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第18話 不器用作戦
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私は、行きつけの本屋へやってきた。
シオン様がまたお勧めの本を教えてくれと言ったので、さっそく新しい本を買いにきた。
ずっと気になっているものがあったので、自分でも読んでみてその後シオン様に勧めてみるつもりだ。
でも、ただ本をお勧めするだけではだめだよなあ。
シオン様が、私に離縁を言い出せるきっかけを何かつくらないと。
今までの作戦はほとんど効果がないみたいだし。
いや、日々の積み重ねが大事だよね。コツコツいこう。
そんなことを考えながら本を購入し、お店を出ると扉のすぐ下にハンカチが落ちていることに気付いた。
拾ってみると、とても綺麗な刺繡が施されていた。
「素敵……。でも、だれが落としたのだろう」
辺りを見てみると、先ほどまで本屋でいた男性が少し先を歩いていた。
あの人かも。
私は追いかけて声をかける。
「すみません、これ落としましたか?」
「あっ、そうです、私のです。ありがとうございます」
「良かったです。とても綺麗な刺繡ですね」
「これ、恋人が縫って贈ってくれたものなんです。とても大事なものなので、拾っていただいて本当にありがとうございます」
男性はペコっと頭を下げると、ハンカチを大事そうに抱え歩いていった。
恋人が縫ってくれたハンカチかあ。嬉しそうに話してたな。
私も、やってみようかな。
家に帰り、部屋に仕舞っていた裁縫箱を取り出した。
これは私が嫁いでくるときに母が持たせてくれたものだけれど、一回も使ったことがない。
実家では、ほつれた洋服やカーテンなど全部母が縫って直して使っていたけれど、グラーツ家ではそんなことしなくていいもんね。
それに私は裁縫が苦手だ。学園の授業でもいつも最低評価だった。
まあ、できなくていいやと思っていたけれど、その不器用さを発揮するときがきた。
私は、帰りに買ってきたハンカチに刺繡を入れていく。
元々苦手な上に、針なんて久しぶりで手が震える。
「痛っ」
やるかな、と思っていたけど案の定やってしまった。
左手の人差し指からぷっくりと血が染み出る。
まあ、これくらい想像の範囲内だ。
気を取り直して刺繡を進め、できあがるころには日が沈みかけていた。
「下手でいいと思ってたけど、これはやりすぎかな?」
グラーツ家の紋章に使われているユニコーンの刺繡をしたつもりだったけれど、よくわからない生物になってしまった。
でも、これくらい下手なほうがシオン様も私に呆れるよね。
しかも見るからに失敗作を渡されたら気分を害するはず。
私はさっそくハンカチを仕事終わりのシオン様に渡した。
「これ、ティアが刺繡を入れてくれたの?」
「はい。けっこう自信作なんです!」
そんなわけはない。でも、これが私の精一杯だ。
作戦のためにわざと失敗したわけではなく、真剣にやってこれなのだ。
シオン様はどう思うだろう。
「ありがとう。可愛らしいウサギだね」
「ユニコーンです」
「ああ、この角が長い耳かと思ったよ。確かにこう見るとユニコーンだね」
本当にユニコーンだと思ってる?!
自分で言うのもなんだけれど、ウサギにだって見えないよ。
でもまあ、シオン様は私の前で否定的なことは言わないか。
内心きっと、とんでもないものを渡してきたと思ってるよね。
変化は見えないけど、日々の積み重ね、コツコツが大事。
「ご希望があえればいつでも刺繡しますので!」
「気持ちは嬉しいけど、苦手なことは無理しなくていいからね」
あ、やんわり断られた。
裁縫が苦手なことは言ったことがないのに、苦手だと思われてる。
これは、もうこんなひどい物を自信満々に渡してくるなということだよね。
ちょっとは効果あったのかも。
◇ ◇ ◇
ティアが、刺繡をしたハンカチをプレゼントしてくれた。
嬉しい嬉しい嬉しい。
今まで手作りのものをプレゼントされたことはなかった。
学園時代、裁縫の授業だけ一人残ってやっていたことを知っている。
まさか苦手な裁縫を僕のために頑張ってしてくれるなんて。
これはクラウドに自慢しないとな。
翌朝の稽古の時、僕はわざと見せつけるようにしてティアからもらったハンカチで汗を拭いた。
クラウドはじっと見ている。
「そのハンカチ、ティア嬢が刺繡したのか?」
一目でティアが縫ったものだってわかるんだ。
なんか嫌だな。
「そうだよ。僕のために縫ってくれたんだ」
「へえ、美味そうなタコだな」
「ユニコーンだよ!」
いくらティアの手先が不器用だからってタコには見えないでしょ。
「どう見てもタコだろ、この八本の足」
「足じゃない。これが角だよ」
「こことか」
「耳だよ」
「ここも」
「前足と後ろ足だよ」
「このうねりはどう見てもタコの足だろ」
「尻尾だよ!」
クラウドは納得いっていないけど、僕にはもうユニコーンにしか見えない。
大事な宝物だ。
「まあ、ティア嬢不器用だもんな」
「器用とか不器用は関係ないよ。気持ちが大事なんだ」
「まあ、シオンがタコでいいならいいんじゃね」
「ユニコーンだってば!」
僕はいつまでもタコ扱いされるユニコーンが可哀想になってきて、ハンカチを綺麗に折りたたんでポケットに仕舞った。
「俺の方が上手い刺繡入れてやれるぜ」
「クラウドのはいらないよ」
僕らはもう一度剣を構える。
やっぱり、ティアを幸せにできるのは僕だけだ。
ユニコーンをタコだなんて言う男はやめたほうがいいよ。
ティア、僕はこんなに君のことを愛してるんだ。
早く僕のことを好きになって。
シオン様がまたお勧めの本を教えてくれと言ったので、さっそく新しい本を買いにきた。
ずっと気になっているものがあったので、自分でも読んでみてその後シオン様に勧めてみるつもりだ。
でも、ただ本をお勧めするだけではだめだよなあ。
シオン様が、私に離縁を言い出せるきっかけを何かつくらないと。
今までの作戦はほとんど効果がないみたいだし。
いや、日々の積み重ねが大事だよね。コツコツいこう。
そんなことを考えながら本を購入し、お店を出ると扉のすぐ下にハンカチが落ちていることに気付いた。
拾ってみると、とても綺麗な刺繡が施されていた。
「素敵……。でも、だれが落としたのだろう」
辺りを見てみると、先ほどまで本屋でいた男性が少し先を歩いていた。
あの人かも。
私は追いかけて声をかける。
「すみません、これ落としましたか?」
「あっ、そうです、私のです。ありがとうございます」
「良かったです。とても綺麗な刺繡ですね」
「これ、恋人が縫って贈ってくれたものなんです。とても大事なものなので、拾っていただいて本当にありがとうございます」
男性はペコっと頭を下げると、ハンカチを大事そうに抱え歩いていった。
恋人が縫ってくれたハンカチかあ。嬉しそうに話してたな。
私も、やってみようかな。
家に帰り、部屋に仕舞っていた裁縫箱を取り出した。
これは私が嫁いでくるときに母が持たせてくれたものだけれど、一回も使ったことがない。
実家では、ほつれた洋服やカーテンなど全部母が縫って直して使っていたけれど、グラーツ家ではそんなことしなくていいもんね。
それに私は裁縫が苦手だ。学園の授業でもいつも最低評価だった。
まあ、できなくていいやと思っていたけれど、その不器用さを発揮するときがきた。
私は、帰りに買ってきたハンカチに刺繡を入れていく。
元々苦手な上に、針なんて久しぶりで手が震える。
「痛っ」
やるかな、と思っていたけど案の定やってしまった。
左手の人差し指からぷっくりと血が染み出る。
まあ、これくらい想像の範囲内だ。
気を取り直して刺繡を進め、できあがるころには日が沈みかけていた。
「下手でいいと思ってたけど、これはやりすぎかな?」
グラーツ家の紋章に使われているユニコーンの刺繡をしたつもりだったけれど、よくわからない生物になってしまった。
でも、これくらい下手なほうがシオン様も私に呆れるよね。
しかも見るからに失敗作を渡されたら気分を害するはず。
私はさっそくハンカチを仕事終わりのシオン様に渡した。
「これ、ティアが刺繡を入れてくれたの?」
「はい。けっこう自信作なんです!」
そんなわけはない。でも、これが私の精一杯だ。
作戦のためにわざと失敗したわけではなく、真剣にやってこれなのだ。
シオン様はどう思うだろう。
「ありがとう。可愛らしいウサギだね」
「ユニコーンです」
「ああ、この角が長い耳かと思ったよ。確かにこう見るとユニコーンだね」
本当にユニコーンだと思ってる?!
自分で言うのもなんだけれど、ウサギにだって見えないよ。
でもまあ、シオン様は私の前で否定的なことは言わないか。
内心きっと、とんでもないものを渡してきたと思ってるよね。
変化は見えないけど、日々の積み重ね、コツコツが大事。
「ご希望があえればいつでも刺繡しますので!」
「気持ちは嬉しいけど、苦手なことは無理しなくていいからね」
あ、やんわり断られた。
裁縫が苦手なことは言ったことがないのに、苦手だと思われてる。
これは、もうこんなひどい物を自信満々に渡してくるなということだよね。
ちょっとは効果あったのかも。
◇ ◇ ◇
ティアが、刺繡をしたハンカチをプレゼントしてくれた。
嬉しい嬉しい嬉しい。
今まで手作りのものをプレゼントされたことはなかった。
学園時代、裁縫の授業だけ一人残ってやっていたことを知っている。
まさか苦手な裁縫を僕のために頑張ってしてくれるなんて。
これはクラウドに自慢しないとな。
翌朝の稽古の時、僕はわざと見せつけるようにしてティアからもらったハンカチで汗を拭いた。
クラウドはじっと見ている。
「そのハンカチ、ティア嬢が刺繡したのか?」
一目でティアが縫ったものだってわかるんだ。
なんか嫌だな。
「そうだよ。僕のために縫ってくれたんだ」
「へえ、美味そうなタコだな」
「ユニコーンだよ!」
いくらティアの手先が不器用だからってタコには見えないでしょ。
「どう見てもタコだろ、この八本の足」
「足じゃない。これが角だよ」
「こことか」
「耳だよ」
「ここも」
「前足と後ろ足だよ」
「このうねりはどう見てもタコの足だろ」
「尻尾だよ!」
クラウドは納得いっていないけど、僕にはもうユニコーンにしか見えない。
大事な宝物だ。
「まあ、ティア嬢不器用だもんな」
「器用とか不器用は関係ないよ。気持ちが大事なんだ」
「まあ、シオンがタコでいいならいいんじゃね」
「ユニコーンだってば!」
僕はいつまでもタコ扱いされるユニコーンが可哀想になってきて、ハンカチを綺麗に折りたたんでポケットに仕舞った。
「俺の方が上手い刺繡入れてやれるぜ」
「クラウドのはいらないよ」
僕らはもう一度剣を構える。
やっぱり、ティアを幸せにできるのは僕だけだ。
ユニコーンをタコだなんて言う男はやめたほうがいいよ。
ティア、僕はこんなに君のことを愛してるんだ。
早く僕のことを好きになって。
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