少年が気持ちよくなる方法

三木

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 ムードなど意に介さぬという良に裕司も開き直って、荷物の中から避妊具や潤滑剤をバラバラと出すと、良は腹を抱えて笑い出した。
 何がそんなにおかしいのか見当もつかなかったが、彼がここまで爆笑しているのを見るのは初めてで、まさかこのタイミングで披露されることになろうとは予想外甚だしかった。
「この状況でこんなに爆笑されたのはさすがに初めてだな……」
 良はどうやらツボに入ったらしく、なかなか笑いが止まらなかった。そんな良を見下ろしながら呟くと、良は息を切らせながらごめん、と言った。
「だ、だってあんたすっごい真顔で……あっはははは……はぁ、お腹痛い……ふふっ」
 これはしばらくだめだな、と判断して、裕司は良を放っておいてシーツの上にタオルを敷いたり、備え付けのティッシュを近くに寄せたりした。そうやって黙々と作業をするのがまた腹筋を刺激するらしく、笑いすぎて良はむせていた。
「やだもう……苦しい……あははは……」
 そういえば箸が転げても笑うのが子どもだったな、と思いつつ、裕司は良の背中をさすってやる。思えば今日の良は喜怒哀楽の大盤振る舞いだ。正直、こんなに笑う姿まで見られるとは思っていなかった。
「はー……もう……ほんとごめん……」
 そう言いながら、良は涙を拭う。
「お前も泣くほど笑ったりするんだなぁ……」
「ええ……? そりゃ笑うときは笑うよ俺だって……」
「でも今のはそこまで笑うタイミングじゃなかったよな?」
「しょうがないじゃん……おかしくなっちゃったんだから……」
 笑い疲れた、とばかりに、良は大儀そうに身体を起こす。そして裕司の顔を覗いてきた。
「……そんな気分じゃなくなっちゃった?」
「……その方がよかったか?」
 そう言ってやると、良は嬉しそうに表情を緩めた。そんな顔をされてしまえば、裕司はもう文句のひとつも言えないのだ。
「お前に甘いなー……俺ぁ」
 しみじみと呟くと、良はくす、と小さく笑った。
「ほんと。なんでそんなに俺のこと甘やかすの?」
「それを言ったら、お前だって何でそんなに俺を受け入れられるんだよ」
 良は目をぱちぱちと瞬いて、裕司を見返した。
「普通……っていうか、大抵は、男が好きでもないのにオッサンに抱かれるって、けっこうハードル高いと思うんだがな?」
 訊いたところで今さらだと思いつつ、裕司は良の頬を指の背で撫ぜる。良は顔色も変えなかった。
「……それは俺も何でかなって思ったけど、よくわかんないよ。初めてあんたにキスされたときも全然気持ち悪くなくてびっくりしたけど、今だってなんで気持ち悪くないんだろって思うもん」
「……なんでだろうなぁ」
「なんでだろうね」
 良が真顔で返してきて、裕司はつい笑ってしまった。何故だかにらめっこに負けたような気持ちにさせられて、笑いながら良の艶のある髪を撫でた。
「……で、お前は、死ぬほど笑ってたけど続きをする気はあんのか?」
 良は裕司の手を取って、顔を近付けながら言った。
「全然あるけど、もしかしたらまた笑っちゃうかも。……何べんも笑ったらやっぱり怒る?」
 裕司は苦笑する。まさか笑えるほどリラックスしてくれるとは想像もしていなかった。
「いいよ、好きなだけ笑えばいいし、好きなだけムードぶち壊してくれ」
「……別に好きでやってるわけじゃないんだけど……」
 その声が拗ねたのがおかしかった。彼に悪気がないことも、わざとやっているわけではないのだろうこともわかっていた。
「どっちにしたって、俺はそういうお前が好きだからいいんだよ」
 良は目を丸くして裕司を見た。そんなに驚かせるようなことを言っただろうか、と考える間に、良は照れたように目を逸らし、しかしその手はより強く裕司の手を握っていた。
「…………そこまで甘やかされたら、俺、どんな顔すればいいかわかんないんだけど……」
 困ったような、怒ったような顔をしてみせて、そんなことを言う。呆れるほど可愛いとしか思えなくて、裕司は良を引き寄せた。
「今からまさに甘やかし尽くそうと思ってたんだが、やめた方がいいか?」
「ええ……」
「ムードがなくても笑い上戸でも、お前が可愛くってしょうがないんだよ、俺は」
 良は黙って、黒い瞳を裕司に向けた。その瞳も美しくて、舐めてしまいたいほどだと思うのだから、如何ともし難かった。
「……あんたがしたいんだったら、仕方ないね……」
 良の言葉に、裕司は破顔しながら良の頭をかき混ぜた。
「お前も大概俺に甘いな」

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