――ってその虫すごーい!」
「にゅ?」
テナの手にあるのは黄金大王甲虫のオスとメスだった。
「なによ急に……びっくりするわね」
「知らないんですか!? ゴールデンキングオオカブト!?」
「……知らないわよ」
「なんということだ……この素晴らしさを共有できる人がいないなんて……」
崩れ落ちそうになった時――
ガサッ ガサッ
――密林の木々を分け入って進んでくる誰かの、どっしりとした声が聞こえてくる。
「ゴールデンキングオオカブト、それは『熱水の密林』に生息するカブトの中で最も美しく、最も大きなカブトである――」
突如現れた老人が、ゴールデンキングオオカブトの概要を説明してくれた。素晴らしい。
老人は、背は低くも筋骨隆々、豊かな髭を蓄えていた。鎧兜を身に着け、何より目を引くのはその背に負う巨大なハンマーである。
「――ぬがッ!!」
その巨大さのあまり、木と木の間にハンマーが引っかかった。
「わしの名はウォロク。魔導士もとい鎚魔導士のウォロクだ。よろしくな」
彼は、ぎちぎちと引っかかったままお辞儀をする。
ここで挨拶せぬは、無作法というもの。
「これはこれはご丁寧に。俺はアイテム屋のルウィンです。こっちの猫人は従業員のテナで、こちらの魔女様は――」
「いやツッコミなさいよ!」
「――さんです」
「ミリアよ!」
俺とウォロクは「おー」と拍手した。
「……拍手してんじゃないわよ」
格別なるツッコミだ。
ウォロクが引っかかったまま口を開く。
「はじめましてだな、ミリア――もとい『イヤツッコミナサイヨ』」
「会ったことあるでしょうが。『もとい』じゃないわよ」
「…………のほほ!」
「ぼけてんじゃないわよ!?」
これが大いなる鎚魔導士――ウォロクとの出会いだった。
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