20 / 100
地獄の狂炎
21
しおりを挟む
密林を歩きながら、俺たちは『耐火樹の樹液』を集めることにいそしんだ。
「にゃッ!! ムシー!!」
テナが興奮した様子で虫を捕まえている。やはり猫人というのは猫なのだろうか。
「テナ、その調子だ。虫も貴重な資金源!」
「ミャウッ!」
俺も苦手とまではいかないが、テナほど熱意を持って虫と接することはできないな。
「俺から離れすぎるなよ」
「むしろボクから勝手に離れないで。怖いから」
急に人に戻るテナである。
採集に戻ったテナの姿を少し眺めていると、ミリアがぽつりと言う。
「資金源、か……」
そんなことを呟いてどうしたのだろう。もしかして金欠なのか?
これはビジネスチャンス――なんて、別に金貸しはしていないのだが、英雄の力にはなりたいと思う。
「お金にお困りで?」
「ううん、ぜんぜん」
A級冒険者は資金に困らないらしい。いいなあ。
「ただ、あんたが闇のダンジョンであたしたちにサービスした聖水……150?」
「使ったのは142です」
「それっていくらしたのかなって」
「さあ、採集しましょうか」
「あ、逃げた!」
「終わった話ですよ」
「あんたねぇ……」
「実は、あの聖水は無料だったんです」
「うそ」
「本当です」
ミリアが銀色の瞳を輝かせた。
「……半分嘘でしょ」
「その目凄いですね。無料でもらって、俺はその価値に相応しいだけの金額を寄付したんです。寄付は自分勝手にするものなので、ミリアさんが気にする必要はないんですよ」
そう伝えると、ミリアは呆れるように微笑んだ。
「ありがとね、実際助かったわ。あんたとテナのおかげで」
「正直言うと、俺たちがいなくてもミリアさんとネリスさんのお二人でどうにかしたんじゃないかって思ってましたけどね」
俺がそう言うと、ミリアは「当たり前じゃない」と笑ってみせる。
「どうにかしてみせたわよ。けど――」
「けど?」
「――半年か一年か……もっと長い期間か、ネリスは戦線には復帰できなかったと思う」
ありがとね、そう言ってミリアは樹液を集め始めた。その流れでテナに近づいていき、テナにも「ありがと」と伝えていた。
「にゅん?」振り返るテナ。
「げぇっ!」引くミリア。
テナが両手に金色の甲虫を掴んでいたのだ。もはや虫取り少年である――
「――ってその虫すごーい!」
「にゅ?」
テナの手にあるのは黄金大王甲虫のオスとメスだった。
「なによ急に……びっくりするわね」
「知らないんですか!? ゴールデンキングオオカブト!?」
「……知らないわよ」
「なんということだ……この素晴らしさを共有できる人がいないなんて……」
崩れ落ちそうになった時――
ガサッ ガサッ
――密林の木々を分け入って進んでくる誰かの、どっしりとした声が聞こえてくる。
「ゴールデンキングオオカブト、それは『熱水の密林』に生息するカブトの中で最も美しく、最も大きなカブトである――」
突如現れた老人が、ゴールデンキングオオカブトの概要を説明してくれた。素晴らしい。
老人は、背は低くも筋骨隆々、豊かな髭を蓄えていた。鎧兜を身に着け、何より目を引くのはその背に負う巨大なハンマーである。
「――ぬがッ!!」
その巨大さのあまり、木と木の間にハンマーが引っかかった。
「わしの名はウォロク。魔導士もとい鎚魔導士のウォロクだ。よろしくな」
彼は、ぎちぎちと引っかかったままお辞儀をする。
ここで挨拶せぬは、無作法というもの。
「これはこれはご丁寧に。俺はアイテム屋のルウィンです。こっちの猫人は従業員のテナで、こちらの魔女様は――」
「いやツッコミなさいよ!」
「――さんです」
「ミリアよ!」
俺とウォロクは「おー」と拍手した。
「……拍手してんじゃないわよ」
格別なるツッコミだ。
ウォロクが引っかかったまま口を開く。
「はじめましてだな、ミリア――もとい『イヤツッコミナサイヨ』」
「会ったことあるでしょうが。『もとい』じゃないわよ」
「…………のほほ!」
「ぼけてんじゃないわよ!?」
これが大いなる鎚魔導士――ウォロクとの出会いだった。
「にゃッ!! ムシー!!」
テナが興奮した様子で虫を捕まえている。やはり猫人というのは猫なのだろうか。
「テナ、その調子だ。虫も貴重な資金源!」
「ミャウッ!」
俺も苦手とまではいかないが、テナほど熱意を持って虫と接することはできないな。
「俺から離れすぎるなよ」
「むしろボクから勝手に離れないで。怖いから」
急に人に戻るテナである。
採集に戻ったテナの姿を少し眺めていると、ミリアがぽつりと言う。
「資金源、か……」
そんなことを呟いてどうしたのだろう。もしかして金欠なのか?
これはビジネスチャンス――なんて、別に金貸しはしていないのだが、英雄の力にはなりたいと思う。
「お金にお困りで?」
「ううん、ぜんぜん」
A級冒険者は資金に困らないらしい。いいなあ。
「ただ、あんたが闇のダンジョンであたしたちにサービスした聖水……150?」
「使ったのは142です」
「それっていくらしたのかなって」
「さあ、採集しましょうか」
「あ、逃げた!」
「終わった話ですよ」
「あんたねぇ……」
「実は、あの聖水は無料だったんです」
「うそ」
「本当です」
ミリアが銀色の瞳を輝かせた。
「……半分嘘でしょ」
「その目凄いですね。無料でもらって、俺はその価値に相応しいだけの金額を寄付したんです。寄付は自分勝手にするものなので、ミリアさんが気にする必要はないんですよ」
そう伝えると、ミリアは呆れるように微笑んだ。
「ありがとね、実際助かったわ。あんたとテナのおかげで」
「正直言うと、俺たちがいなくてもミリアさんとネリスさんのお二人でどうにかしたんじゃないかって思ってましたけどね」
俺がそう言うと、ミリアは「当たり前じゃない」と笑ってみせる。
「どうにかしてみせたわよ。けど――」
「けど?」
「――半年か一年か……もっと長い期間か、ネリスは戦線には復帰できなかったと思う」
ありがとね、そう言ってミリアは樹液を集め始めた。その流れでテナに近づいていき、テナにも「ありがと」と伝えていた。
「にゅん?」振り返るテナ。
「げぇっ!」引くミリア。
テナが両手に金色の甲虫を掴んでいたのだ。もはや虫取り少年である――
「――ってその虫すごーい!」
「にゅ?」
テナの手にあるのは黄金大王甲虫のオスとメスだった。
「なによ急に……びっくりするわね」
「知らないんですか!? ゴールデンキングオオカブト!?」
「……知らないわよ」
「なんということだ……この素晴らしさを共有できる人がいないなんて……」
崩れ落ちそうになった時――
ガサッ ガサッ
――密林の木々を分け入って進んでくる誰かの、どっしりとした声が聞こえてくる。
「ゴールデンキングオオカブト、それは『熱水の密林』に生息するカブトの中で最も美しく、最も大きなカブトである――」
突如現れた老人が、ゴールデンキングオオカブトの概要を説明してくれた。素晴らしい。
老人は、背は低くも筋骨隆々、豊かな髭を蓄えていた。鎧兜を身に着け、何より目を引くのはその背に負う巨大なハンマーである。
「――ぬがッ!!」
その巨大さのあまり、木と木の間にハンマーが引っかかった。
「わしの名はウォロク。魔導士もとい鎚魔導士のウォロクだ。よろしくな」
彼は、ぎちぎちと引っかかったままお辞儀をする。
ここで挨拶せぬは、無作法というもの。
「これはこれはご丁寧に。俺はアイテム屋のルウィンです。こっちの猫人は従業員のテナで、こちらの魔女様は――」
「いやツッコミなさいよ!」
「――さんです」
「ミリアよ!」
俺とウォロクは「おー」と拍手した。
「……拍手してんじゃないわよ」
格別なるツッコミだ。
ウォロクが引っかかったまま口を開く。
「はじめましてだな、ミリア――もとい『イヤツッコミナサイヨ』」
「会ったことあるでしょうが。『もとい』じゃないわよ」
「…………のほほ!」
「ぼけてんじゃないわよ!?」
これが大いなる鎚魔導士――ウォロクとの出会いだった。
20
あなたにおすすめの小説
ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!
さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。
冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。
底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。
そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。
部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。
ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。
『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!
HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。
跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。
「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」
最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!
【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】
・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー!
十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。
そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。
その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。
さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。
柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。
しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。
人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。
そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。
追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?
あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】全60話 完結しました。読者の皆様ありがとうございます!
世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。
「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。
・神話級ドラゴン
⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺)
・深淵の邪神
⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決)
・次元の裂け目
⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い)
「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」
本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……?
「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー!
【免責事項】
この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~
名無し
ファンタジー
主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。
月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。
ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。
ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。
ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。
なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。
もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。
もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。
モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。
なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。
顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。
辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。
他のサイトにも掲載
なろう日間1位
カクヨムブクマ7000
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる