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マンドレイクの春
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「……あの、どうしてアイテム屋のルウィンさんが危険なダンジョン――それも注意報が出ているような場所に行くのです? マンドレイクが高く売れるから……なのですか?」
アルメリゼが俺に問いかける。彼女の頭のてっぺんのくせ毛が?に見えて仕方がない。
「マンドレイクが高く売れるから……というのもそうです。けど、一番の理由は――」
アルメリゼを見ていて、ふと思った。冒険者にしては珍しい、見返りを求めない姿勢。誠実であろうとする態度……アルメリゼにはそれがある。と、闇のダンジョンを共にしたA級冒険者の二人が頭をよぎった。
よぎったということは、きっとそうなのだろう。
「――それは、アルメリゼさんと同じかもしれません」
俺の言葉を聞いて、アルメリゼは翼をはためかせた。
「わたしと、同じ……? 見返りを求める、ルウィンさんと?」
「はい」
「そんなはず、ありません……! だってわたしはただ、人を助けたいから冒険者になったのです!」
アルメリゼは言い切った。
普通の人が言えば歯の浮くようなセリフを。
「あと、個人的な趣味も……ちょっとだけ」
ん、個人的……?
ともかく俺は、彼女が普通でないと確信した。
翼人がわざわざ地下に潜っているという点においてもそうだし、その誠実に過ぎる態度にしたってそうだ。
「俺も、そう思ったからアイテム屋になったんです」
彼女には、特別な何かがある。
そう思ったら、俺は自然と口を開いていた。
「アルメリゼさん。翼人のあなたなら、ダンジョンに潜らなくたって人助けができたはずですよね」
「……」
翼人は、地上における哨戒や海生モンスターの退治、荷物運搬、その他あらゆる仕事を担えるありがたい種族だ。
もちろん、ダンジョンにも適性がないとは言えない。広い空間内であれば、無類の力を発揮することだろう。
しかし、翼人は冒険者にはならない。
なぜなら彼らは、空を愛しているからだ。
アルメリゼだって、そうに違いない。
「俺も、ただのアイテム屋をするのならダンジョンに潜る必要なんてなかったんです。冒険者として、アイテム屋をする必要はなかったんです」
実際、地上でアイテムを売る方が商売としては効率がよかった。
だが、地上で人が死ぬだろうか。
いや、死なない。
それなら、俺は地下に潜って少しでも多くの人を助けたかった。
「どれだけ入念に準備してダンジョンに潜ったとしても、ダンジョンは想定外の連続です。もっとポーションがあれば、もっと聖水があれば……なんて思っても、敵を前にした時にはもう遅い。そんな時、ダンジョンに潜るアイテム屋がいれば、命をかける冒険者たちの命が助かるかもしれない。俺は、そう思っているんです」
ああ、だめだ。セールストークでもないのに長く語ってしまった。
アルメリゼもきょとんとしているじゃないか。
俺は思わず下を向く。
恥ずかしい。
少ししてから恐る恐る顔を上げると、アルメリゼがこちらを見て微笑んでいた。
「確かにダンジョンは想定外の連続ですね。マンドレイクも飛び出しますから?」
かわいらしい皮肉を言って、彼女はマンドレイクの草の部分を掴む。
「では、ルウィンさんのために――」
よかった。ようやく受け取ってくれる気持ちになってくれたらしい。
と、思ったのだが、アルメリゼはマンドレイクの哀れっぽい表情を見て口をつぐんだ。
そして、目をそらして言う。
「――やっぱり、他のもので……」
アルメリゼに改めて振られたマンドレイクは、くたびれた手足をだらりとさせていた。
「ぃぁ゛……ぃぁ゛……ぇぁぁ……ぇ……」
これを最後に、彼? は完全に口を閉ざすのだった。
アルメリゼが俺に問いかける。彼女の頭のてっぺんのくせ毛が?に見えて仕方がない。
「マンドレイクが高く売れるから……というのもそうです。けど、一番の理由は――」
アルメリゼを見ていて、ふと思った。冒険者にしては珍しい、見返りを求めない姿勢。誠実であろうとする態度……アルメリゼにはそれがある。と、闇のダンジョンを共にしたA級冒険者の二人が頭をよぎった。
よぎったということは、きっとそうなのだろう。
「――それは、アルメリゼさんと同じかもしれません」
俺の言葉を聞いて、アルメリゼは翼をはためかせた。
「わたしと、同じ……? 見返りを求める、ルウィンさんと?」
「はい」
「そんなはず、ありません……! だってわたしはただ、人を助けたいから冒険者になったのです!」
アルメリゼは言い切った。
普通の人が言えば歯の浮くようなセリフを。
「あと、個人的な趣味も……ちょっとだけ」
ん、個人的……?
ともかく俺は、彼女が普通でないと確信した。
翼人がわざわざ地下に潜っているという点においてもそうだし、その誠実に過ぎる態度にしたってそうだ。
「俺も、そう思ったからアイテム屋になったんです」
彼女には、特別な何かがある。
そう思ったら、俺は自然と口を開いていた。
「アルメリゼさん。翼人のあなたなら、ダンジョンに潜らなくたって人助けができたはずですよね」
「……」
翼人は、地上における哨戒や海生モンスターの退治、荷物運搬、その他あらゆる仕事を担えるありがたい種族だ。
もちろん、ダンジョンにも適性がないとは言えない。広い空間内であれば、無類の力を発揮することだろう。
しかし、翼人は冒険者にはならない。
なぜなら彼らは、空を愛しているからだ。
アルメリゼだって、そうに違いない。
「俺も、ただのアイテム屋をするのならダンジョンに潜る必要なんてなかったんです。冒険者として、アイテム屋をする必要はなかったんです」
実際、地上でアイテムを売る方が商売としては効率がよかった。
だが、地上で人が死ぬだろうか。
いや、死なない。
それなら、俺は地下に潜って少しでも多くの人を助けたかった。
「どれだけ入念に準備してダンジョンに潜ったとしても、ダンジョンは想定外の連続です。もっとポーションがあれば、もっと聖水があれば……なんて思っても、敵を前にした時にはもう遅い。そんな時、ダンジョンに潜るアイテム屋がいれば、命をかける冒険者たちの命が助かるかもしれない。俺は、そう思っているんです」
ああ、だめだ。セールストークでもないのに長く語ってしまった。
アルメリゼもきょとんとしているじゃないか。
俺は思わず下を向く。
恥ずかしい。
少ししてから恐る恐る顔を上げると、アルメリゼがこちらを見て微笑んでいた。
「確かにダンジョンは想定外の連続ですね。マンドレイクも飛び出しますから?」
かわいらしい皮肉を言って、彼女はマンドレイクの草の部分を掴む。
「では、ルウィンさんのために――」
よかった。ようやく受け取ってくれる気持ちになってくれたらしい。
と、思ったのだが、アルメリゼはマンドレイクの哀れっぽい表情を見て口をつぐんだ。
そして、目をそらして言う。
「――やっぱり、他のもので……」
アルメリゼに改めて振られたマンドレイクは、くたびれた手足をだらりとさせていた。
「ぃぁ゛……ぃぁ゛……ぇぁぁ……ぇ……」
これを最後に、彼? は完全に口を閉ざすのだった。
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