最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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氷室の水禍

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§ 水のダンジョン §

ルウィンとテナが氷のダンジョンにて第4領域へと進み始めた一方、水のダンジョンには歴戦の冒険者たちが集まっていた。そんな中、一際目立つ双剣使いの少女が湖に向かって駆け出す。

「出ておいでー!」

彼女の名はキャルライン=アバレスト。
躊躇なく水に飛び込んだかと思えば、彼女に喰らいつかんとする巨影が水面から現れた。

水龍――その鋭利な牙が少女の身体を引き裂かんとしている。

ほとんど飲み込まれかけたかに見えたが、キャルは大人一人分ほどもある牙を蹴り、宙を舞った。

「キャハハハハ!!」

遊ぶように笑っているが、龍の方は遊ぶ気はないらしい。キャルの着地に合わせて吐息ブレスの体勢に入る。

大盾を持った女騎士――ネリス=ヒルドルが叫ぶ。

「いかん、キャルが死ぬ!」

ネリスはキャルの着地点を見定め、全力で駆け出した。

「うおおおおぉぉぉぉッ!!」

線のように圧縮した水のブレスが吐かれた瞬間、間一髪……ネリスの大盾が間に合う。一本の槍のような水流は、ネリスの盾を貫けない。

「あっはっはっは! ばかものぉッ!」
「ありがと♪」

ミリアは詠唱しながらその様子を見て、肝が冷えていた。

(……ほんと死に急ぎ過ぎ!)

今すぐキャルに文句を言いたい、そう思いつつ詠唱を終えたミリアは魔法を発動する。

遍在の神火アグニス・ファイア――」

ミリアの足元から円状に火が燃え広がり、その銀の瞳が水龍を捉えた。

「――穿うがてッ!」

炎は形を成し、次々に槍の雨となって龍に向かって飛んでゆく。炎は突き刺さるようにして水龍の巨体を燃やした。

〈ギュゥゥルルルルッ!!〉

龍の悲鳴が轟く中、ミリアの後ろから巨大なハンマーを背負ったドワーフ――ウォロクが飛び出した。

「借りるぞぉい!」

ミリアが場所を譲ると、残っている火の円に向け、ウォロクはハンマーを大きく振りかぶる。

うな戦鎚せんついィッ!!!
 おののけ大地ィッ!!!
 戦鎚の鼓動ハンマー・ビーツ――!!!」

弱火の中心を叩きつけると、火は勢いを取り戻す!

「――火炎地獄インフェルノ!!!」

ウォロクが人差し指と小指を立てると、燃え盛る火が津波となって龍の巨体になだれ込んだ。

〈ギュァゥルルルッ!!〉

龍はさらに大きな悲鳴を上げ、たまらず水に潜ろうとした。瞬間――ネリス、ミリア、ウォロクの三人が、口を同じ形に開く。

「「「あっ」」」

水に逃れようとした龍の背に、剣を突き刺してまたがるキャルラインの姿があった。

「キャハハ! 今日はるからッ!」

彼女は龍と共に水の中へと消えた。

「……」

一瞬の静寂が訪れ、その静けさが一瞬ではないことに気がつくと、一同は再び声を揃えた。

「「「やばい!!?」」」

これまで撃退で済ませていたが、キャルの我慢は限界だったらしい。今日という日は、らずにはいられなかったのだ。
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