3 / 26
黒口さんは薄口がお好き
003 真・碓井景虎の動揺
しおりを挟む
黒口実憐。俺が彼女とどういう関係かと言われれば、ぶっちゃけ同じクラスだったこと以外には何もない。だって、その頃の俺は……違う、今の俺は真・碓井景虎。俺の過去の話はどうでもいい。それよりも重要なのは黒口の話だ。
そう、黒口と俺は何の関係もないが、俺は一方的に黒口を知っている。これはクラスの会話でたまたま耳に入ったことだが、黒口は学年一とまでは言われないけど、一定の男子から人気のある子だった。髪型はいつもボブで、どちらかといえばゆるふわな雰囲気が漂い、口調はおっとりと優しい。これだけの要素があれば、そりゃあ誰かしら男子に刺さって……うん、また話が逸れそうだ。
つまるところ、俺は黒口を知っているが、黒口の方が俺を知っているかは全くわからない状況だった。もしも黒口が俺のことなんてアウトオブ眼中で、真・碓井景虎となった俺を見て初めましてとなるならそれでいい。しかし、もしも黒口が俺のことをほんのちょっぴりでも覚えていて、今の俺を見ているのだとすると……めっっっっっちゃ恥ずかしい。
だって今の俺、完全に高校デビューでイキってるやつじゃん! のこのこと地元から逃げて急にいろいろ変えて俺は元からこんな感じでーす、うぇーい!ってやってると思われるじゃん! それが嫌だからここへ入学したのに……
いや、冷静になれ景虎。中学までの俺が最強のステルス兵だったことは覚えているだろう。仮にも男子人気ありありなあちら側だったはずの女子が俺のことを認識しているはずがない。
「景虎くん、だったよな?」
「うわっ!? びっくりしたな、もう!」
「ごめんごめーん。そんな驚かすつもりじゃなかったんだけど~」
いつの間にか俺の席の周りには何人か集まり始めていた。もう今日はこのまま下校していいけど、教室内はまだまだ生徒が留まっている。
「景虎くんさぁ、自己紹介ちょー面白かったよね~」
「長尾景虎って上杉謙信でしょ? 景虎ってかっこいい名前だよね~」
「景虎ってどこ中?」
そして、集まってきたこいつら……全員いきなり名前で呼んでくるんだが!? なんだこの距離間の近さ!? 最初は苗字呼びのジャブから入るだろう!? しかもしれっと女子も混ざってるし!?
「まーまー みんな落ち着いて! 碓井くんが困っちゃってるじゃない」
そんな奴らを一旦静止したのは俺と同じくちょっと明るめの髪色の男子だ。
「碓井くん。オレは佐藤奏多、よろしく」
「佐藤くん……うん、さっきの自己紹介で聞いた。某芸能人と同じ名前って」
「あはは~ でも、碓井くんのインパクトには負けちゃったなー もしかして、毎回ああいう掴みしてる?」
「ま、まぁ、定番だね!」
嘘だ。春休み中必死に考えた。一瞬、影が薄いネタも入れようとしたけど、自虐したら思ったよりも心が痛くなったから止めた。
すると、佐藤はまたも場を仕切り始める。
「そうだ! みんなこれからファミレスでもいかない? せっかくだから親睦会ってことで!」
「おっ、いいね~!」
「この辺近いとこある?」
「やべぇ、今日カネ持ってないわー」
な、なんだと……? まだ出会って2時間ちょっとしか経ってないのに、もうみんなでファミレスだと……? こいつらどういう思考してやがるんだ……?
「碓井くんもどう? この後、予定ある感じ?」
佐藤の天使のようで悪魔な誘いは容赦なく俺にも向けられた。これが今までの俺なら……スルーされていたのだろう。そもそも誘われてもこういう集団に混ざって行けるか怪しかった。だが……今の俺は真・碓井景虎なのだ。このテンションに乗っかっていけば、きっとこのグループへ仲間入りする。佐藤、お前のアシスト使わせて貰――
「碓井くん、少しいいでしょうか?」
騒がしい集団の中、透き通るようね声が俺に届けられる。みんながその声の方向へ注目すると、そこには黒口がいた。でも、注目が集まっても黒口は怯むことはない。
「お話したいことがあるの……二人きりでしたいお話」
俺は開いた口が塞がらなかった。
そう、黒口と俺は何の関係もないが、俺は一方的に黒口を知っている。これはクラスの会話でたまたま耳に入ったことだが、黒口は学年一とまでは言われないけど、一定の男子から人気のある子だった。髪型はいつもボブで、どちらかといえばゆるふわな雰囲気が漂い、口調はおっとりと優しい。これだけの要素があれば、そりゃあ誰かしら男子に刺さって……うん、また話が逸れそうだ。
つまるところ、俺は黒口を知っているが、黒口の方が俺を知っているかは全くわからない状況だった。もしも黒口が俺のことなんてアウトオブ眼中で、真・碓井景虎となった俺を見て初めましてとなるならそれでいい。しかし、もしも黒口が俺のことをほんのちょっぴりでも覚えていて、今の俺を見ているのだとすると……めっっっっっちゃ恥ずかしい。
だって今の俺、完全に高校デビューでイキってるやつじゃん! のこのこと地元から逃げて急にいろいろ変えて俺は元からこんな感じでーす、うぇーい!ってやってると思われるじゃん! それが嫌だからここへ入学したのに……
いや、冷静になれ景虎。中学までの俺が最強のステルス兵だったことは覚えているだろう。仮にも男子人気ありありなあちら側だったはずの女子が俺のことを認識しているはずがない。
「景虎くん、だったよな?」
「うわっ!? びっくりしたな、もう!」
「ごめんごめーん。そんな驚かすつもりじゃなかったんだけど~」
いつの間にか俺の席の周りには何人か集まり始めていた。もう今日はこのまま下校していいけど、教室内はまだまだ生徒が留まっている。
「景虎くんさぁ、自己紹介ちょー面白かったよね~」
「長尾景虎って上杉謙信でしょ? 景虎ってかっこいい名前だよね~」
「景虎ってどこ中?」
そして、集まってきたこいつら……全員いきなり名前で呼んでくるんだが!? なんだこの距離間の近さ!? 最初は苗字呼びのジャブから入るだろう!? しかもしれっと女子も混ざってるし!?
「まーまー みんな落ち着いて! 碓井くんが困っちゃってるじゃない」
そんな奴らを一旦静止したのは俺と同じくちょっと明るめの髪色の男子だ。
「碓井くん。オレは佐藤奏多、よろしく」
「佐藤くん……うん、さっきの自己紹介で聞いた。某芸能人と同じ名前って」
「あはは~ でも、碓井くんのインパクトには負けちゃったなー もしかして、毎回ああいう掴みしてる?」
「ま、まぁ、定番だね!」
嘘だ。春休み中必死に考えた。一瞬、影が薄いネタも入れようとしたけど、自虐したら思ったよりも心が痛くなったから止めた。
すると、佐藤はまたも場を仕切り始める。
「そうだ! みんなこれからファミレスでもいかない? せっかくだから親睦会ってことで!」
「おっ、いいね~!」
「この辺近いとこある?」
「やべぇ、今日カネ持ってないわー」
な、なんだと……? まだ出会って2時間ちょっとしか経ってないのに、もうみんなでファミレスだと……? こいつらどういう思考してやがるんだ……?
「碓井くんもどう? この後、予定ある感じ?」
佐藤の天使のようで悪魔な誘いは容赦なく俺にも向けられた。これが今までの俺なら……スルーされていたのだろう。そもそも誘われてもこういう集団に混ざって行けるか怪しかった。だが……今の俺は真・碓井景虎なのだ。このテンションに乗っかっていけば、きっとこのグループへ仲間入りする。佐藤、お前のアシスト使わせて貰――
「碓井くん、少しいいでしょうか?」
騒がしい集団の中、透き通るようね声が俺に届けられる。みんながその声の方向へ注目すると、そこには黒口がいた。でも、注目が集まっても黒口は怯むことはない。
「お話したいことがあるの……二人きりでしたいお話」
俺は開いた口が塞がらなかった。
0
あなたにおすすめの小説
妹は双子、カノジョである。~双子がダブるってマ!?~
沢鴨ゆうま
恋愛
兄・彼氏・同級生……オレってどれ!?
知らない人はいない程に綺麗な双子の妹と、男女問わず惹かれる美人な弟。
そいつらの兄がこのオレ、藍原サダメ。
そんな中、兄であるオレは海外での仕事で不在な両親の代わりをすることに。
弟妹はめっちゃモテる!
日中、高校生であるオレが中学生である弟妹を守ることは不可能。
心配し過ぎて神経をすり減らし、授業を受けるのもやっとということもよくある。
でも、帰宅すれば三人から愛の剛速球を受け取れる、と思いたいのだけど。
家では疲労が癒されるや否や、三人から愛の応酬、愛・愛・愛――――
オレとしては癒される程度の愛が欲しいんだ。
それなのにアイツらったら……。
シスコン&ブラコンな藍原家を中心に描かれるイチャラブコメディ。
(小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿中)
※この作品は全てフィクションです。それを前提にお読みくださいませ。
© 2019 沢鴨ゆうま All Rights Reserved.
転載、複製、自作発言、webへのアップロードを一切禁止します
タグ: 日常 高校生 血縁 姉妹 兄弟 ほのぼの キス ホームコメディ 学園 同級生 ヤンデレ メンヘラ
シスコン ブラコン 中学生 学校 溺愛
恋人、はじめました。
桜庭かなめ
恋愛
紙透明斗のクラスには、青山氷織という女子生徒がいる。才色兼備な氷織は男子中心にたくさん告白されているが、全て断っている。クールで笑顔を全然見せないことや銀髪であること。「氷織」という名前から『絶対零嬢』と呼ぶ人も。
明斗は半年ほど前に一目惚れしてから、氷織に恋心を抱き続けている。しかし、フラれるかもしれないと恐れ、告白できずにいた。
ある春の日の放課後。ゴミを散らしてしまう氷織を見つけ、明斗は彼女のことを助ける。その際、明斗は勇気を出して氷織に告白する。
「これまでの告白とは違い、胸がほんのり温かくなりました。好意からかは分かりませんが。断る気にはなれません」
「……それなら、俺とお試しで付き合ってみるのはどうだろう?」
明斗からのそんな提案を氷織が受け入れ、2人のお試しの恋人関係が始まった。
一緒にお昼ご飯を食べたり、放課後デートしたり、氷織が明斗のバイト先に来たり、お互いの家に行ったり。そんな日々を重ねるうちに、距離が縮み、氷織の表情も少しずつ豊かになっていく。告白、そして、お試しの恋人関係から始まる甘くて爽やかな学園青春ラブコメディ!
※夏休み小話編2が完結しました!(2025.10.16)
※小説家になろう(N6867GW)、カクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想などお待ちしています。
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
SSS級の絶世の超絶美少女達がやたらと俺にだけ見え見えな好意を寄せてくる件について。〜絶対に俺を攻略したいSSS級の美少女たちの攻防戦〜
沢田美
恋愛
「ごめんね、八杉くん」
中学三年の夏祭り。一途な初恋は、花火と共に儚く散った。
それ以来、八杉裕一(やすぎ・ゆういち)は誓った。「高校では恋愛なんて面倒なものとは無縁の、平穏なオタク生活を送る」と。
だが、入学した紫水高校には《楽園の世代》と呼ばれる四人のSSS級美少女――通称《四皇》が君臨していた。
• 距離感バグり気味の金髪幼馴染・神行胱。
• 圧倒的カリスマで「恋の沼」に突き落とす銀髪美少女・銀咲明日香。
• 無自覚に男たちの初恋を奪う、おっとりした「女神」・足立模。
• オタクにも優しい一万年に一人の最高ギャル・川瀬優里。
恋愛から距離を置きたい裕一の願いも虚しく、彼女たちはなぜか彼にだけ、見え見えな好意を寄せ始める。
教室での「あーん」に、放課後のアニメイトでの遭遇、さらには女神からの「一緒にホラー漫画を買いに行かない?」というお誘いまで。
「俺の身にもなれ! 荷が重すぎるんだよ!」
鋼の意志でスルーしようとする裕一だが、彼女たちの純粋で猛烈なアプローチは止まらない。
恋愛拒否気味な少年と、彼を絶対に攻略したい最強美少女たちの、ちょっと面倒で、でも最高に心地よい「激推し」ラブコメ、開幕!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた
夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。
数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。
トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。
俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる