SUN×SUN!

楠こずえ

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第2話:魔法相談所開設(その1)

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「ふぁああ~」

朝、目を覚ます太陽。

時計を見ると、そろそろ学校へ行く準備を始めないと
やばい時間だ。
まだ布団で寝ていたい気持ちをグッと我慢して
起き上がる。

「あー眠い・・・。
 昨日の夜、遅くまで起きていたのが悪かったかな・・・」

と、その時だ。
「ブブブブ!」と携帯が鳴る。
どうやらメールが届いたようだ。

「誰だ・・こんな朝早く・・・・」

メールの送信者は、いとこの大地からだった。

「大地!?」

大地からメールが来ることは
めったにないことゆえに、
驚く太陽。

一気に目が覚め、内容を読んでみると・・・

『なんか変なことに
足をつっこもうとしていると聞いたぞ。
悪いことは言わない。
やめておけ』

これを読んだ太陽はイラッとして、
「そんなこと、おまえに言われたくねーよ!!」
そう叫ぶと、携帯をベッドに投げつけた。

「チチチチ・・・・・」

その日の朝は、5月のさわやかな朝だった。
 空は青く、木々の新緑も実にまぶしくて、
 何か良いことが起こりそうな、そんな気分になってくるお天気だ。

が、ひまわりの心はドヨンと重かった。
重い足をひきずりながら校門をくぐっていく。

「はあ・・・、今日の朝の占いの結果、
『予期せぬトラブルに見舞われる』でした・・・。
当たって欲しくないですけど
何か嫌なことが起こりそうな予感がします・・・」

トボトボと教室に向って歩いていると、
「あ!夏野さん!」
と呼び止められた瞬間、ひまわりはギクッと飛び上がった。

 振り返るとそこにはニコニコ笑顔の太陽がいた。

「おはよう♪」

太陽のさわやかスマイルに周りの女の子達は
キャーキャー騒いでいるが、
ひまわりは知っている。
この笑顔が偽者の笑顔だということを。

「な・・・なんでしょうか・・・?」

ビクビクしているひまわりに、
太陽はキラキラ笑顔を振りまきながら、
「今日の放課後、ヒマかな?」
と聞いてくる。

周りにいた女子たちは
「どういうことよ!
なんであんな地味な子に
太陽は声をかけているわけ!?」
「信じられない!」
と、いら立ちをあらわにしているが、
もちろんこれはデートのお誘いではない。
魔法相談所に関する件で、
ひまわりに声をかけてきているだけだ。

ひまわりは、
「ほ・・・放課後は、
早く家に帰りたいんですけど・・・」
とボソッとつぶやくと、
「ヒマだよね?」
と、太陽が笑顔ながらも怖い顔をして
ゴリ押ししてきたので、
「ハイ!ヒマです!」
と答えてしまった。

『私、夏野ひまわりは
同じ学年の桐島太陽くんに
目をつけられてしまいました。

桐島くんの母方の一族「雨夜家」は、
大昔から呪術や占いを得意とし、
現在でも占術の世界では広くその名を知らしめています。

占いの的中率の高さを聞きつけ、
全国から悩みを相談に来る人も多く、
予約が数ヶ月待ちも当たり前だそうです。

雨夜家の当主は代々不思議な力を受け継ぎ、
桐島くんの従兄弟で次期当主でもある雨夜大地さんは
ここ数代の中では珍しいほど強い魔力を持っている人物だとか。

そんな魔術師一族の一員なのに
当の桐島くんはほとんど魔力が無いせいか、
大地さんにライバル心むき出しで、
なんとか自分も魔力を高め、
将来的には一族の仕事に従事したいということで、
訓練を兼ねて「魔法相談所」を開くことにしたのです。

が、 魔力の無い桐島くんゆえに
開設する条件として提示されたのが、
「魔法を使える助手を連れてくる」
ということでした。

しかし、この世の中、
魔法を使える人なんてめったにいないものでして、
桐島くんが探しに探して、たまたま見つけ出して来たのが、
私、夏野ひまわりだったのです・・・』

「じゃ、放課後♪」
と、無理やり用件だけ伝えると、
さっさと太陽は去っていった。

「はあ・・」と重くため息をついたひまわりの前に、
「夏野さん!!」
と女の子達がドッと押し寄せてきた。

何事かとびびるひまわりを
女の子達はグルッと輪になって囲ってにらみつける。
そして怒鳴りつけた。
「いったい太陽とどういう関係なの!?」
「まさか付き合ってるの!?放課後会うってどういうことなの!!」

ひまわりは突然の出来事に見舞われ、
心の中で「ひ~っ!?」と叫んだ。
どうやら女の子達は、
ひまわりと太陽が付き合っていると思っているようだ。

「い、いえっ!
 付き合ってなんかいません!!」
 全力で否定するひまわり。

だが、女の子達はまだ疑っているようで、
「じゃあ、どんな関係なのよ!!」
と聞いてくるが、まさかここで
『魔法相談所の開設・運営の手伝い』とは、
さすがに言えるはずがない。

なので、
「た・・・ただの・・・知り合いです・・・」
そう言うしかなかった。

すると女の子達は、ひまわりにバッと一枚の用紙をつきつけた。
それには『桐島太陽 ファンクラブ規則』と書いてある。

「太陽にはファンクラブがあって、抜け駆けは禁止だから!」
「変な気でも起こそうそしたら、絶対許さないからね!」
「近づきたかったら、ファンクラブに入りなさいよ!」

女の子達の猛烈な勢いに圧倒されて、
ひまわりは半泣きになりながらガクガク震えた。

『やっぱり占いの通り、予期せぬトラブルに見舞われました・・・』
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