愛の女神様の作った、雑な乙女ゲームのヒロインにされてしまいました…!

ふじわら臣都

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もう、やめましょう。

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サクラ王子とその後、それぞれ教室に戻る前に話をした。何で一目惚れなんて言い出したのかを聞いたのだった。


サクラ王子的には、面倒な周りからの彼女探せー、嫁探せー、から逃れる為の要素もあったようだ。

もともと恋愛にはさほど興味はなく、周りからの催促が嫌で、わざと社交界では奇行を演じていたそうで。王子様なりに、一応結婚を考えるなら好きになれそうな相手にしたい気持ちはあるにはあるとのことで。


それで、当面のストッパーとしてリコーリアを利用する事にしたのだと。


オブラートに包め、馬鹿野郎。


心の中で悪態をつきながら、まあそれでも友情エンドとしても悪い方向にはいかなかろうと、とりあえず申し出を了承する事にしたのだった。


そして。


私はあらためて。



女神様にこの回が終わったら話そうと思ったのだった。



なぜなら、この物語は「私が」プレイしている限り。
女神様が望む限り。


終わりがないからなのだ。

それを、今回。
自分があらためて女神様のゲームをプレイすることによって、理解した事。

女神様の作ったゲームが悪いのではない。コレはコレでとても楽しめると思う。けれどだ。しかしなのだ。

私はわりと初めから言っているのだ。


この物語は本末転倒だと。それは、私と女神様の気持ちの違い。趣向の違い。目的の違い。なのだ。

他人の思い込みだけで造られた世界で、勝手に気持ちを作られる気味の悪さ。望まぬ気持ちを押しつけられる苦痛。したくない事を強要されているという、屈辱。


女神様、貴女は悪くはない。
少なくとも、私の為に貴女の気持ちを込めていた事は理解している。

ただ、


ただ。



…ただ、どうしても。



世の中には自分以外の誰かを愛せないという考え方もあるのだ。

他人を愛せないけど、自分との意思疎通の出来ない動物なら愛せる。とか、人ではなく、動物だけでなく無機物だとかそういった。


いわゆる、自分だけの『萌え』しか愛せない人もいるのだ。

私がソレだ。


こうしてあらためて、恋愛を強要される事でようやく形にできたと思う。

今プレイしている、私の物語は「友情エンド」で終わるだろう。そうしたら。


女神様と話そう、キチンと。


相手は女神様だ。わかってくれるだろう。

まあ、色々ゴネるかもしれないが、私がここまで付き合ってきた女神様は、面倒くさいけども、ちゃんと話は聞いてくれる、可愛い女神様ではあるから。


もういいだろう。
もう、いいよね。
私もキチンと頑張ったよ。
女神様は頑張ってくれたけど、私の根本はやはり変わらなかった。無理矢理ときめきをねじ込められても、自分の意思で物語を進めても、恋愛と言うものにまるで興味は湧かなかった。自分の中には当てはまらなかった。仕方のない事だ。


それをわかってもらおう。
強引な女神様ではあるけれど、ここまで付き合ってきて、あの女神様は決して私に対して悪さをしようしとしたわけではないんだ。


ここまで付き合ってきた私がよくわかっている。


だから、


だから。




さあ、兎にも角にも続けようか。
この王子様との恋愛はないけれども、一応はゲームクリアを目指して。女神様とまた話す為に。


そしてそれから。


王子様との学園でのハチャメチャ騒動で、女神様は少しほんわかするスチルを2枚手に入れて、今回のサクラ王子様との物語を 友情エンド で締めくくった。


あの後、サクラ王子とは偽りの恋人同士と言う事でそれらしく仲良くは振る舞っていたものの、恋愛と言う感情には繋がらず、王子様はまだまだコレからも続く学園生活での恋愛ストッパーになってもらうぞ、よろしくな?リコーリア。と。


ー スチル「これからも、よろしく頼むな?」 ー
ー イベント「王子様、早く恋人を見つけて下さい!」ー 終了しました。


わああん、勘弁してーと泣くリコーリアの後ろで、至極楽しそうに笑うサクラ王子がラストのスチルとなり、私は湯沸かし女神の元へと戻った。


『今回は残念でしたね、リコさん!ですがわたくしがプレイするよりもずっと、予想だにしていなかったスチルを手に入れることができて、本当に嬉しいです!ささ、少し休憩したら、今度こそサクラ王子との恋を成就させましょうね!』

うきうきと友情エンドでも素敵スチルを見ることが出来て、女神様はご満悦のようだ。




さあ、話さねば。もう、やめようと。


「あのね、女神様。」
『はい、何ですか?』

「もうやめにしましょう。」

『…は?』

ちょっと何言ってるかわかりません。そんなポカン顔で、女神様は聞き返す。

「…ちゃんと女神様とお話がしたいです。座ってもらっていいですか?」

とはいっても、いつもの精神と時の部屋なので座布団やテーブルがある訳じゃないのだけれども。とにかく、2人でその場に座った。




『あの、それで…やめにするというのは、一体…?』


「……。」

私はひとつ息を吐いて、顔を上げた。


「もう、私はこのゲームを続けたくないんです。」
『…え?』


「ゲーム自体は面白いと思いますよ?ただ、それはあくまでもプレイするだけなら、なんです。けどこのゲームは私に恋愛させる為のもの。これまでずっとゲームの中にいて、キャラクターと色々とイベントこなして、でも私はやはり誰かと恋愛するのは無理だと判断しました。」

まあ、本当の自分と同じ次元の存在に居ない相手との恋愛が、恋愛と呼べるかっつったら、それは違うよね。2次元キャラを愛する気持ちは、恋愛に似てるけどやっぱり違う。

推しだ。
萌えだ。


ただ、それだけ。

恋愛として、伴侶として考えるには難しすぎる。
このゲームをクリアして、今はサクラ王子しか残っていないけれど、この彼と恋愛できるのは、私が作り上げた二次元キャラとしてのリコーリアであって、決して私、佐藤リコではないのだ。


だって、ゲームだもの。


どんなに感情を心に無理やり捻じ込まれていたとしても、私の本質の魂が、それを許さない。



私は、
誰かと、
恋愛したくないのだ。



それどころか、家族ですら自分の縄張りに入って欲しくない、とすら思っていたのだ。家族が無理なら、他人ならもっとダメに決まっている。



「私は確かに、生前。誰とも恋をしませんでした。誰かを愛したいとも、誰かに愛されたいとも思いませんでした。でもそれは、やはり私の本質なんです。私は一人で生きて行くのが幸せで、そこに伴侶なんか要らなかったと、今回、女神様が私の為と考えてくださって作ってくれたゲームをプレイする事になりましたが、更にその気持ちを実感しました。」


『そんな、そんなのまだ、わからないではありませんか!!』


「いいえ、今回のゲームを自分でもプレイしてみて理解しました。私には自分以外の他人を、例え家族であっても愛せないという事に。私のいる空間に、家族ですらも存在してほしくないと思う程に、私は一人が好きで、気楽で、他人とのコミュニケーションは取れていたとしても、テレビのように。

…好きな時だけ画面を見て楽しんで、そうでなければスイッチを切ってなかった事に出来る。

私の望む人との関係は、コレなのだと実感しました。」



『…リコさん…ですが…。』

「ごめんなさい、女神様。貴方が一個人である私なんかの為に、心を裂いてこのゲームを作ってくれた事には感謝しています。だって、私の為に作ってくれたんです。少しでもと。その気持ちに応えられなかったのは、やはり私の我儘で。…けれど、ここまで一緒に過ごしてきた女神様だからこそ、わかって欲しいんです。私がどうしても。


どうしても、恋愛には不向きで。
自分以外の他人を愛せなくて。

だから、生前。



結婚どころか、彼氏も作らなかったのだと。

愛の女神様だからこそ、私のこの告白は辛いと思います。でも、お願いします。わかってください。



私は、自分以外の他人を愛せないんです。

どうしても、どうしても。


…ごめんなさい。」


私の真剣な顔に、これまで割と強引に事を進めてきた女神様が俯いた。


『…私のしてきた事は、全て…リコさんには迷惑でしかなかった、ということですか…?』


まあ、ぶっちゃけはそうだけど。


でも、女神様が愛の女神であるならば、今回の事を考えて実行したのもわからないでもないくらいには、私だってオトナだ。


「ちょっとそれは違うかもしれません。少なくとも、今回の女神様が用意してくれたゲームを女神様が私を動かして、でもその後は私がプレイしてみて。女神様とノリツッコミなやりとりをしながらは、私にとっては楽しかったですよ?本当に。友達とやりとりしてるみたいで。」

『…とも、だち…。』

「はい。大人になってからは、やはりなかなか会えない友達もいましたからね。しかも私の友達達も、割と私と似たような考えの人達が多くて。便りのないのが元気な証拠、みたいなタイプの友達ばかりでしたので、友達と会うのも、3年に一度位の頻度だったんですよ。でも、彼女たちにとっても、私にとっても、それが心地良い距離感で、だからこそ長く続いた友人関係なんです。そういう関係もあるんですよ。」


一呼吸おいて。


「でもだからといって、彼女達との関係が希薄かと言われれば違います。私にとってはとても大切な友達達です。頻繁に会わなくても、何かあった時にはお互いに抱き合って喜び、悲しみ。慰めたり、嗜めてもらったり。私には素晴らしい友人達でした。」


「友人ですら、その距離感で安心する私です。家族ですらもそばにいる事を拒否する位、一人が好きでした。そんな私が、他人である彼氏なんか作れる訳がないんです。」


女神様は、黙って聞いてくれている。

強引な人だけど(いや、神だけど)、キチンと聞いてくれるのはありがたいなと思う。


私は、これまで言えてなかった、一番大切な事を女神様に伝える事にした。

「それに。」






「…それにですね。


私、そもそも。



イケメン苦手なんですよ…。」




『へいっ⁈』


女神様の間抜けな声が、真っ白で、どこまでも続くこの精神と時の部屋に木霊した。



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