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第20話 モヤモヤ
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シオン様はクラウド様を見下ろし、鋭い視線を向けている。
なんか怒ってる? ずっとつけていたこと、気づいていたのだろうか。
「あの、お話するなら、座りませんか?」
おそるおそる声をかけると、シオン様は私の隣に座った。
私の顔を見ると困ったように眉を下げ、ごめんねと呟いた。
なんの謝罪なんだろう。
「で、シオンはあの令嬢と何してたんだ?」
「クラウドの父上に頼まれたんだよ。彼女に協力してくれって」
今朝、クラウド様のお家へ行くと言っていたのは、お父様に呼ばれたからだったんだ。
だから、クラウド様自身も知らなかったということか。
「それで、協力してたってわけか? また余計なことを」
「できることはしますって言っただけだよ。彼女、本当にクラウドのことが好きみたいだよ」
クラウド様は盛大にため息を吐いた。
「見合いのことはシオンには関係ないだろ」
「関係なくはないよ。僕だって気にかけてるんだ。現にクラウドの父上からも頼まれたわけだし」
「決めるのは俺だ」
「じゃあさっさと決めなよ、結婚。そしたら僕だってこんなことしなくてすんだんだ」
なんか、すごく険悪じゃない?
これって、喧嘩ってこと?
たしかにクラウド様からすれば余計なお世話なのかもしれないし、でもシオン様は頼まれたことをしているのであって、どっちが悪いというわけでもない。
でも、どうしてシオン様はこんなに苛立っているのだろう。
やっぱり、尾行がよくなかった? それとも私がクラウド様と二人でいたから?
だったら私が悪い。
そもそも、あの女性との関係が気になってついてきてしまったけど、このお見合いの話に私は何も関係ない。
シオン様とクラウド様の問題だ。私、ここにいていいのだろうか。
席を外した方がいいのかなと思っていたら、クラウド様が口を開いた。
「俺のことは置いといてさ、ティア嬢を不安にさせるのはよくねえだろ」
呆れたような口調で吐き捨てる。
シオン様はハッとしたように私を見た。
「それは……そうだね。頼まれたからといって、女性と二人ででかけるべきじゃなかった。ティア、ごめんね」
シオン様は申し訳なさそうに頭を下げる。
そうか。普通に考えたら、妻の私に後ろめたいことをしたと思われるんだ。そこは気にしていなかった。
「いえ……大丈夫です。私も、後をつけたりしてすみませんでした」
「じゃ、俺は行くわ。あとは二人で話せ」
クラウド様は帰っていってしまった。
なんか、気まずい……。
「あの、隣に座っているのもおかしいので、向かいに移動しますね」
私は先ほどまでクラウド様が座っていた席に移動しようとしたけれど、立ち上がった瞬間、腕を掴まれた。
「ここに、いて」
「は、い……」
そのままストンっと腰を下ろし、また隣に座ることになってしまった。
「ティア、本当にごめん。協力するのも、もうこれきっりだから」
「そんなに謝らないでください」
「怒ってない?」
「怒ってはいません。ただ、少し気になっただけで」
「気になったの?」
「はい。気になりましたよ」
なぜかシオン様は頬を緩ませる。
「ティアは、あまり僕に興味ないのかと思ってたよ」
興味ない、なんてことはない。
だって毎日毎朝観察するくらいシオン様とクラウド様のことを考えている。
お二人が幸せになってくれたらいいと思っている。
だから、すごく気になった。私以外の女性といることが不安になった。
あれ? なんでこんなに女性に対してモヤモヤするんだろう。
私はお二人の関係を応援しているから、クラウド様のお見合いが上手くいかなければいいなとは思っていた。
でも、それとは別に……
「シオン様が他の女性と二人でいるところを見て、なんだか嫌だと思いました」
その言葉にシオン様は目を見開く。
いくら妻とはいえ、図々しい発言だっただろうか。
けれど、シオン様は私の手を握り嬉しそうに微笑んだ。
「この先は絶対に他の女性と二人で会ったりしないよ。嫌な思いさせてごめんね」
「いえ、頼まれたのなら仕方ないことですので。私たちも帰りましょうか」
シオン様はカフェを出たあとも何度も謝っていた。
後日、クラウド様はやはりお見合いを断ったとシオン様が教えてくれた。
あの女性はクラウド様の好きなタイプや好きな物を知りたいとお父様に聞いたところ、それならシオン様に聞くのがいいと、協力を求めてきた。
クラウド様へのプレゼントを選び、カフェではどうしたら結婚を受けてもらえるのかと涙を浮かべて話していたそうだ。
朝、いつも通りお二人が稽古をしている姿を見てホッとしている反面、あの女性が気の毒だなとも思ってしまう私がいる。
涙を流すほど誰かを好きになったことは、私にはない。
◇ ◇ ◇
「で、ティア嬢は許してくれたのかよ」
「許すもなにも、ティアは僕に対して怒ったりしない」
「内心はわかんないぜ」
「そんなことよりクラウド、早く結婚しなよ」
「面倒くせえ」
元はと言えば僕が変な頼みを聞いて女性と二人ででかけたことが悪いのに、僕の方が感情的になってしまった。ティアとクラウドが一緒にいるところを見て。
きっとティアはこんなふうに心を乱すことはないんだろうな。
むしろ、クラウドと一緒にいられて嬉しかったのかもしれない。
そう考えるだけでまた心が歪んでいく。
「まあ、お前は俺のことはほっといてティア嬢のことだけ考えとけよ」
「言われなくてもそうするよ」
剣を握る手に力が入る。
クラウドはいつも余裕がある。強いし、見た目だってそれなりにいい。
でも、ティアのことは僕が幸せにするんだ。
『シオン様が他の女性と二人でいるところを見て、なんだか嫌だと思いました』
ティアの言葉を思い出し、思わず口元が緩む。
少しは僕にも妬いてくれたということだろう。
不謹慎だけど、協力して良かったと思ってしまう。
もっと、妬かせてみたいなんて悪い考えが頭をよぎった。
なんか怒ってる? ずっとつけていたこと、気づいていたのだろうか。
「あの、お話するなら、座りませんか?」
おそるおそる声をかけると、シオン様は私の隣に座った。
私の顔を見ると困ったように眉を下げ、ごめんねと呟いた。
なんの謝罪なんだろう。
「で、シオンはあの令嬢と何してたんだ?」
「クラウドの父上に頼まれたんだよ。彼女に協力してくれって」
今朝、クラウド様のお家へ行くと言っていたのは、お父様に呼ばれたからだったんだ。
だから、クラウド様自身も知らなかったということか。
「それで、協力してたってわけか? また余計なことを」
「できることはしますって言っただけだよ。彼女、本当にクラウドのことが好きみたいだよ」
クラウド様は盛大にため息を吐いた。
「見合いのことはシオンには関係ないだろ」
「関係なくはないよ。僕だって気にかけてるんだ。現にクラウドの父上からも頼まれたわけだし」
「決めるのは俺だ」
「じゃあさっさと決めなよ、結婚。そしたら僕だってこんなことしなくてすんだんだ」
なんか、すごく険悪じゃない?
これって、喧嘩ってこと?
たしかにクラウド様からすれば余計なお世話なのかもしれないし、でもシオン様は頼まれたことをしているのであって、どっちが悪いというわけでもない。
でも、どうしてシオン様はこんなに苛立っているのだろう。
やっぱり、尾行がよくなかった? それとも私がクラウド様と二人でいたから?
だったら私が悪い。
そもそも、あの女性との関係が気になってついてきてしまったけど、このお見合いの話に私は何も関係ない。
シオン様とクラウド様の問題だ。私、ここにいていいのだろうか。
席を外した方がいいのかなと思っていたら、クラウド様が口を開いた。
「俺のことは置いといてさ、ティア嬢を不安にさせるのはよくねえだろ」
呆れたような口調で吐き捨てる。
シオン様はハッとしたように私を見た。
「それは……そうだね。頼まれたからといって、女性と二人ででかけるべきじゃなかった。ティア、ごめんね」
シオン様は申し訳なさそうに頭を下げる。
そうか。普通に考えたら、妻の私に後ろめたいことをしたと思われるんだ。そこは気にしていなかった。
「いえ……大丈夫です。私も、後をつけたりしてすみませんでした」
「じゃ、俺は行くわ。あとは二人で話せ」
クラウド様は帰っていってしまった。
なんか、気まずい……。
「あの、隣に座っているのもおかしいので、向かいに移動しますね」
私は先ほどまでクラウド様が座っていた席に移動しようとしたけれど、立ち上がった瞬間、腕を掴まれた。
「ここに、いて」
「は、い……」
そのままストンっと腰を下ろし、また隣に座ることになってしまった。
「ティア、本当にごめん。協力するのも、もうこれきっりだから」
「そんなに謝らないでください」
「怒ってない?」
「怒ってはいません。ただ、少し気になっただけで」
「気になったの?」
「はい。気になりましたよ」
なぜかシオン様は頬を緩ませる。
「ティアは、あまり僕に興味ないのかと思ってたよ」
興味ない、なんてことはない。
だって毎日毎朝観察するくらいシオン様とクラウド様のことを考えている。
お二人が幸せになってくれたらいいと思っている。
だから、すごく気になった。私以外の女性といることが不安になった。
あれ? なんでこんなに女性に対してモヤモヤするんだろう。
私はお二人の関係を応援しているから、クラウド様のお見合いが上手くいかなければいいなとは思っていた。
でも、それとは別に……
「シオン様が他の女性と二人でいるところを見て、なんだか嫌だと思いました」
その言葉にシオン様は目を見開く。
いくら妻とはいえ、図々しい発言だっただろうか。
けれど、シオン様は私の手を握り嬉しそうに微笑んだ。
「この先は絶対に他の女性と二人で会ったりしないよ。嫌な思いさせてごめんね」
「いえ、頼まれたのなら仕方ないことですので。私たちも帰りましょうか」
シオン様はカフェを出たあとも何度も謝っていた。
後日、クラウド様はやはりお見合いを断ったとシオン様が教えてくれた。
あの女性はクラウド様の好きなタイプや好きな物を知りたいとお父様に聞いたところ、それならシオン様に聞くのがいいと、協力を求めてきた。
クラウド様へのプレゼントを選び、カフェではどうしたら結婚を受けてもらえるのかと涙を浮かべて話していたそうだ。
朝、いつも通りお二人が稽古をしている姿を見てホッとしている反面、あの女性が気の毒だなとも思ってしまう私がいる。
涙を流すほど誰かを好きになったことは、私にはない。
◇ ◇ ◇
「で、ティア嬢は許してくれたのかよ」
「許すもなにも、ティアは僕に対して怒ったりしない」
「内心はわかんないぜ」
「そんなことよりクラウド、早く結婚しなよ」
「面倒くせえ」
元はと言えば僕が変な頼みを聞いて女性と二人ででかけたことが悪いのに、僕の方が感情的になってしまった。ティアとクラウドが一緒にいるところを見て。
きっとティアはこんなふうに心を乱すことはないんだろうな。
むしろ、クラウドと一緒にいられて嬉しかったのかもしれない。
そう考えるだけでまた心が歪んでいく。
「まあ、お前は俺のことはほっといてティア嬢のことだけ考えとけよ」
「言われなくてもそうするよ」
剣を握る手に力が入る。
クラウドはいつも余裕がある。強いし、見た目だってそれなりにいい。
でも、ティアのことは僕が幸せにするんだ。
『シオン様が他の女性と二人でいるところを見て、なんだか嫌だと思いました』
ティアの言葉を思い出し、思わず口元が緩む。
少しは僕にも妬いてくれたということだろう。
不謹慎だけど、協力して良かったと思ってしまう。
もっと、妬かせてみたいなんて悪い考えが頭をよぎった。
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