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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
155.なぜ
しおりを挟む「小鳥美?!またいきなり何を言うんだい?!」
「だってウィール様おかしいですよ。私だってこの世界の毒に詳しい訳じゃありませんけれど、こんなに長時間毒に侵されてきた人は、一日で動けるようになりません。そもそも、十年も前に死亡していたって驚きませんよ。殿下に渡す予定の魔術具があったとはいえ、無理があります。見せてもらったときに軽く調べましたが、あれは解毒というより防毒用です。弱い毒を無効化し、強い毒を弱毒化させる。その程度しかありません。はぁ…はっきりいいましょう。ガストロは異常です。」
そう断言すれば、ウィール様は少しばかり眉を寄せて言う。
「だからってねぇ。……小鳥美、もう少しいい聞き方は無かったのかい?」
…………
「あれ。配慮、足りていませんでした?」
「うん。間違いなく足りてなかったよ。」
「それは失礼しました。他意はありませんよ。」
(……?隊長の頃のクセかな?)
内心疑問に思うものの、どこかで納得している自分がいることも確かなようだ。
「世界樹様、ご配慮感謝いたします。しかし、精霊妃様の疑問ももっともです。」
私の言い方に苦笑つつも、ガストロは再び胸元からネックレスを取り出した。
「先ほどは指輪をお見せしましたが、解毒の魔術具はこのネックレス自体です。」
大きな飾りと指輪に目を奪われるネックレスだが、鎖の部分にも細かく飾りが刻まれている。
(……いや……文字か?まさか…この世界で使われている魔法文字…?)
大きな飾りの中には魔法陣が浮かび、それには物理防御と魔法防御が込められている。
どちらも弱いとはいえ、これをこの世界の人間が作るにはたしか…職人レベルの技術がいるはず。
「これは亡き妻が作ってくれたネックレスです。これには完全な解毒こそありませんが、私が安全だと認識した場所でのみ、すぐに回復できるよう魔法が込められています。私の驚異的な回復はこれのおかげです。」
無意識のうちにゴクリとのどが鳴る。たった一つの中に、いったい何個の魔法が込められているのだろう。
「……それ、かしてもらっていい?」
詳しく調べたい。その一心でガストロに声をかける。
「お言葉ですが、私が持ちますので存分にご覧下さい。」
「ふふっ……正解。」
見せてもらえるだけで調べられる。それを知らないからこその言葉だろうが、好都合だ。
手のひらに載せられたネックレスを見ながら、正しく判断できたガストロの頭をなでる。
(…うん。大体言っている通りの内容が彫られている)
一言感想としては、エグイ。
びっちりと魔法文字が彫られているが、それを隠すためにさらに飾りが彫られている。
でもそれによって他の効果が阻害されることもなく、どれだけ時間がかかったのか考えると鳥肌が立つ。
(心の底から、今の状況が安全と本人が確信するか、魔術具が安全だと判断しないと完全には回復できないようになってる。………魔術具って判断できるんだ。)
「うん。ありがとうね。」
何がどうなって魔術具自体が判断できるようになっているかは分からないが、ガストロの奥方の重さがすさまじい。
……千葉の女性版ということだろうな。まぁ、本人と話し合ってこれならいいか。
今はスヤスヤ眠っているであろう部下を思いながら、どこかで納得した。
そしてふと思う。
もしこれが千葉と私ならば、たとえ私との子供だろうと私用に作ったものを渡されるのは絶対に嫌がるだろう。
ちょっと調べただけでもこんなに…………。
待て、これはまだいい。指輪は?
指輪はカリストロ用に作られていたか?
いやな汗がつうっと流れる感覚がある。
「………ガストロ。この魔術具なんだけど、それぞれ同じ効果のやつ私が作ってあげるからさ、指輪も含めてカリストロ殿下に渡さないでくれない?」
「指輪も、ですか。」
「……できれば。」
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