産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

文字の大きさ
185 / 942
1年生2学期

10月5日(火)晴れ 岸本路子との親交その4

しおりを挟む
 本来ならミーティングがある火曜日。昨日から文化祭に向けた準備が始まっており、今日も内装に使う飾りやパネルの作成を主にやっていく。結局、出し物としては森本先輩が言っていた作品展示とおすすめ本の紹介、短歌の制作コーナーになった。

 そんな作業中に森本先輩は用紙を配り始める。今日は長らく考える時間を設けられていた短歌を提出する日でもあった。

「ペンネームは創作物と別にしても構わないよー まー、めんどくさいから同じ名前使う人ばっかりだけどー」

 僕としては新しく考えるアイデアがないので、「ダイ・アーリー」を使うしかない。短歌に並ぶ名前として見ると、やっぱりもっといいペンネームを考えるべきだった。

「これでお願いします。ところで、短歌の展示ってどうやるんですか?」

 僕は提出用紙を森本先輩に渡しながらそう聞く。

「ちょっと大きめの紙に印刷してボードに貼り付けるよー 本当は手書きでそれっぽく書いた方がいい感じになるんだろうけど……ウーブ君は習字できたりー?」

「す、すみません。授業でやったくらいで入賞したことありません」

「一緒だから謝らないでー ちょっと前の先輩方は達筆な人がいて書いてたらしいんだけど、こればっかりはしょうがないよねー」

 森本先輩はお手上げの身振りをする。手書きの短歌や詩を展示されているのはテレビとかで見たことがあるけど、確かにそっちの方が見映えが良い。うちの高校に書道部があれば……と思うのは他力本願かもしれない。

「森本さん、わたしもこれでお願いします」

「はーい。岸本ちゃんはどんな短歌を詠んだのかなー?」

「そ、そんな今見られるのは……」

「フフフ。こればっかりは部長特権だからなー まぁ、部員の人数が限られるから最終的には誰がどれを書いたのかは何となくわかっちゃうんだけどねー」

 恥ずかしがる岸本さんに森本先輩は笑いながらそう言う。僕は今のところ岸本さん……冬雷先生しか知らないけど、他の部員の作品も察せられるのだろうか。いつも関わる先輩方なら何となくわかりそうな気がするけど、あまり関わらない先輩の作品が混ざるとどうなるかわからない。

「産賀くん……」

 そんなことを考えながら完全に作業の手を止めてしまった僕に岸本さんは話しかける。その表情は尚も恥ずかしそうだった。

「どうしたの?」

「わたし、産賀くんにペンネームを教えたことを少し後悔しているわ……短歌のことすっかり忘れてたから」

「そ、そんなに? 小説と短歌でそんなに違いは……」

「あ、あるの。その……上手く言えないけれど、感覚的に」

 岸本さんはそう言うけれど、僕はどちらも同じだと思った。もちろん、自分の作品を人に見られることには一定の恥ずかしさはあるけど、創作したものでは違いは……あるか。今回の二つは似たジャンルだけど、たとえば僕も小説と絵で比べたらペンネームで本名を隠していても絵はそんなに見てほしくない。

「じゃあ、なるべく展示の名前はなるべく見ないように……」

「そ、そこまではしなくていいわ。作品はちゃんと見て欲しいし……」

 ただ、岸本さんの感覚はそれともまた違うようだ。まさしく上手く言えない感覚なのかもしれない。

 そんなこんなで短歌の提出は無事に終わって、後は展示場の準備を残すだけになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

処理中です...