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なんか始まった……。

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 そして、あっちゅーまに入学式は終わった事になってました。 まあゲーム内だからね。そのへんはすっ飛ばしても現実世界ではないので問題ないでしょう。


私はサブキャラのキリーちゃんに、ゲームのシステムらしきものを教えてもらっていた。




いわゆる、学園生活は時間割があって、そこでスキルアップする為の授業を受ける。そこでスキルアップした項目によって、攻略対象の好印象の変化がある。早い話が、攻略したいキャラクターに合わせての授業が早めの攻略につながると言うもの。例えば、騎士科のキャラクターを攻略したいなら、体力を上げる為に運動(女子なのでダンスを多めに習う)とか、歴史を勉強して過去の英雄の事を知る事により、騎士科のキャラクターと話が合い、攻略しやすくなるというもの。






私の記憶の情報からのシュミレーションゲーム…。





なるほど、『真実愛物語』のゲームシステムってことですね。この学校は寄宿生活なので、あのゲームみたいに学校帰りに一緒に帰る事で好感度を上げるってのはない代わりに、休み時間や放課後に攻略対象が行きそうな場所に出向いて、好感度を上げていくってことか。


ほうほうとゲームシステムを把握したところで、学園のカフェテラスで説明してくれていたキリーが。






「というわけで!どちらが早く彼氏を作れるか、勝負ね!」


 


と、可愛らしくウインクしながら言ってのけました。





「はい?」



「んふーん!  とりあえず、期限は2か月ね!」




ああ、そうでしたね。この世界は恋愛ゲームでしたね。キリーとの仲良しな会話ですっかり忘れていました。2か月以内に、まずは1人目の男子を攻略するゲームの中にいたのでした。


明後日な方向に心が向く私とは対照的に、リコーリアはとてもいい笑顔でキリーにこうお返事しました。




「その勝負、受けた!」



その後はリコーリアとキリーは、どんな相手がいいのかとか、好みの相手がとか、キャッキャウフフしてました。

え?私は干渉出来ませんでしたの。なにせチュートリアル内でしたので、その強制イベントでは私の意志はリコーリアには反映されませんでしたとさ。




《さて、ではチュートリアルも終わったところで、それぞれの攻略対象に会いに行きますよ!》




女神様の溢れ出るワクワクが、念話からも伝わってきます。とりあえず、誰を一番に攻略するかは置いといて、女神様と決めた攻略対象と出逢いをしてかねばなりません。先ずは相手の事をヒロインが認識する事から始めなければならないので、とりあえず探しに行くことに。




入学式当日なので、ある程度の学園内での説明を聞いたら、初めの1日は自由行動らしく、他の生徒達も学園内の散策に出ているようです。移動教室はこの世界にもあるようだし、場所は覚えておかないとだもんね。



私からは画面が見えないけど、とりあえずは女神様がプレイする通りに動いていく。学園と寄宿舎とを繋ぐ所に、大きな中庭がある。何人かの生徒が、憩いの場として訪れているようだ。


確かにここは色々と落ち着けそうだ。さっき教室に香ってきた花の香りはここのかと理解した。色とりどりの花に、鮮やかな新緑の樹々はよく手入れされていて、とても美しい。広々としてるから、デートとかにも使われてるらしい。


少し歩くと、人だかりが。


女の子の黄色い声がほんのり聞こえてくる。何やら人気のある生徒がいるらしい。

人だかりに少し近づいた所で、私の動きが制限された。 つまり、目の前の人だかりの中心には攻略対象がいるという事。



すう、っと、一瞬女の子達の人だかりに隙間ができた。



そこから見えたのは。





シャインスカイ王国の第一王子、サクラ・シャインスカイだった。



淡いミルクティー色の髪は、陽に透けるとプラチナに見え、ローズピンクの瞳は宝石のようだ。

優雅なその物腰と笑顔は、まさにザ・王子様。取り巻く女生徒達を優しく丁寧にあしらいながら、歩みを進めていく。



そこで私は、王子に見惚れてしまっていて、他の女の子達の動きに合わせられずに押し出されるようにして転倒してしまった。



「きゃっ!!」


…きゃっ…? 私のままなら絶対出さない悲鳴だ。




「大丈夫かい?お嬢さん」

「…え?」



すっと目の前に差し出された手に、顔を上げるとそこには。

優しい笑顔のサクラ王子が、私に向かって手を差し伸べていた。



「あっ…は、はい。ありがとうございます」


その手に自分の手を重ねた瞬間。




~~~~チャララ~~♫




ん?なにか音楽が?

すると、私と私の周りの時間が止まり、空中にはあの女神様の世界で見たデカイスクリーンが。



《このゲームのオープニングです!せっかくなので一緒に観ましょう!》





ええ…?

嫌な予感しかしないんだけど。


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