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そんな事言われても…。

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《 ああ、お待ちなさい!あなたに新たな生を与えようと、わたくしはここへ来たのです! 》


うわー、来たこのラノベ特有の、異世界に貴方を召喚的な、転生的なコレ。いや、召喚ならこんな精神と時の部屋みたいな、どこまでも白い空間には来ないか。私はその真っ白な空間に、あぐらをかいて座り込んでいる。

うーん、でも召喚いうても漫画の世界でしか見た事ないから、どういう場所に召喚されるかはわからないもんな。
コレはコレである意味合ってるのかもしれないね。

ふむぅと顎に髭はないけど、撫でてみた。


そして美しい女性に姿を変えたピンクの光は、背後に後光を携え、エフェクトなそれに付け加えられるのは、パアアアア…! 的な光のアレやそれや。この辺は各自イメージしていただきたいかなと。ハイ。よろしくお願いします。

そしてその女神様ときたら、ボンキュ、ボンのそりゃあまぁ、女子が見ても見惚れるようなナイスバデー。衣装はアラビアンな感じで、ハートマークの金色の刺繍が赤い布地に刺繍されていて、しかもかなりの爆乳なもんだから、個人的に

~おっぱいミサイルでそう…~

とか、ウヘヘウヒヒとかニヤニヤ考えていたりもするのですよ(笑) だって、胸なんかJカップくらいありそうなんですよ?その胸を赤い布に金色の糸がハートマークに刺繍しててさ。コレほんとに出るよミサイル。

そこでニヤついてる私に、女神様が

《聞いていますか⁈》

と、ややキレ気味に私の顔を覗き込んできました。おお、さすが女神様。お顔もまぁ麗っしゃああ!♡

「え、あ、ハア。すみません、聞いてませんでした。なんでしたっけ?」

へらりと返す私に、はぁ~…と盛大なため息をついた女神様。

《佐藤リコさん。貴方は亡くなりました。そして今ここにこうして私の世界に引き寄せる事になった経緯をお伝え致します》

「ハイ、お願いします」

女神様の言う事にゃ。とりあえず私は普段の不摂生が祟って死んだ。のだけれども、目の前の女神様…

《愛の女神 ティファーリエ様》

ーどこぞの湯沸かし器みたいな御名前でー

とかふと頭をよぎったけど、ゴホホンと咳払いで誤魔化した。

とりあえず、その愛の女神ティファーリエ様が、私の人生を初めから終わりまで見た上で、私が恋愛と言うものをほぼなにもしてこなかったことにその豊満な爆乳…いや、心とやらを痛め、私にも誰かを愛し、愛される喜びを知ってほしいがために、今ここにいるこの女神様の空間に導いたのだと。


ほほう、なんというありがた迷惑(笑)


私が恋愛に興味ないことで、別に誰にも迷惑かけてはいないだろうに。てか、私が結婚しないと世界が滅ぶ位まで言われたら、まだなんとか考えなくもないけれど。

と、うんざりした顔で、へーへーほーほーフーンな感じで聞いていたら。

《と言うわけで。貴方にはわたくしの作った、乙女ゲームのヒロインとして新たな生を贈るとともに、恋愛を楽しんでいただく事とします。これは決定なので拒否権はありません。》



「なんですとう⁈」




異議あり!と例のゲームのシーンのように、机を叩くイメージで、私は正座状態だったため、まあ少々変ではあるがバン!と膝元の地面?を叩いてみた。

《異議は認めません。リコさん、貴方ったら自分が恋愛しなくても誰にも迷惑かけていないと思っているのでしょう⁈ごらんなさい、コレが貴方の主張です!》

バッ!と女神様が己の頭上を指指すようにすると、そこにはいきなり生前の自分の姿が映画のスクリーンのように映し出された。



ーおお!便利!じゃなくて。なんじゃコリャ?ー



居間に寝転がって漫画読んでる私に、オカンが呆れたような顔をして話しかけているシーンが映されていて。

『ねぇリコ、あんたももう34歳だよ?彼氏はいないの?休みのたんびに家でゴロゴロ漫画読んで漫画描いてゲームして。友達とどこか出掛けるとかしないと、出会いもないでしょ?』

『出掛けたからって彼氏ができるわけないやん。欲しくもないもの買っても無駄でしょ?そういうもんだよ~』

『そうじゃなくて…お母さんは心配なんだよ、このまま一人で生きていけるわけないでしょ?ちゃんと結婚して子供作って…私も孫を抱きたいし…』


『私はオカンの孫を作るためにいるわけじゃないし。そんなにアカンボ欲しいなら、オカンが産めばいいじゃん。10年位に読んだ雑誌には、63歳で23人目の子供を産んだ人が居るんだってよ?オカンもまだまだイケるよ!頑張れ!』

カラカラ笑う自分に、母親は心底ガッカリした顔で。

『それは孫じゃないでしょー⁈』


…と、ここまで映された後で、画像が止まる。

《 親不孝ものーーーーーーっ!! 》

止まった画像の前でヨヨと泣き崩れる女神様。


《貴方を産んでくれた母親に対してなんですかこの仕打ち!しかも自分から一切努力しないで彼氏すら作らないなんて! 年齢イコール彼氏なしなんて、なんて寂しい人生送ってるの!!》



ー…なんか、姿を変えたオカンがおるような…ー



私はやはり、ヒトの人生なんだからどう生きようが自己責任だし、自分が納得して満足してるならそれでええやん…と、この至極めんどくさい女神様の寸劇?を見ながら、やはり




あーハイハイ。

という気持ちでため息をついたのであった。



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