53 / 175
2
メグちゃんはたぶん、着実に攻略している。
しおりを挟む「ねーメグ、チーちゃん好きだからずっと居て欲しいぃ~!」
「えー? 私がずっと居たらメルヴィン先生困るでしょう?」
「そんなっ! 困るだなんて! 私だって出来ればずっと居て頂きたいですよ!」
メルヴィンもハント公爵と同じく私達よもり大人だから、気を遣ってくれているのだと思って「も~、メルヴィンさんもお世辞なんていいですよ~」と何気無く肩をぽん、と触れた。
すると驚かせてしまったのか、びくんと背筋を硬直させるメルヴィン。
「わ! わわわわ私は真実しか口にしません! 今の言葉も誠にございまする!」
「めるるんうけるー! 侍じゃーん! たまに壊れたおもちゃみたいになるよね~」
そんな反応をされて私も驚いたのだが、メグがけっこう辛辣なことを言うので思わずクスッと笑ってしまった。
メルヴィンは顔を真っ赤にしながら、思った事をそのまま口にするなとメグを叱っている。
今のこの状況に至るのも、メルヴィンが私を所望していると公爵から聞いたから。
何故私が必要なのか本人に話を聞くと、以前より勉強に向き合ってくれるようになったメグだが、代わりに制御できないらしい。
制御出来ないとはどういう意味か。全く意味が分からないから詳しく聞いても、口を濁すばかり。
とにかく居てくれればその内分かるから、と見ているけれど。今のところいつもの『メグ』なのだが。
「あのねぇ! めるるんすっっっごいダンス下手なの! めっちゃ面白いんだよ!」
「下手ではありません! 得意でないだけです! 言い方に気をつけましょう!」
このブレないノリを見る限りいつものメグだ。
私でさえ五月蝿く言われる喋り方なのに、メグを直すのは中々骨が折れるだろうな。いちいち訂正するメルヴィンも見ていて面白い。先生ってのは大変だなぁ。
「これでもメグさんに内緒で練習しているのですよ!」
「うっそ!」
「ふふん、教え子をエスコート出来るぐらいには私も努力しないとですからね」
「えー、じゃあ踊ってみよーよー」
「へっ!?」
「めるるん頑張って練習したんでしょ? メグだってアッくんといっぱい練習したもん!」
口をぱくぱくさせて「そこまでメグさんが言うなら!? 良いですけど!?」と結局色んな意味で踊らされてるメルヴィン。
しかし賑やかだな。メグが賑やかな人だから自然と周りもあのノリに乗せられてしまうのかな。
(それにしてもアッく……いや、殿下は自分でメグちゃんに教えてるんだ。ちょっと見直したかも)
「ワルツのリズムでいきますよ」
「はーい」
そう言ってスタンバイする二人だが、既に頼りないメルヴィン。もう少ししっかり腕を回して腰を支えてあげないと動きがバラバラになってしまうのではないか。
腰も引けてるし、表情はガチガチだし。
(はっはーん、さては女性に慣れてないなー?)
ぎこちな過ぎるメルヴィンに、なんとか笑いを堪えて壁にもたれ見物している私。
「んもう! めるるんちょう下手っぴ!」
「へ、へへへ下手ではありません! 得意でない、だけでするっ……!」
「なんで侍になるのー!? もーやだぁー! メグまで下手になるー!」
(やばい。メグちゃんがストレート過ぎて笑ってはいけないになっちゃう……っ。しかもメルヴィンさんキャラおかしいし)
私が必死に笑いを堪えていると、リズムがとうに崩れた二人の息はバラバラで、ついには躓いて転んでしまった。
「もー! めるるんのばかっ!」
「あっ、す、すみませっ、んっ……」
「だ、大丈夫!?」
「うん、チーちゃんありがとー。めるるんいつもこうだから慣れちゃった」
何食わぬ顔のメグ。
しかし目の前に広がる光景がかなりヤバいのだが私はどうすれば良いのだろう。
メルヴィンの上に跨っているメグは「ばかばか!」と可愛らしいグーパンチでぽかぽかメルヴィンの胸を殴っている。
そもそも男性の上に跨っている時点でヤバいのだが、メルヴィンもメルヴィンで「あっ、そんなっ、めぐさっ、だめ、です! 人を殴ってはっ……! あぅっ!」と訳の分からない喘ぎ声を出しているではないか。
(は? 何なの? 何やってんの?? これは直視していいやつなのかな? モザイクかけた方がいい?? つか喘ぎ方)
暫く眺めて考えたのだが、きっとこれは“イベント”に違いない。この世界を乙女ゲームに例えるならだけど、でもきっとそうに違いない。
(てかそうじゃないと現実でこんなラッキースケベみたいな人居ないでしょ~)
と言いつつ、目の前の世界も私も皆もちゃんと生きているのだけど。
「はぅっ、ち、ちさと様もっ、見てないでっ! なんとかしてくだ、あっ……!」
めちゃくちゃに耐えた顔で救いの手を求めるメルヴィン。ただ女性が上に乗っているだけなのだが。
(たぶん、この人……童貞なんだろうな……。つか自分で動けよ。あれ、今の言葉はモザイクが必要かもしれない)
全く、と溜息をつき「免疫無さ過ぎです」とすこし意地悪を言って、メグを抱き締め持ち上げる私だった。
0
あなたにおすすめの小説
不能と噂される皇帝の後宮に放り込まれた姫は恩返しをする
矢野りと
恋愛
不能と噂される隣国の皇帝の後宮に、牛100頭と交換で送り込まれた貧乏小国の姫。
『なんでですか!せめて牛150頭と交換してほしかったですー』と叫んでいる。
『フンガァッ』と鼻息荒く女達の戦いの場に勢い込んで来てみれば、そこはまったりパラダイスだった…。
『なんか悪いですわね~♪』と三食昼寝付き生活を満喫する姫は自分の特技を活かして皇帝に恩返しすることに。
不能?な皇帝と勘違い姫の恋の行方はどうなるのか。
※設定はゆるいです。
※たくさん笑ってください♪
※お気に入り登録、感想有り難うございます♪執筆の励みにしております!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる