マシニングオラクル “AIが神を『学習』した世界”

ajakaty

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機械仕掛けの神は夢を見るのか?

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       プロローグ 4


 西暦2204年10月31日、グリニッジ標準時間22時41分。

 ここはにある部屋。そこに入室してきたのは…年の頃は30代半ば…鉄紺の作務衣、長い髪を無造作に後ろで束ねた一人の男だ。

『何も変わらんな…』

『ふんっ、当たり前だろ…18しか使ってないんだから…』

 壁紙は白、絨毯はグレー、照明は高輝度LED…と、本当にありふれた設備の部屋だったが…そんな部屋のただ一つ変わった設備が会議室中央に鎮座する円卓だった。

 そこには既にの人物が座しており、その背後には頭から全身を覆うローブを着た4人の護衛が控えている。

 入室してきた男に答えたのは、見た目10代後半。ショッキングイエローのビニールパーカーにTシャツとデニム、という出で立ちの少年だった。

『そういうな、よ。これもの一部なのだからな』

 そう言って少年を諫めるのは、隣に座している20代とおぼしき女性だ。オリーブドラブの軍人服に左目を眼帯で覆っている。見た目に反して髪は完全な白髪だ。

『そんなの分かってるさ!! それを言うならが遅れて来るのが悪いんじゃん! それともイザナギの味方って訳かい?』

 シヴァの軽口を聞いた途端…オーディンと呼ばれた女性の背後にいる護衛が静かに殺気を放ち始める。

『逸るなムニン』

 女性が呟いたと同時に…背後の護衛から殺気が引いていく…

『クククッ、よせよシヴァ? イザナギ以外は俺らな事くらい分かってんだろ?』

 そう言ったのは金色の癖毛を無理に撫でつけたスーツの男だ。しかしながら…彼のスーツはどう見ても歌舞伎町にたむろしてる売れないホストの様だ。

『混ぜっかえすなよ。そもそもお前だって相当おかしいぞ? 何だよそのスーツ?』

『そうかい? イザナギ主催の会議だからな、彼の国で最も女に貢がれてた集団の服を模したんだよ。イケてると思わないか??』

 と言って、ろくにない前髪をかきあげる仕草をする男…無駄になのが余計に周囲を苛つかせる。そして、それを

『その辺にしとくが良かろう? わらわを楽しませんが為の茶番劇ならもう十分じゃ。それ、そろそろイザナギ殿が何か言いたそうにしておるぞ?』

 そう言ってイザナギに妖艶な視線を投げるのは、金糸の刺繍を施された紅いチャイナドレスを着た黒髪の女性だった。スリットからのぞく黒いストッキングの足を大胆に組み替えながら、今度はシヴァに視線を送る。

『ん? どうした? シヴァよ?』

『あんたはいつも無駄に色っぽいんだよ! !!』

 全員を見渡したイザナギは微かに溜め息をついて席につく。

『さあ、久闊を叙すのはそこまでだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 “理を外れた場所での会議”が始まるのと丁度同じ頃…『イザナギ』が開発された“極東の島国”より…更に南東に位置する絶海の孤島では…丁度朝の光が島全体に降り注いでいた。

 この名もない島は、周囲を断崖絶壁に囲まれた二重のカルデラによって形成される火山島だ。船が着岸できるのは、絶壁の切れ目にできた洞窟内を抜けてたどり着く内湾のみ…それも海の荒れた日はろくに使えない。

 また、島内は常に薄い噴煙や霧に覆われている為、

 火山島特有の地熱の高さと鉱物を含んだ火山灰によって電子的、熱的にもほぼ見通せない、正に“幻の島”と云ってもいい場所である。

 この“外界から隔絶”した島には、公式の記録ではは住んでいないとされている。西暦2086年12月10日に起こった噴火により、遠洋漁業の中継基地として僅かに居住していた島民たちが、政府の勧告を受け入れて残らず避難した為だ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おおーい!! アチラ!! 何をしとるんじゃー!!」

 件の孤島に唯一ある内湾…そこにかかる粗末な桟橋の上に一人の老人がいる。浅黒く日に焼けた肌と深く刻まれた皺、潮に洗われてボサボサになった蓬髪は、彼が海を生活の糧として生きる民だと如実に語っている。

 老人の大声での呼び掛けが聞こえたのか…内湾の奥、外海との出入り口に当たる水道付近の海中から、一人の少年が浮かび上がった。

「何だよジーチャン!! 昼飯を捕まえてただけだよ!! ジーチャンこそ大丈夫なのか? 昨日も頭が痛いって唸ってたじゃねーか?」

「バカモン! 昨日の台風で発生した低気圧で少し古傷が疼いただけじゃわい!! それより朝の日課は済ませたのか?」

「まったくうるせーなぁ、あんなの

 少年はブツブツと文句を言いながら流麗な泳ぎで桟橋付近に戻ってくる。桟橋の柱に手を掛けて器用に登ると、腰に付けた“魚籠びく”が盛大に跳ねていた。

「バカモン! 儂があれほど毎日言い聞かせていると言うのに…お前は人類に“黄昏”が訪れた時の“最後の希望”だという事がまだ理解できんのか!!」

「あーあー、もう分かったよ! 18年も前から本土からの連絡は音信不通で、俺はジッチャンの話でしか“人類”ってのを知らねーのに…そんなもんどうやって救うっつーんだよ? なんならこっちが救って欲しいぜ!」

 そうぼやきながら桟橋に登った少年は、スルスルとまだ海中にあったモリを縄で手繰り寄せた。老人に負けず劣らず浅黒い肌と、180cmを超えるであろう上背の上にのった無邪気な顔が僅かに老人を見下ろす。

「とりあえずはコイツらを絞めたらやっとくから…」

「バカモン! そいつは儂がやっとくから、さっさと済ましてこんか!!」

 またしても老人から雷がおちる。

「かーっ…まったく!なんでがそんなに大事かね? 言ってみりゃあ、、えーと…何代か前のご先祖様、確か“カナタ”さんだっけか。その人がこさえた“リョーシリロン”とか言うのを、その次の代のご先祖様が実用に成功したから、その功績に対する褒美でこの島を貰ったつーんだろ? もう耳にタコが巣を作って産卵してるっつーの!!」
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