裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

ちゃんきぃ

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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

俺とお前のdistance

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 渡された振り子を見つめながら俺は考える。

 本当に催眠術が成功するなんて思ってない。思ってないけど、仮に催眠できたとして俺は今一番聞きたいと思っていた中楚自身のことを聞き出すべきなんだろうかと。

 ここに来るまでは文化祭に展示されていた絵を見たことで色々聞こうと思っていた。だけど、今日会った中楚は俺がその絵から感じた不安を忘れさせてしまうくらいにはいつも通りにバカをやっている。

 つまり、今の中楚は俺が不安になる必要なんてないくらいには良い生活を送れていることになる。
 
 そうであるならば……俺は余計なことを聞かない方がいいのかもしれない。中楚との付き合いがこれから続いても続かなくても、中楚の今が楽しいのであればそのままにしておく方が絶対にいい。

「聞きたいのはアタシのスリーサイズ? それとも体はどこから洗うか? ま、まさか、アタシの初めての――」
「聞かないよ」
「え? それ以外に何か……」
「何も聞かない。仮に聞きたいことがあったとしても催眠で無理やり聞くようなことはしない」

 俺がそう言うと、中楚は驚いたような表情を見せる。言ってることは人として普通のことだと思うんだが。

「そ、そう……なんかそれだとさっきまで催眠で無理やり脱がようとしていたアタシが悪いことしてたみたいになるんだけど」
「まぁ、本当に成功してたら悪いことになってた可能性はあるが」
「……わかったわ。これからはアタシも正々堂々と脱がせるよう努力する」

 もしもこれで俺が余計なことを聞いていれば中楚に見限られてこの状況から解放される未来もあったのだろうか。
 でも、それで中楚が嫌な思いをして後味の悪い別れ方になるのは俺も嫌だ。飽きられるなら俺も正々堂々と向かっていくべきだと思う。

「じゃあ、今日はもう帰ってもいいか? 他にやることもないだろうし」
「……ダメ」
「えっ?」
「今日は……完全下校時刻前まで待ってて欲しい。その……別に何しててもいいから一緒にここで」

 中楚はなぜか目を逸らしながらそう言う。帰らずに待てと言われたのは初めてのことだ。急にいつもと違うことをするのは……何か企んでいるに違いない。

「……わかった。今からだと後1時間ちょっとか」

 でも、断る理由がないので俺はそれを了承した。



 我が高校の部活動を含めた完全下校時刻が夏季は19時、冬季は日が暮れるの早くなることから18時になっていて、10月現在は冬季の時間が適用されている。
 美術準備室へ来る前までの俺は帰宅部だったから早ければ15時過ぎに帰っていたが、最近は中楚に付き合って17時くらいまでよくわからないことをしていることもある。

 そして、今は17時半を過ぎた頃。準備室の外から……つまりは美術室の方から少しの話声と何かを移動させる音が聞こえてきた。たぶん今日の美術部はひと段落して片付けの時間に入っているのだろう。

「…………」
「…………」

 ただ、そんな美術部側からの音が聞こえてくるのは珍しく準備室側が静かだったせいでもある。俺にこの時間帯まで残るように頼んだ後の中楚は俺に喋りかけることなく、一人集中しながら何か作業をしていた。
 それが美術部の活動なのか、それとも画家の方で何かあるのかはわからないが、邪魔をしては悪いので俺はスマホを見ながら暫く黙っていることになった。

「清莉奈ちゃん、今大丈夫?」

 その1時間以上の沈黙を破ってくれたのは涼花ちゃんのノックと声だった。

「うん。入ってきてもいい」
「失礼しまーす。あっ、やっぱり三雲クンまだ帰ってなかったんだ」
「ど、どうも……」

 中楚と二人きりでいるところを見られるのは何だか恥ずかしいので、俺は少し口ごもってしまう。それに対して涼花ちゃんは笑顔を向けてくれるけど、その体はすぐに中楚の方へ向かって行った。

「美術室の方はみんなもう帰るから今日も後はお願いね、清莉奈ちゃん」
「わかった。お……お疲れ様、リョウカ」
「お疲れ様でしたっ! 三雲クンもお疲れ様っ! また明日ね」

 涼花ちゃんはそう言いながら中楚に鍵を渡して準備室を後にする。また沈黙が流れてしまう前に俺は何か言おうと考えて、鍵に注目した。

「中楚が毎回鍵閉めしてたのか。じゃあ、毎回帰るのも一番最後に……」
「そう。アタシはみんな出ていった後に帰ってるの。とりあえず美術室は閉めて、職員室へ行きましょう」

 何をするのか全く予想できない俺は言われるがまま中楚へ付いて行く。その姿は何だか新鮮だった。中楚と会うのは準備室だけで、そこにいる間も中楚が部屋から出たところ一度も見たことがなかった。
 そんな中楚が準備室から出て、今しがた俺と一緒に廊下を歩いているのは普通のことなのに珍しいことのように感じる。

 職員室で美術室の鍵を返却した中楚は代わりにどこかの鍵を取ってきて、再び俺に付いて来るように言う。
 外は薄暗くなって校内からもほとんど声が聞こえなくなっている中、中楚が連れて来たのは……見慣れた2年生の教室だった。
 いや、正確には俺のクラスではないので、少しばかり空気は違うけれど、それでも平凡な教室であることに変わりはない。

「中楚は1組だったのか。もしかして、忘れ物でもした?」
「……ううん。してない」
「じゃあ、なんで教室に? すぐに閉め出されることはないだろうけど、あとちょっとで完全下校時刻になるから早く――」
「久しぶりに来たの」
「えっ? 久しぶりって……」
「この教室で言えば9ヶ月とちょっとぶり。1年の頃も合わせると約1年9ヶ月ぶりに教室へ来たわ」
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