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1-1 リューリャ
「…なんで?」
目の前の鏡に写るのは、僕にそっくりな、
━━━━━
見慣れない男。
僕は13歳のはず。
いや、いや、違う、18歳だ。
あれ?じゃあ、これが僕っていうこと?
立ち上がった時の違和感。この部屋は確かに僕の部屋だ。
でも、やけに狭く感じる。
そして大破した窓、いや、壁もほぼ一面無いですよ、これは。
修理にいくらかかるのかな‥一応、僕の家なんですけど‥そして大事な、大事な大事な収入源…。
いや、僕の部屋だけならざっくり穴を塞ぐだけでなんとかなるかな。お客さんが泊まる部屋じゃ大変だったよ。
『やどりぎの宿』はここら辺では一番の宿なんだ。つぎはぎだらけの安らげない部屋にお客さんを泊めるなんて、絶対に駄目だからね。
僕の部屋ならお金はかけなくていい。
海側だし、船から見えないように上手く直そう。
お金、ダイジ。修理代は払ってもらわなくちゃ。
「えーっと…」
僕の部屋の壁に大穴を開けたであろう男がこちらを見ている。目を見開いて、僕を見ているよ。
とりあえず、なんて言おうかな?
『いらっしゃいませ』
なんでだよ。あ、でも本当にやって来たお客さんだったら有りかな?
『どちら様ですか?』
うーん、最初はこれかな?
『修理代、払ってくださるんですよね?』
これ、一番大事だからね、忘れないようにしなくちゃ。
とりあえず、笑顔だ。客商売だし、いつお客さんになってくれるかわからないんだから、最初の印象は大切だよ。
僕はできるだけにっこりと愛想良く見える笑顔を作った。
「あの、何かご用でしょうか…?」
…聞くでしょ? 聞くよね?
だって、いくらなんでも色々何がなんだかわからない。
あーもう、僕は今、僕自身の事でいっぱいいっぱいなのに。
マリエッタ、とりあえずマリエッタに会いたい。
僕の可愛いマリエッタに。
男は僕の部屋の床に降り立って、背中の黒いコウモリみたいな翼を折り畳んだ。
(有翼種の翼とは、ちょっと違うよなぁ…母さんの知り合いとかでは無さそう?)
あれ、待てよ? 本当にこの人がこの穴を開けたのかな? チリチリとする違和感が、胸の中心を掠める。
「あなたが、この穴を開けたんですよね…?」
男はフルリと頭を振ると、
「わからない…我がやったのだろうか…」と不思議そうに呟いた。
わからない、その言葉が、スウ、と府に落ちる。
そうだ、わからない。
今の状況が、まったく。
まるで、記憶喪失になったみたいに、生まれてから今までの自分のことが、わからない。
何かをきっかけにして「ああ、こうだった、だからこうだな」って気付くような。
男を見て、身体の奥が、きゅう、としめつけられた。
(綺麗なひとだな)
僕より頭一つ分以上は余裕で大きいし、男らしくてカッコいいのに、綺麗だ、と思う。
こんな顔なら、マリエッタも焦らさずに僕のお嫁さんになってくれるんだろうか。
いや、別に僕だってそこそこいけてるよ、うん。18歳だから、まだ伸び代はあるし。
(きっとこいつは350歳くらいなんだ、そうだろ?)
「どうか、お情けを」
男は今気がついたかのように、僕の足元で三つ指をついた。
「ちょっ…!頭を上げてください!ちゃんと理由を、どうしてこうなったのか、説明してくれれば、そんな事しなくていいですから…!」
ゆっくりと頭をあげ、目をつぶり、涙を一筋、ツウ、と流した。長い黒髪がシャラン、と音を鳴らした。まっすぐでサラサラですね。でも眉間の皺が深くて怖いよ。
「なんと…なんと慈悲深い…!」
(震えてるし…謝るなら壁とか壊さないでよね…)
「ちゃんと修理代はいただきますからね…どうか、立ち上がって下さい」
大穴から、気持ちのいい海風が僕の中途半端に長い髪を揺らしていく。昨日までは、短かったはずの、僕の髪。5年の間に、イメチェンでもしたんだろうか。そんな細かいことは、あやふやなままだ。
(あー、僕の髪って、やわらかくてサラサラで、キレイな色だな~。まるで光の妖精だ。あはは)
もう、何でもいいや。穴を開けたのがこの人だろうが、違い人だろうが、犯人を許そう。取り返しのつくことなら、ちゃんと謝れば許す。
人は、許しあって生きて行かなくちゃ。
「クリス…」
カッと見開かれた目、青白い肌の涙にそって針のような黒髪がはりついて、震える指が僕の足をガシッと掴んだ。だから、皺が深くて怖いんですって!
てゆうか、修理代の話をしようか?
僕はもう一度、鏡を見た。
僕がこの人を虐めて泣かせてるみたいじゃないか…
精霊の中でも強い個体は、妖精と呼ばれる人型になる。この世界の神様は龍だけど、身近な絵物語なんかで人間を助けるのはだいたい妖精だったりする。
鏡にうつる僕は、描かれた妖精が、そのまま飛び出してきたような姿だ。
きらきら光る髪、細い体、ぷるぷるのくちびる、つやつやの肌に、人形みたいな瞳。
美少女としか言いようがない。
自画自賛? そんなんじゃない。
僕は、冒険者になるはずだった。
18年間鍛え上げたはずの筋肉は、どこにいったの?
こんな腕で、弓がひけるの?
僕は本当は、女の子だったの? そんな訳ない、だってついてるんだから。今は違うモノもくっついてるけど…って、そうじゃなくて。
「…っ!…んン!??」
なんでこうなった?
なんで男の舌が僕の口の中でうにょうにょしてるの?
ちょ、ちから!!お前はオーガか!?
(お情けって、そういうこと…っ!?)
今まで感じた事がない感覚が、身体の奥に灯った。
いや、知ってる?
…僕は、これをしってる。
気持ちいい、もっと、して欲しい
「…ッは、ぁ……リューリャ…」
リューリャ!?
リューリャって誰?お前か!
「クリス…っ!」
僕達は絡み合ってベッドに倒れこんだ。
…もう、本当にわけがわからない。
僕の夢は、どうなるんだよ。
この、嘘みたいに広い世界に、旅立てるはずだったんだ。
世界中を飛び回って、たくさんの宝物を手に入れて。
そして、いつかやどりぎの宿2号店を建てて、
マリエッタを誰よりも幸せにするって、
約束をした。はずだったのに
僕はなんだかよくわからないまま、抑えようのない快楽に、そのまま沈んだ。
目の前の鏡に写るのは、僕にそっくりな、
━━━━━
見慣れない男。
僕は13歳のはず。
いや、いや、違う、18歳だ。
あれ?じゃあ、これが僕っていうこと?
立ち上がった時の違和感。この部屋は確かに僕の部屋だ。
でも、やけに狭く感じる。
そして大破した窓、いや、壁もほぼ一面無いですよ、これは。
修理にいくらかかるのかな‥一応、僕の家なんですけど‥そして大事な、大事な大事な収入源…。
いや、僕の部屋だけならざっくり穴を塞ぐだけでなんとかなるかな。お客さんが泊まる部屋じゃ大変だったよ。
『やどりぎの宿』はここら辺では一番の宿なんだ。つぎはぎだらけの安らげない部屋にお客さんを泊めるなんて、絶対に駄目だからね。
僕の部屋ならお金はかけなくていい。
海側だし、船から見えないように上手く直そう。
お金、ダイジ。修理代は払ってもらわなくちゃ。
「えーっと…」
僕の部屋の壁に大穴を開けたであろう男がこちらを見ている。目を見開いて、僕を見ているよ。
とりあえず、なんて言おうかな?
『いらっしゃいませ』
なんでだよ。あ、でも本当にやって来たお客さんだったら有りかな?
『どちら様ですか?』
うーん、最初はこれかな?
『修理代、払ってくださるんですよね?』
これ、一番大事だからね、忘れないようにしなくちゃ。
とりあえず、笑顔だ。客商売だし、いつお客さんになってくれるかわからないんだから、最初の印象は大切だよ。
僕はできるだけにっこりと愛想良く見える笑顔を作った。
「あの、何かご用でしょうか…?」
…聞くでしょ? 聞くよね?
だって、いくらなんでも色々何がなんだかわからない。
あーもう、僕は今、僕自身の事でいっぱいいっぱいなのに。
マリエッタ、とりあえずマリエッタに会いたい。
僕の可愛いマリエッタに。
男は僕の部屋の床に降り立って、背中の黒いコウモリみたいな翼を折り畳んだ。
(有翼種の翼とは、ちょっと違うよなぁ…母さんの知り合いとかでは無さそう?)
あれ、待てよ? 本当にこの人がこの穴を開けたのかな? チリチリとする違和感が、胸の中心を掠める。
「あなたが、この穴を開けたんですよね…?」
男はフルリと頭を振ると、
「わからない…我がやったのだろうか…」と不思議そうに呟いた。
わからない、その言葉が、スウ、と府に落ちる。
そうだ、わからない。
今の状況が、まったく。
まるで、記憶喪失になったみたいに、生まれてから今までの自分のことが、わからない。
何かをきっかけにして「ああ、こうだった、だからこうだな」って気付くような。
男を見て、身体の奥が、きゅう、としめつけられた。
(綺麗なひとだな)
僕より頭一つ分以上は余裕で大きいし、男らしくてカッコいいのに、綺麗だ、と思う。
こんな顔なら、マリエッタも焦らさずに僕のお嫁さんになってくれるんだろうか。
いや、別に僕だってそこそこいけてるよ、うん。18歳だから、まだ伸び代はあるし。
(きっとこいつは350歳くらいなんだ、そうだろ?)
「どうか、お情けを」
男は今気がついたかのように、僕の足元で三つ指をついた。
「ちょっ…!頭を上げてください!ちゃんと理由を、どうしてこうなったのか、説明してくれれば、そんな事しなくていいですから…!」
ゆっくりと頭をあげ、目をつぶり、涙を一筋、ツウ、と流した。長い黒髪がシャラン、と音を鳴らした。まっすぐでサラサラですね。でも眉間の皺が深くて怖いよ。
「なんと…なんと慈悲深い…!」
(震えてるし…謝るなら壁とか壊さないでよね…)
「ちゃんと修理代はいただきますからね…どうか、立ち上がって下さい」
大穴から、気持ちのいい海風が僕の中途半端に長い髪を揺らしていく。昨日までは、短かったはずの、僕の髪。5年の間に、イメチェンでもしたんだろうか。そんな細かいことは、あやふやなままだ。
(あー、僕の髪って、やわらかくてサラサラで、キレイな色だな~。まるで光の妖精だ。あはは)
もう、何でもいいや。穴を開けたのがこの人だろうが、違い人だろうが、犯人を許そう。取り返しのつくことなら、ちゃんと謝れば許す。
人は、許しあって生きて行かなくちゃ。
「クリス…」
カッと見開かれた目、青白い肌の涙にそって針のような黒髪がはりついて、震える指が僕の足をガシッと掴んだ。だから、皺が深くて怖いんですって!
てゆうか、修理代の話をしようか?
僕はもう一度、鏡を見た。
僕がこの人を虐めて泣かせてるみたいじゃないか…
精霊の中でも強い個体は、妖精と呼ばれる人型になる。この世界の神様は龍だけど、身近な絵物語なんかで人間を助けるのはだいたい妖精だったりする。
鏡にうつる僕は、描かれた妖精が、そのまま飛び出してきたような姿だ。
きらきら光る髪、細い体、ぷるぷるのくちびる、つやつやの肌に、人形みたいな瞳。
美少女としか言いようがない。
自画自賛? そんなんじゃない。
僕は、冒険者になるはずだった。
18年間鍛え上げたはずの筋肉は、どこにいったの?
こんな腕で、弓がひけるの?
僕は本当は、女の子だったの? そんな訳ない、だってついてるんだから。今は違うモノもくっついてるけど…って、そうじゃなくて。
「…っ!…んン!??」
なんでこうなった?
なんで男の舌が僕の口の中でうにょうにょしてるの?
ちょ、ちから!!お前はオーガか!?
(お情けって、そういうこと…っ!?)
今まで感じた事がない感覚が、身体の奥に灯った。
いや、知ってる?
…僕は、これをしってる。
気持ちいい、もっと、して欲しい
「…ッは、ぁ……リューリャ…」
リューリャ!?
リューリャって誰?お前か!
「クリス…っ!」
僕達は絡み合ってベッドに倒れこんだ。
…もう、本当にわけがわからない。
僕の夢は、どうなるんだよ。
この、嘘みたいに広い世界に、旅立てるはずだったんだ。
世界中を飛び回って、たくさんの宝物を手に入れて。
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