9 / 13
黄昏の賢者
しおりを挟む祠の中には二振りの鞘に収められたら刃物と一本の徳利があるだけだった...二振りの刃物と思しき物は鞘の形からして御神刀によくある日本刀の類とは思えない形状をしており、徳利には何か油紙のような物と麻紐らしき物で封印が施されていた。
「これ…どうしたらいいと思う?」
「えっと…どうしよう?」
二人で顔を見合わせるがとりあえず葵が大きな方の刃物を手にとる。
「なにこれ…この大きさの刃物にしては軽い…いえ軽過ぎるわ」
そう言って柄に手をかけると鞘から抜取ろうとするが…
「ん…かたい! どうなってんの? 錆びてんのかしら?」
その様子を見ながら小さな方の刃物を手に取ったアチラも同様に抜取ろうと手をかけるが、
「………ん!! こりゃあ無理だな。ビクともしねぇや」
葵はともかく身長180cmを超えるアチラの腕力でも二振りの刃物はビクともしなかった。
「不思議だけど仕方ないわ!今は時間がないしその徳利は?」
葵に促されてアチラが祠におさめられていた徳利を手にとると……その瞬間、
『…×÷%$~¶®……Pi!! “神酒”の座標変動を確認。侵入者の生体波動スキャンを開始します』
祠の奥から奇妙な声音の言葉が響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「今の何? どこから聞こえたの?」
葵の疑問を受けたアチラは徳利を持ったまま改めて祠の奥に視線を向けたが…
そこには祠の壁があるだけで、改めるまでもなく何もなかった。だが確かにその壁の前の空間あたりから奇妙な音声が確かに聞こえてくる。
「わかんねぇ……俺は物心ついた時から毎日の様にこの社に通ってるけど中を見たのは始めてだし……」
そう答えた時、先程響いたおかしな電子音が再度響き、何もなかった空間に半透明のフクロウが浮かびあがった。
『生体波動を認証しました。ようこそ香坂阿智羅様。私はこの社に保管された遺産を管理している“異次元生存サポートガジェット”です。阿智羅様の五代前の祖先である“香坂奏多”様からは“ミネルヴァ”と呼ばれておりました。お会い出来て光栄です』
「………は?」
急に現れた…おそらく立体映像(どうやって投影してるのかは皆目分からない)が、挨拶をしてきた。正直まったく意味が分からないが、とにかく今は時間がない……
「すまねぇ…正直なんの事だか分からねぇけど、外にとんでもねぇヤツが来てて…多分あんたの事を頼れって意味でうちのジッチャンが社に行けって俺に言ったんだ。急に言われてそっちもなんの事か分からねぇかもしんねぇけど……」
『なるほど、確かに現在、阿智羅様の扶養者である藤原玄信様が所属不明のアバターと交戦されております。戦況は思わしくないようですが……介入致しますか?』
「!!!出来るなら助けてくれ!!今すぐ!!!」
『かしこまりました…対象の座標を確認しました。コレクトスキル“ムーブ”を発動します…』
「えっ?」
ミネルヴァを名乗る奇妙な映像が、意味の分からない言葉を発した瞬間……
背後が淡く発光する。そちらに振り替えった二人の目の前で、ドサッという音と共に…何も無い空間から突然藤原老人が現れた。先程別れたばかりなのに、その姿はホコリにまみれ、その両手には半ばで折れた剣を握りしめて全身を朱に染めている。
「ジッチャン!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なんだ? いったい何が起こった?」
今しがたまで眼前にいた筈の老人…“剣神”藤原玄信が突然消えた。いくら剣の神とまで崇められている達人でも所詮は人間、自分のアバターのスペックを考えれば負けることはありえない…そしてその考証通り老人は追い詰められていたのだが……突如その姿が全てのセンサーに反応すら残さず消えてしまったのだ。
『…………ちっ!』
舌打ちを吐き捨て…自らの独り言めいた自問に改めて苛立ちを覚えた……
巨大なネットワークに知識の源泉を置く“機械仕掛の神”の一柱である自分が、“理解不能”な現象を目の当たりにする……それはとりもなおさず“全能全知の神”を自称する自分達にとって屈辱を自覚させる結果となった。
『まぁいい。これで“ここに何かがある”ってのは確定した。そいつが我らの血脈だってんなら“兄”の偉大さを分からせてやんなきゃな…』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ジッチャン……しっかりしろ!大丈夫かよ!ジッチャン!」
「藤原殿!気を確かに!!」
老人は大声で駆け寄る二人に、もたれかかる様に…その場にくず折れた。息も絶え絶えにアチラと葵を見据え……
「何故ここに…いや此処は…そうか、社の封印は無事開封でき……」
“コフッ……”
瞬間、小さく吐血して意識を失う老人を見て振り替えったアチラはフクロウに大声で問いただす。
「すまねぇ、あんたミネルヴァって言ったかい?なんでもいいから医療設備はねぇか?このままじゃジッチャンが死んじまう!」
「アチラ君!藤原殿が!」
葵に呼ばれ、改めて見ると右脚のふくらはぎから大腿にかけての裂傷が特に酷い。
葵は自分の袖を引きちぎって太腿の根本に巻きつけた。そこには祠の小さい方の刃物も鞘ごと巻きつけられており、鞘を巻いて袖を引絞る事で止血を試みている。
「多分だけど大腿動脈を傷つけてる!このままじゃ……」
葵がそこまで言ったとき……ミネルヴァと名乗った立体映像が
『なるほど…阿智羅様。急を要する案件ですので一つだけ確認を取ります。私はこの藤原老人の命を助ける手段を提供出来ますが……その為にはあなた様に重大な決断……端的に言えば“命”を賭けていただく必要がございます。外敵も迫っているこの際…問答は不要かと思います。疾くお答え下さい…命をかけるか否か?』
「そんなもん考える必要ねぇ!!手段があるならさっさと寄越せよ!!」
『かしこまりました。ですが……その手段は既にあなた様の元にございます。この際、説明は後ほどで構わないでしょう。さあ、その徳利の中身をすぐに飲み干して下さい』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる