マシニングオラクル “AIが神を『学習』した世界”

ajakaty

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火之迦具土神

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『かしこまりました。ですが……その手段は既にあなた様の元にございます。この際、説明は後ほどで構わないでしょう。さあ、その徳利の中身をすぐに飲み干して下さい』

 瞬間的に反応したアチラが、そばに置かれていた徳利をその手に掴んで徳利の麻紐をとこうとする…が、

「待って! アチラ君!そんな得体の知れない物を…」

 葵が止めようとする。しかし、

「悠長に中身を確かめてる暇なんざねえよ!もし!ここでなんもせずにジッチャンが死んだら俺は後悔してもしきれねえ!助かる可能性があるってんならソイツが悪魔の使いでも試してやらぁ!!」

 そう言うが早いか…アチラは麻紐と油紙を即座に取り去って一気に徳利をあおった。

「ぐっ…なんだこりゃあ…こんなまじぃもん始めてだ…くっそ!」

 そう言って、とても言葉では言い表せない表情を作ったアチラは、再度フクロウの方に向きなおり…

「さあ!飲み干したぞ!どうやってジッチャンをた……??!」

 突然言葉を続ける事が出来なくなって…その場にうずくまってしまう。

「アチラ君!しっかりして! あなた?いったい彼に何を飲ませたのよ?」

 その様子を、何も言わずに見つめていたフクロウは、徳利の中身を全て飲み干したアチラに静かに告げた。

『対象「香坂阿智羅」の〈NMナノマシンマテリアル“神酒ソーマ”〉摂取を確認しました…これより“元型アーキタイプ生体バイオニューロン”の構築シークエンスに移行します…ワンショットスキル“提供される狭間の助けテンポラリーワールド”を発動しますが…同行を希望なさいますか?』

「なんだっ……ああ!もう!どこにでも連れて行きなさい!!藤原殿もよ!!」

『かしこまりました…スキルの発動条件を同期します。阿智羅様の情報はに更新させて頂いておりましたが、お二人の情報がございませんので…多少のは御容赦下さい…』

「いったい何な……って…えっ?」

 ミネルヴァから不吉な宣言がなされた瞬間…三人と一羽は幻の様にその場から消えた…

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 瞬間的に感じたのは内臓をシェイクする凄まじい不快感……そして一瞬遮られた視界が明るさを取り戻した時…アチラと藤原老人、そして葵の三人はやしろの中とは全く違う場所に居た……

『スキルの発動を確認しました。これより皆様を、この〈全ての干渉を排除可能な空間〉に保護させて頂きます。この“提供される狭間の助けテンポラリーワールド”は僅かな時間ですが外敵に対して完全な防御を発動致します』

「…………は?」

 さっきからいったい…このフクロウは何を言ってるのか……アチラはうずくまったままだし藤原殿の出血がこのまま続けば…

「って…あれ? 出血が…というか藤原殿?」

『現在、藤原様にはコレクトスキル“限定時空間干渉テンプオーダー”を使用し、ギリギリまで状態変化を抑えこんでおります。しかしこの空間を維持するのも相対時間で10分程度が限界でしょう…』

「もうなにがなんだか分からない……一つだけ聞かせて? 貴方がAI

『いいえ……私はAIではありません。私は…初代香坂奏多様が

「………ちょっと待って。私達は既に多くのテクノロジーを喪失してるけど…ある程度の科学知識はまだ伝えられているわ。でも瞬間移動したり、まして空間を作るなんて…が多すぎてなんと言えばいいのか分かんないけど…とりあえずここは安全なの?」

『それは間違いなく……』

「じゃあもう一つ…アチラ君はいったいどうしたの? 貴方がさっき言ってた命の危険って…」

『それに関しては阿智羅様がお話しましょう…長引いても数分で構築シークエンスは終了する筈ですので……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ……自分はどうなったのだろう。記憶は鮮明なのだが…思考が上手くまとまらない。自分が怪しげな物を飲まされて…途端に身体の自由が利かなくなった事だけは覚えて居るのだが……

『なんだここ?』

 とりあえず周囲を確認すると…自分の周りだけは見える程度に明るいが…少し自分から離れると全く見えない闇だけが広がっている。

『怪しげな物とは人聞きの悪い……君には運命を共にする者として相応の敬意を持って貰いたいものだな』

 なんだ?いったい何処から聞こえた?もう一度周囲を見渡すが…どちらを見ても声の主は発見出来なかった。

『………誰だ?さっきのフクロウか?というかは何処なんだよ?いつの間に社から移動した?ジッチャンはどうなった?』

『ふむ…質問が多いな…まぁ、さもあらんか。まず最初に藤原と申す老人の事だが…安心したまえ、少なくとも君が事態を把握するまでは彼の命は保障しよう。そして私が誰かという質問だが……私の名はカグツチ。君が摂取した“NMナノマシンMマテリアル”にプリインストールされているAI人口知能仮想ヴァーチャル人格パーソナリティーだ』

『……サッパリ意味が分かんねぇ。とりあえず何処にいるんだよ?』

 相変わらずどこから聞こえるのかすら分からない声に対して姿を表す様に要求してみると、

『ふむ、姿が見えねば会話もしにくいか…ならばアバターの設定を先に済ませよう』

 そう答えた。

『と、言っても私の姿を“かたどる”のは君の心なんだがね…今は藤原殿の事もあるし、詳しい事は後まわしで構わない』

『なにブツブツ言ってんだよ?なんかするなら早くしてくれよ!』

『クククッ、巧遅をあなどるべきではないが、今は拙速をたっとぶべきか……まぁいい! さあ、想像したまえ!私の名はカグツチ!生まれ出る為に親神を殺し、生まれながら“神殺し”を宿命付けられた炎を統べる“火之迦具土神ホノカグツチノカミ”だ!汝のおもう神の姿を今ここにあらわしたまえ!さすればその姿をもって契約の証としよう!』
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