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第17話 やるべきこと
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「――黒い魔女が、黒呪病の呪いの根源?」
「一番初めに発症した女性が言っていた魔女の呪いだというその魔女が、黒い魔女のことなんだ」
黒い魔女とはジェルバさんの師匠のことだ。ジェルバさんは師匠から薬作りを受け継いだと手帳に書かれてあった。黒呪病の薬を何百年もかけて作ろうとしていた人が、そもそもの根源?
どうして、黒い魔女はこんな恐ろしい呪いをかけたのだろう。どうして、呪いをかけた本人が必死に薬を作っていたのだろう。
手帳にはそういったことが何も書かれていなかった。
「本来、術者が死ねば呪いも消えるはずなんだ」
「え、それって、黒い魔女はまだどこかで生きているということですか?」
「そういうことになる」
たしかに、師匠から受け継いだとは書かれてあったけれど、亡くなったとは書かれていなかった。
「黒い魔女を探し出して、呪いを解いてもらうのですか?」
「それができれば話は早いんだが、魔術師団の総力をもってしても見つからない。青い魔女も決して口を割らなかった」
もしかすると、黒い魔女本人も呪いを解くことができないのかもしれない。だから薬を作ろうとしていた? ジェルバさんが薬を完成させたけど、この病で苦しんでいる人は今もたくさんいる。黒い魔女は今、何を思っているのだろう。どこで何をしているのだろう。
「私にも何かできることはありませんか?」
「君は本当にお人好しだな」
フォティアスさんは呆れたように笑いながらも、魔術師団が行っていることを教えてくれた。
黒呪病が黒い魔女の呪いだとわかったのは今から百年ほど前で、それからずっと探しているが、一向にみつからないのだという。ジェルバさんは薬を作るだけで何も言わず、最後に後継者に全てを託すと言い消えたそうだ。その後継者が私なのだけれど。
魔術師団では黒呪病の薬を作ろうとしているが、効果を出せるものはできていない。薬の研究を進めつつ力を入れているのが、呪いを解くことだった。
「どうすれば、呪いが解けるのでしょうか」
「それを今我々も探しているところなんだ」
方法はまだ見つかってないんだ。そんなに簡単に見つかるものでもないよね。黒呪病が黒い魔女の呪いだとわかっただけでも進展してるんだ。
「私も、呪いを解く方法を探します。ジェルバさんが残したものや、あの森になにか手がかりがあるかもしれませんし」
「それは助かる。実は少し警戒していたんだ」
「警戒?! どうしてですか?」
「レーナも、青い魔女のように我々とは相容れない関係になるのではないかと思っていた。申し訳ないが、青い魔女の力を継いだ君は魔術師団の観察対象なんだ」
観察対象……。
それは、ジェルバさんが黒呪病のことや黒い魔女のことを何も話さなかったから、手がかりを掴むために監視していたということだろうか。そして跡を継いだ私も。
あまり森から出てはいないけど、送り迎えをしてくれたり、いろいろ気にかけてくれていたのは私の行動から情報を得ようとしていたからなのかな。
「ジェルバさんがどうして何も言わなかったのかはわかりませんが、私は黒呪病を根絶するためになんでも協力しますよ」
フォティアスさんは柔らかく笑みを浮かべた。こんな表情もするんだなと顔を見上げながら、もっとこの人のことが知りたいな、なんて思った。
そして、黒呪病のことももっとちゃんと知らなければいけない。
私は何も知らなかった。突然知らない世界に来て、目の前にいた優しくて美しい魔女を信頼していた。
残された手帳に書かれたことが全て真実だと思っていた。
でも、それは間違っているのかもしれない。だから、本当のことはちゃんと自分の目で確かめなければ。
「君には薬を作るという重要な役割を果たしてもらっている。頑張りすぎる質があるようだし、無理はしないでくれ」
「心配してくれてるんですか? ありがとうございます。でも、黒呪病が根絶されてこの先薬を作らなくてよくなったら、私は思いっきり好きなことをしようかな、なんて思ってるんですよ。先の楽しみがあると頑張れます」
「やりたいことがあるのか?」
黒呪病が根絶されれば、私がこの世界に来た意味はなくなる。でも、この世界で数ヶ月生活してきて、私は自分でこの世界で生きる理由を見つけた。それは一人で見つけたわけじゃなく、エアミルさんや、髪を綺麗にして自信をつけたいという想いをぶつけてくれた少女がいたから。
「私、元の世界では美容師という仕事をしていたんです」
「美容師?」
「主に髪を綺麗にする仕事ですね。髪をカットして整えたり、真っ直ぐなサラサラの髪にしたり、ウェーブをかけたりとかします。染髪して色を変えたりもするんですよ。それぞれの好みに合わせた髪にするんです。他にもヘアセットやお化粧、エステというお肌のマッサージや、爪を綺麗にしたりとか、その人の頭の先から爪の先まで綺麗になるお手伝いをするんです」
「いい仕事だな」
「はい、そういう仕事をこの世界でもしたいのです。もちろん、依頼されればお薬も作ります!」
薬作りもだいぶ慣れてきた。そもそも、美容院だってカット以外はほとんど薬剤を使って施術する。カラー剤もパーマ液も、シャンプーやトリートメントだって医薬部外品の、薬に近いものもある。そういった薬も全部一から自分で作っていくだけだと考えれば、薬師っていう今の職業も案外私に合っているのかもしれないと思いはじめていた。
「黒呪病の薬さえ作ってくれれば好きなことをしてもいいんだぞ」
「まあ、それもありですね。とりあえず今は目の前のことを頑張ります」
黒呪病の薬をもっと良いものにしたい。それと、残ってしまったアザを消す薬も作りたい。時々入る依頼にもしっかり応えたい。
呪いを解く方法も見つけないと。
私にはやるべきことがたくさんある。やりたいと思えることが。
「一番初めに発症した女性が言っていた魔女の呪いだというその魔女が、黒い魔女のことなんだ」
黒い魔女とはジェルバさんの師匠のことだ。ジェルバさんは師匠から薬作りを受け継いだと手帳に書かれてあった。黒呪病の薬を何百年もかけて作ろうとしていた人が、そもそもの根源?
どうして、黒い魔女はこんな恐ろしい呪いをかけたのだろう。どうして、呪いをかけた本人が必死に薬を作っていたのだろう。
手帳にはそういったことが何も書かれていなかった。
「本来、術者が死ねば呪いも消えるはずなんだ」
「え、それって、黒い魔女はまだどこかで生きているということですか?」
「そういうことになる」
たしかに、師匠から受け継いだとは書かれてあったけれど、亡くなったとは書かれていなかった。
「黒い魔女を探し出して、呪いを解いてもらうのですか?」
「それができれば話は早いんだが、魔術師団の総力をもってしても見つからない。青い魔女も決して口を割らなかった」
もしかすると、黒い魔女本人も呪いを解くことができないのかもしれない。だから薬を作ろうとしていた? ジェルバさんが薬を完成させたけど、この病で苦しんでいる人は今もたくさんいる。黒い魔女は今、何を思っているのだろう。どこで何をしているのだろう。
「私にも何かできることはありませんか?」
「君は本当にお人好しだな」
フォティアスさんは呆れたように笑いながらも、魔術師団が行っていることを教えてくれた。
黒呪病が黒い魔女の呪いだとわかったのは今から百年ほど前で、それからずっと探しているが、一向にみつからないのだという。ジェルバさんは薬を作るだけで何も言わず、最後に後継者に全てを託すと言い消えたそうだ。その後継者が私なのだけれど。
魔術師団では黒呪病の薬を作ろうとしているが、効果を出せるものはできていない。薬の研究を進めつつ力を入れているのが、呪いを解くことだった。
「どうすれば、呪いが解けるのでしょうか」
「それを今我々も探しているところなんだ」
方法はまだ見つかってないんだ。そんなに簡単に見つかるものでもないよね。黒呪病が黒い魔女の呪いだとわかっただけでも進展してるんだ。
「私も、呪いを解く方法を探します。ジェルバさんが残したものや、あの森になにか手がかりがあるかもしれませんし」
「それは助かる。実は少し警戒していたんだ」
「警戒?! どうしてですか?」
「レーナも、青い魔女のように我々とは相容れない関係になるのではないかと思っていた。申し訳ないが、青い魔女の力を継いだ君は魔術師団の観察対象なんだ」
観察対象……。
それは、ジェルバさんが黒呪病のことや黒い魔女のことを何も話さなかったから、手がかりを掴むために監視していたということだろうか。そして跡を継いだ私も。
あまり森から出てはいないけど、送り迎えをしてくれたり、いろいろ気にかけてくれていたのは私の行動から情報を得ようとしていたからなのかな。
「ジェルバさんがどうして何も言わなかったのかはわかりませんが、私は黒呪病を根絶するためになんでも協力しますよ」
フォティアスさんは柔らかく笑みを浮かべた。こんな表情もするんだなと顔を見上げながら、もっとこの人のことが知りたいな、なんて思った。
そして、黒呪病のことももっとちゃんと知らなければいけない。
私は何も知らなかった。突然知らない世界に来て、目の前にいた優しくて美しい魔女を信頼していた。
残された手帳に書かれたことが全て真実だと思っていた。
でも、それは間違っているのかもしれない。だから、本当のことはちゃんと自分の目で確かめなければ。
「君には薬を作るという重要な役割を果たしてもらっている。頑張りすぎる質があるようだし、無理はしないでくれ」
「心配してくれてるんですか? ありがとうございます。でも、黒呪病が根絶されてこの先薬を作らなくてよくなったら、私は思いっきり好きなことをしようかな、なんて思ってるんですよ。先の楽しみがあると頑張れます」
「やりたいことがあるのか?」
黒呪病が根絶されれば、私がこの世界に来た意味はなくなる。でも、この世界で数ヶ月生活してきて、私は自分でこの世界で生きる理由を見つけた。それは一人で見つけたわけじゃなく、エアミルさんや、髪を綺麗にして自信をつけたいという想いをぶつけてくれた少女がいたから。
「私、元の世界では美容師という仕事をしていたんです」
「美容師?」
「主に髪を綺麗にする仕事ですね。髪をカットして整えたり、真っ直ぐなサラサラの髪にしたり、ウェーブをかけたりとかします。染髪して色を変えたりもするんですよ。それぞれの好みに合わせた髪にするんです。他にもヘアセットやお化粧、エステというお肌のマッサージや、爪を綺麗にしたりとか、その人の頭の先から爪の先まで綺麗になるお手伝いをするんです」
「いい仕事だな」
「はい、そういう仕事をこの世界でもしたいのです。もちろん、依頼されればお薬も作ります!」
薬作りもだいぶ慣れてきた。そもそも、美容院だってカット以外はほとんど薬剤を使って施術する。カラー剤もパーマ液も、シャンプーやトリートメントだって医薬部外品の、薬に近いものもある。そういった薬も全部一から自分で作っていくだけだと考えれば、薬師っていう今の職業も案外私に合っているのかもしれないと思いはじめていた。
「黒呪病の薬さえ作ってくれれば好きなことをしてもいいんだぞ」
「まあ、それもありですね。とりあえず今は目の前のことを頑張ります」
黒呪病の薬をもっと良いものにしたい。それと、残ってしまったアザを消す薬も作りたい。時々入る依頼にもしっかり応えたい。
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私にはやるべきことがたくさんある。やりたいと思えることが。
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